タルコフスキー「ノスタルジア」4K版の本編映像が到着、齋藤陽道らのコメントも
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「ノスタルジア 4K修復版」ポスタービジュアル
映画「ノスタルジア 4K修復版」より、本編の一部映像が解禁された。
アンドレイ・タルコフスキーが1983年に発表した長編第6作「ノスタルジア」。モスクワからイタリアにやって来た詩人アンドレイ・ゴルチャコフと通訳の女性エウジェニアは、ロシアの音楽家パヴェル・サスノフスキーの足跡をたどる旅をしていた。そんな中で2人は、世界の終末が訪れたと信じて家族で7年間も家に閉じこもり、人々に狂信者とうわさされる男ドメニコに出会う。
YouTubeで公開された映像は、アンドレイがドメニコの家から去ろうとするシーンを切り取ったもの。屋内にもかかわらず絶え間なく水が滴り落ちるこの家で、アンドレイはドメニコに“なぜ世界の救済を自分に託すのか”を問う。壁に描かれた「1+1=1」という数式も確認できる。
また文学紹介者の頭木弘樹、映画批評家の須藤健太郎、映像作家の小森はるか、ロシア文学者の沼野恭子ら各界著名人からコメントが到着。写真家・齋藤陽道は「神話のような悠久の映像の流れに身も心もおいて観ていると、あらゆる亡き人との最後の出会いの時間をも想い出していた。ふと、あちら側から、こちら側を見つめるまなざしを感じた。奇妙な懐かしさを覚えた。このまなざしの感触、私は知っていた。ずっと、知っていた」とつづっている。
「ノスタルジア 4K修復版」は、1月26日より東京のBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほか全国で順次公開。
頭木弘樹(文学紹介者)コメント
私たちはだれでも、どこか現実に適応できないところがある。だから、たとえ自分の国の自分の町の自分の家にいても、本来の居場所ではないところにいるようなノスタルジアを感じる。
そのことを自覚させられ、同時に世界とのつながりを取り戻したいと思わせてくれる映画だ。
齋藤陽道(写真家)コメント
神話のような悠久の映像の流れに身も心もおいて観ていると、あらゆる亡き人との最後の出会いの時間をも想い出していた。
ふと、あちら側から、こちら側を見つめるまなざしを感じた。奇妙な懐かしさを覚えた。このまなざしの感触、私は知っていた。ずっと、知っていた。
須藤健太郎(映画批評家)コメント
1949年、アウシュヴィッツ以後に詩を書くのは野蛮である、とアドルノはいった。
1964年、餓死する子供を前にすれば「嘔吐」など無力である、とサルトルはいった。
災害、飢饉、感染症、侵略、戦争、民族浄化。
正視しがたい「悲惨のイメージ」が日々SNSを通して伝えられるなか、映画に何ができるか。
映画にはどんな意義が残されているか。映画は何をなすべきか。
2024年1月、タルコフスキーの「ノスタルジア」は問いを突きつける。
小森はるか(映像作家)コメント
私たちには光としては記憶されないであろう風景に、アンドレイは辿り着けない故郷の光線を見ている。
霧に覆われた風景が「ノスタルジア」の記憶を甦らせるとき、彼の帰郷への想いを忘れていないことに繋がっているのかもしれない。
沼野恭子(ロシア文学者)コメント
ロシアによるウクライナ侵攻開始以降<ノスタルジア>が切実なテーマになっている今、
新たなリアリティを得てふたたび私たちの前に立ち現れた本作品。
息を呑むほどに美しいこの交響詩を<奇跡>と呼ばずして何であろう!
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