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白井貴子 5thアルバム『Flower Power』完全再現LIVEに向けて「1回で終わってしまうのか、続いていけるのか、分岐点になっていくと思う」

音楽

インタビュー

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白井貴子 (Photo:吉田圭子)

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1981年にデビュー、80年代に「ロックの女王」としてライブシーンを牽引した白井貴子。学園祭クイーンとして、さらには日本武道館、西武球場など大きな会場のステージに立ち、自身のバンド、CRAZY BOYSと共にシーンを駆け抜けた。1985年にリリースされた5thアルバム『Flower Power』が、2023年11月1日に38年の時を経てアナログ盤『FLOWER POWER』として蘇った。そして2024年1月20日(土) にはKT Zepp Yokohamaで「アルバム完全再現LIVE & SDGsカーニバル」が開催されることも決定。そんな彼女に今の心境を語ってもらった。

――横浜で伝説のバンド、THE CRAZY BOYSと共にステージに立つことが決定しましたが、その経緯から教えてください。

白井 まず会場が自分の故郷、横浜だということは私にとっては大きくて。実は20数年前に今回のようなライブを開催したくて事務所をわざわざ横浜に移転したくらいなんです。でもそのときは残念ながら力及ばずで、今に至っていた。今回、二代目のマネージャーだった関野(一美)さんから声をかけてもらって、「ソニーでアナログ盤を出す動きがあるから貴子もどうだ」と言ってくれたんです。今、CDの売れ行きも下がっている中でアナログが海外ではスゴイという話を聞いて、いずれ日本にもその流れは来るんだろうなって思いましたし、私にとってアナログ、手作り感を大切にしてずっとやっているので、とてもうれしいことで。そこでアナログ盤のリリースだけじゃなくてライブもやろうぜっていう話になった。60歳を過ぎて独唱できるアーティストはそんなにいないからやろうって。生きているうちに頑張ろうっていう感じです(笑)。

――THE CRAZY BOYSは、各メンバーがその後の日本の音楽シーンで重要な役割を担う重鎮として活躍中です。

Gt. 本田清巳[白井貴子自主レーベルROD代表、ECHOESのラストツアー参加]
Gt. 南明朗[工藤静香、杉山清貴らの活動に参加]
Ba. 岡部晴彦[真心ブラザーズらの活動に参加]
Key. 片山敦夫[サザンオールスターズ、桑田佳祐ソロなどの活動に参加]
Dr. 河村”カースケ”智康[星野源、福山雅治、藤井フミヤ、桑田佳祐ソロなどの活動に参加]

白井 残念ながらTHE CRAZY BOYSのメンバー、春山信吾さん(Ba)が亡くなってしまって。それも昨年11月1日、私のデビューの日、「僕の名前を忘れてないでね」と言わんばかりの日に亡くなったんです。実はTHE CRAZY BOYSって6人中4人が湘南出身で。なので余計に神奈川でやりたいということで決まりました。

――もうこのメンバーでリハーサルには入っているのですか。

白井 (取材日の)明後日から入ります。バンドのメンバー、みんな硬派な奴らばっかりだから、あまりメールとかやらないんですよ。頑固なオヤジたちなんで(笑)。

――歌謡曲、ポップス、アイドル全盛の時代に女性アーティストがロックに踏み出したのは、貴子さんがパイオニアだと思うので、このメンバーが支えていたからこそ、ツアーや西武球場というスタジアムでも熱狂的なパフォーマンスが実現したのではと想像します。リハーサルさえ観たいくらいの豪華な布陣ですね。

白井 若い時から力あるミュージシャンだったんだなということは、申し訳ないんだけど今頃になってすごくよくわかる(笑)。そういう人たちを私が、引っ張ってきたとは言えないけど、焚きつけて、もっとああして、こうしてってよく言ったもんだなって思いますね、今振り返ると。

――今、改めてライブハウスという会場でロックなパフォーマンスをすることに意義を感じます。今回はスタンディングですか。

白井 今回はスタンディングではないです。これまでの周年ライブではファンの感想で「貴子のライブはやっぱり疲れる」って(笑)。エンタテイメントとしては疲れさせてもいけないな、リフレッシュして楽しんで帰ってもらわなきゃ。私が促してますから、「そろそろ疲れたんじゃない? 座って観ていいよ」って(笑)。

――「SDGsカーニバル」と掲げた理由は?

白井 時代が21世紀になって、私たちが幼い頃は例えばベトナム戦争があってジョン・レノンが反対したっていう時代を音楽を聴きながら育った。今まさか地球でたいへんなことが起こるなんて考えてもいないし、未来は良くなるって思いたいんだけど、どんどん悪い方向に行っていると思うんですよね。だから私が30年やってきた環境のことも大きく伝える良いきっかけなんじゃないかと思って「SDGsカーニバル」と名付けた。FLOWER POWER実行委員会を立ち上げて、みんなで向かっていこうと臨む1日になりました。

――「Foolish War」という曲を1986年の西武球場ライブで演奏する際のMCで「今日は西武球場の日だけど、長崎に原爆が投下された日でもあるので祈ろう」という言葉が今も心に響いていて…。

白井 よく覚えてますね! 私も今も覚えています。世界ってその昔はとても大仰な感じに聞こえてましたけど、今ネットの時代になって、実際に世界中の人たちに音楽が届けられる状況になっていますから、望み大きく、世界の人たちに横浜の港町から届けるくらいの意気込みでやってもいいと思うんですよね。私たちは滾々とやるしか手がない。現地に行って食い止めるような力はないのはわかっているけど、でも何も言わないよりはちゃんと発信するということは大切だと思っています。

