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門脇麦×吉田志織が語る、体当たりで挑んだ『チワワちゃん』での経験 「幸せないい時間でした」

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リアルサウンド

 岡崎京子の短編漫画を実写映画化した『チワワちゃん』が1月18日より公開された。『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY – リミット・オブ・スリーピング ビューティ』の二宮健監督がメガホンを取った本作は、ある日バラバラ遺体となって発見された、男女グループのマスコット的存在だった“チワワちゃん”を巡る、SNSが普及した現代の東京を舞台にした物語だ。

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 今回リアルサウンド映画部では、主人公のミキ役で主演を務めた門脇麦と、オーディションでチワワ役を射止めた吉田志織にインタビュー。互いの印象や現場でのやり取りについて語ってもらった。

ーー岡崎京子さんが1994年に発表した原作漫画は読んでいましたか?

吉田志織(以下、吉田):私はもともと岡崎さんのファンで、『チワワちゃん』も読んだことがありました。ただ、今回私が演じたチワワちゃんは結構キャラが濃かったので、オーディションでチワワちゃん役に受かってから、役作りのためにもう一度読むか読まないかを二宮監督と門脇さんに相談したんです。「短編だから大丈夫だよ」と言ってくださったので、もう一度読み直して、結果的に30回ぐらいは読んだと思います。

門脇麦(以下、門脇):30回! すごい! 私ももともと岡崎さんの作品は好きで読んでいたんですけど、『チワワちゃん』に関してはお話をいただいてから読みました。そこで思ったのは、30ページぐらいの原作の短さでしか出せない痛烈なメッセージを、映画としてどう変換するのかということで、最初は全く想像ができませんでした。

ーー完成した映画は実際どうでしたか?

門脇:InstagramやSNSが出てくるように、時代をうまく現代にアップデートしながらも、大切なところは変わっていないなと思いました。それでいて、「600万円を3日間で使い切る」というバブリーな感じは90年代の感覚で、うまくその双方を両立させているなと。

吉田:『チワワちゃん』は犯人探しをするタイプの作品ではないので、観終わった後にスッキリするかと言われたらそうではないんですけど、作品の世界観がきちんとあって、メッセージ性もある。軸となるチワワが崩れたら、周りの人たちがどんどん稼働しなくなるように、人と人との繋がりの浅さを感じました。それは時代どうこうではなく人の問題なので、今も昔も変わらないのかなと。そういうところがうまく映画には反映されていると思います。

ーー吉田さんは新人ながらタイトルロールに抜擢されたわけですが、チワワ役に決まった時の気持ちは?

吉田:とにかくすごく嬉しかったです。でも、体を張るシーンがあるのも知っていたので、正直怖い気持ちもありました。ただ何よりも、台本を読んで自分がチワワ役をやりたいと思ったし、チワワに対して私自身が憧れている部分があったんです。こんなに自由に清々しく、当たり前のように楽しいと思える生き方ができるんだと。大好きな岡崎京子さんの作品に出られるという嬉しさもあったので、不安な気持ちよりも嬉しさの方が大きかったです。

ーー門脇さんにとっても誰がチワワを演じるのかは重要だったのでは?

門脇:そうですね。作品的にもそれが一番重要だったと思います。今回は撮影に入る前に、ワークショップのような形でみんなが集まって会話をしたり遊んだりするシーンのリハーサルを何回かやったんです。志織ちゃんとはその時に初めてお会いしたんですけど、その時点で志織ちゃんはチワワにぴったりだと思いました。

ーーどのような理由で?

門脇:モンタージュ的に入ってくる遊びのシーンは、台本には「ミキたち遊んでる」というように、ト書き1行ぐらいでしか書かれていなくて。そういう設定で演じる場合、それぞれのリアルな人間の関係性や素のキャラクターがどうしても現場にも持ち出されてしまうと思いました。なので、撮影前からちゃんと各々のバランスを把握して、集まった時に口火を切るのは誰なのか、調子を乗せていく人は誰なのかなど、長く一緒にいれば分かってくるグループの雰囲気をしっかり作った方がいいのではないかと監督とも話し、リハーサルを行うことになりました。そのリハーサルはそれぞれグループの中の自分の居場所や役割を探していく時間だったと思うんですけど、志織ちゃんは初日のリハーサルからチワワのような存在感の強さがあったので、みんなも最初から志織ちゃん=チワワにしか見えてなかったと思います。

吉田:いやいやいや……(笑)。でも今回は本当に門脇さんに助けていただきました。演技の部分ではもちろん、今回私は体を張るシーンが多かったので、そういうシーンの前後に「大丈夫だった?」といつも気にかけてくださって。その「大丈夫?」という言葉は、門脇さんから吉田志織に対しての言葉でもあるんですけど、私の中ではミキからチワワに対しての言葉でもあると繋がっていって……。なので、台本には書いていないところまで、ミキに対して何でも話せるようなチワワのモチベーションになっていきました。そうやって門脇さんが私を気にかけてくださっていたことはすごく印象に残っていて、私の中でも大きなことでした。

門脇:そんな風に志織ちゃんの中で繋がっていたというのは初めて聞きました。私自身そういうシーンを経験したことがあったというのも大きかったですし、男性の監督には気付けないこともあると思ったので……。

ーー吉田さんは体を張るシーンに抵抗はありませんでしたか?

吉田:撮影中はずっとチワワでいるので、基本的にラブシーンに関しても全く何も思っていなかったんです。むしろチワワがやりたかったことなので、それは受け入れるしかないと。ただ、撮影が終わってホテルに戻って1人になった時に、何かドッとくるものがあったりはしました。でもそれは、チワワと吉田志織は繋がっていて、吉田志織が何かを削るからこそ、チワワは強くいれるという考え方だったんです。そういう意味で、吉田志織に戻って感傷的になる時間も私にとっては必要だったので、今回のような体を張るシーンは私の中でもいい経験になりました。

ーー門脇さんも二宮監督と話し合いを重ねるなど、普段とは違った撮影の臨み方をしたそうですね。

門脇:二宮さんとのお仕事は初めてでしたし、キャストの人数も多いので、現場に入るとコミュニケーションも取りづらくなるだろうということで、撮影に入る前に何度か話はさせていただきました。現場に入ってからお互いの距離を探るという時間がないことは分かっていたので、撮影前に掴んでおきたかったというのが大きかったです。なので、普段は白黒つけすぎるのが嫌で監督とも具体的な話はしないのですが、今回は積極的に話をするようにしました。それと、今回はキャストの中では私が一番年上だったので、自分が縁の下の力持ちみたいな役割を果たせたらいいなという気持ちも強かったです。自分のことだけに集中するのではなく、周囲に意識を向け、自分にできることは何なのかということは常に考えていた気がします。ただ主演とはいえ、やっぱり主役はチワワちゃんなので、こうやって支える側の役割を担えたのは新しい経験でしたし、とても幸せないい時間でした。(取材・文・写真=宮川翔)