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名作の原点であるケン・ヒル版『オペラ座の怪人』開幕

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(C)ヒダキトモコ

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ガストン・ルルーの小説『オペラ座の怪人』。今では定番として世界各国で上演されている本作を初めてミュージカル化したのは、“ロンドン・フリンジの鬼才”と呼ばれた劇作・演出家のケン・ヒルだ。“愛するが故の悲劇”という原作のテーマを見事な人間描写とオリジナルの歌詞で鮮やかに描き出し、アンドリュー・ロイド=ウェバー版が生まれるきっかけになった。

この力強いクラシックミュージカルが日本で上演されるのは6年ぶり7度目。今回のファントム役はイギリスのミュージカル俳優ベン・フォスター、ファウスト役はイギリスのオペラ歌手ポール・ポッツが務める。

『オペラ座の怪人』はシリアスなラブロマンスというイメージが強いが、ケン・ヒル版は全体的にユーモラス。緊迫したシーンでもセリフやキャストの表情がコミカルだったり、登場人物たちが大真面目だからこそシュールな笑いが生まれていたり。それでいて、怪人の恐ろしさや悲しさもしっかりと見せるバランスが絶妙だ。

見ていて感じたのが、表示される日本語字幕がかなりシンプルだということ。多くの方があらすじを知っているということもあってか、話の本筋、各キャラクターの心情は伝えつつ、削ぎ落とした表現になっている。字幕を追うことに時間を取られず、キャストの表情や細かな動きに注目できると感じた。

ベン演じるファントムは、言動の恐ろしさと裏腹に柔らかくまっすぐな歌声が印象的。歌声だけ聞けば少年のようにピュアで、クリスティーンが“音楽の天使”と認識してしまうのも納得する。クリスティーンを演じるタイラは凛として澄んだ歌声で、ヒロインらしい存在感を見せていた。ラウルとのハーモニーも美しく、二人のロマンスを美しく描きだしている。それぞれのソロ曲も素晴らしいが、3人の運命が交錯するシーンで歌われる「制御できない」は非常にドラマチックで、作品の世界をグッと盛り上げていた。

“劇場の幽霊”の噂を鼻で笑っている新支配人リシャード、幽霊の存在を信じて忠告していたマダム・ギリーなど、劇団関係者たちも個性豊かで、一人ひとりが魅力的だ。ポール演じるファウストは作中で本名も明かされないキャラクターだが、コミカルな言動やビジュアルと厚みのある歌声のギャップで強い印象を残している。

2幕に入り、クリスティーンをめぐる対立が深まったり、ファントムの正体を知る謎のペルシャ人が現れたりと緊張感がグッと高まるが、どこかコミカルな雰囲気は冒頭から変わらない。悲劇ではあるが、クスッと笑えるシーンも多く、爽やかな余韻を残してくれる。

そして、本作ではグノーの『ファウスト』をはじめ、ヴェルディやビゼー、ドヴォルザークらによる楽曲に乗せて登場人物たちの心情が描かれている。歌詞はケン・ヒルがこの物語に合わせて書き下ろしたオリジナルのため、聞き覚えのある曲に新たなイメージが乗るのも面白さの一つだ。作中での楽曲の使われ方と元曲がリンクする部分もあるため、オペラ好きな方は合わせて楽しめるのではないかと感じた。

さらに、客席通路を使った演出があったり、音が劇場のあちこちから聞こえてきたり。自分も劇場に居合わせた観客やスタッフの一人としてそこにいるような臨場感を得られる。

美しい楽曲と深みのある人間たちが織りなす力強いミュージカルを、ぜひ劇場で体感してほしい。本作は2024年1月17日(水)~28日(日)まで、渋谷・東急シアターオーブにて上演される。

取材・文:吉田沙奈

<公演情報>
ミュージカル「オペラ座の怪人」ケン・ヒル版

公演期間:2024年1月17日(水)~ 28日(日)
会場:東急シアターオーブ
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/operaza24/

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