――SDGsという観点から発信していきたいことはありますか。

白井 今年の6月にバイク冒険家の風間深志さんからご連絡いただいて、「バイクは自然と一体になるスポーツなのに、バイク乗りの人たちが意外と環境のことを考えてないので、貴子さんから言ってやってくれ」って言われたんですよ(笑)。私にとっては「NEXT GATE」というバイクの曲(編集部・注:80年代「鈴鹿8時間耐久レース」のテーマソング)を、2022年にエコとロックのハイブリッドなサウンドに仕立て直して配信していたので、これは良いチャンスだと思って、喜んで出させてもらった。そこで東北大学名誉教授の石田秀輝さんにお会いしました。石田先生は「地球は人間があと12年でちゃんと環境のことを考えた生き方をしないと、酷いところに手をかけることになる」と学会で発表された。私にとって「あと12年」という数字が響いて、「よし12年は続けよう」という意気込みで自分の中のモチベーションの大きな力にしたいと思ったんです。

――5月には初の著書「ありがとうMama」を出版されましたね。

白井 私にとってはコロナ禍が幸いしたというか、歌うこともライブすることも止められる3年間でしたけれども、母がたいへんな状況を迎えていたので「介護をやれ」ということだなと思って専念したんです。母は私の活動の初期にステージ衣装を作ってくれてたんですよ。私、男所帯の事務所に入ったものですから、スタイリストの「ス」の字も知らないような人たちで(笑)。私が10代のときピアノの発表会とか大学入ってからも合唱団の衣装を母に作ってもらっていたので、ライブ衣装も私がデザインして、母と一緒に生地屋さんに行って。母の介護のことはファンには発信してこなかったけど、2019年、私が還暦のとき開催したライブでピアノの横にその衣装を並べて、「Mama」という曲を弾き語りで歌いました。親孝行と思って。素晴らしいメッセージをたくさんFacebookでいただいて、それを参考に母を介護して、痛むことも苦しむこともなく息を引き取ったんです。お通夜もお葬式も実家でやって。やり遂げたときに、本当にシンプルにそこで亡くなってお花いっぱい添えて、スッと玄関から出ていった姿をみて、ストレートでいいなって、「こういう一生って最高だよね、ママありがとう」と拍手する想いだった。在宅介護のことを知らない人も多いから伝えてほしいですって言われたのもあって、皆さんに助けてもらった気持ちにお返しすることも含めて本にしたいと思ったんです。

――今後、どのような活動を展開していきたいと思っていますか。

白井 いつまで現役で音楽活動をできるかわからないけれど、まだまだ生み落としたい曲のストックが山のようにあるのです。曲は作ってもCDにしてない、配信もしてないとか、やらなきゃいけないことが山積みで。できればTHE CRAZY BOYSでもまた新しいことができればいいなって思いますけれど、今回のライブは1回で終わってしまうのか、続いていけるのか、分岐点になっていくと思うので、願わくば続けていけるようにしたいなって思います。35周年の頃は(メンバーのお子さんも加えた)「THE CRAZY BOYS+Jr.」を作りました。カースケの息子さん(河村吉宏)にドラムを叩いてもらった。その頃から自分の中ではずっと「SDGsカーニバル」のような気持ちで、次世代の子たちを想ってメッセージが届くように「Jr.」を作ったんです。周りのスタッフももっと発信したほうがいいよって今回、神輿を担いでくれたんだと思います。SNSの力で市民力もアップしてきているときに、アーティストにファンがついてくるだけではなくて、みんなで良いエネルギーを作ってタッグを組んで、良い方向に行こうという船出の時になったらいいなと思ってます。私は80年代のときにもっと大人が若い世代を牽引してくれたらいいのに、言ってくれる人が少なかったなと思う。自分は若い世代に向けて、未来に向けて言うだけじゃなくて自ら実践しなきゃと思っています。

Text:浅野保志(ぴあ) Photo:吉田圭子

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<公演情報>
『白井貴子&THE CRAZY BOYS 未来へ咲かそう!「FLOWER POWER 2024」アルバム完全再現ライブ』

日時:2024年1月20日(土) 開場15:00/開演16:00
会場:KT Zepp Yokohama
出演:白井貴子&THE CRAZY BOYS(Vo.白井貴子 Gt.本田清巳 Gt.南明男 Ba.岡部晴彦 key.片山敦夫 Dr.河村“カースケ”智廉)

料金:一般7,800円、中学生以下3,000円
※全席指定
※入場時ドリンク代が必要
※未就学児入場不可

チケット情報:
https://w.pia.jp/t/shiraitakako-k/

<リリース情報>
白井貴子&THE CRAZY BOYS『FLOWER POWER』(アナログレコード)

発売中
価格:4,070円(税込)

白井貴子&THE CRAZY BOYS『FLOWER POWER』(アナログレコード)ジャケット

【収録曲】
■SIDE A -Green Side-
1. It Must Change
2. Chance!
3. Shining Dance
4. Checkしてしまった!!
5. Foolish War

■SIDE B -Growing Side-
1. My Glory Road
2. Japanese -Girls & Boys
3. Back Again
4. 遥かなる想い~It must be changed
5. Talk To Me

特設サイト:
https://www.110107.com/takako_shirai

<その他>
初著作本「ありがとうMama」発売中

詳細:
https://takako-shirai.jp/20230502_bookinfo/

公式サイト:
https://takako-shirai.jp/

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