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「かわりのない」荒井敦史、異儀田夏葉、清水優、納谷健、タカイアキフミ インタビュー

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インタビュー

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(撮影:黒豆直樹)

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タカイアキフミが作・演出を務めるソロユニット「TAAC」の最新作「かわりのない」が2月7日(水)より上演される。海外での移植手術が間に合わず、息子を難病で亡くした後も、街角での募金活動を続ける夫婦をはじめ、自らの喪失を埋める“かわり”を探し求める人々の姿を描く本作。荒井敦史、異儀田夏葉、清水優、納谷健、タカイの5人が本作について語ってくれた。

これまでも、世を騒がせた様々な事件や事象の“その後”を描いてきたタカイだが、本作の着想を得たのは夕方の情報番組で見た、難病を患った子どものための募金活動のニュースだった。
「残念ながらその子は亡くなってしまったんですが、その後、ネット上で『あのお金はどうなったんだ?』となり、お父さんが車を買ったとかお母さんがブランドバッグを手に外出していたといった内容で炎上したんです。誰かを叩くネット社会の想像力のなさについて考えさせられ、彼らの“その後”に思いを馳せられないかと思いました」

劇中、息子を失った田代夫婦の元にある日、親に問題を抱える近所の子どもが逃げ込んできて、夫婦はかいがいしくその子の世話を焼くようになるが、やがて事件が…。 「生きていく中で、誰しも何かを失い、探しても見つからずに代わりのものを見つけたりするけれど、まさにこの夫婦もそう。息子のために代わりの心臓を移植しようとしたけど、間に合わず、息子を失って、募金で集めたお金という代替物に我が子を投影する。そんな時に、息子が今も生きていたら…位の年齢の近所の子が逃げ込んできて…」(タカイ)。

田代夫婦の取り調べを担当する刑事・春日井を荒井が演じるが、彼も決して中立的な立場で事件を見つめるわけではない。彼自身、複雑な環境で育ち、妻との間に微妙なすれ違いが生じている。荒井は物語について「誰しもが抱えているもの――気づいているようで案外、自分でも気づいていないものを探しているような雰囲気を感じました」と語り、春日井という役についても「(夫婦の事件の)当事者ではないけど、でもどこか当事者であるような、微妙な難しさを感じています」と何とも言い難い本作の難しさを口にする。

田代夫妻の夫・健太を演じる清水は「彼らの行為は犯罪ではあるけど、『善悪』という意味でどちらなのか、いまの僕にはまだわかりません。それは観る人に委ねる部分になるのかと思います」と語り、妻・由希子役の異儀田は「登場人物はみんな、何かしらの“穴”を持っていて、それを埋めるためにもがいているんですけど、事件を通じて、誰かのふとした言葉で別の誰かの穴が少しだけ埋まる――自身の過去や大切な相手と対峙できていない人(=春日井刑事)に良い作用を生むような、希望を感じられる物語になれば」とうなずく。

納谷が演じる根本は、田代夫婦の元に逃げ込んだ少年の実の父親であり、子どもとの向き合い方に問題のある男だが、彼もまた複雑な背景を抱えて生きている。
「こういう事件はたびたび起きるけど、つい単純化して、自分の常識や一般論に当てはめて考えてしまいがちですよね。僕自身、子もいないし、我が子を愛せないという感覚もわからないけど、理解を深めていくことはできると思うので、客観的な視点ではなく、演じる“当事者”として、狭い世界の出来事かもしれないけど、人ひとりの人生に関わる壮大なことなんだと感じながら、内面の人生をしっかり大きく表現できたらと思います」

夕方の小さなニュースに着想を得た“その後”の物語はどこに着地するのか? 

『かわりのない』は2月7日より新宿シアタートップスにて上演。

取材・文・撮影:黒豆直樹

<公演情報>
TAAC「かわりのない」

公演日程:2024年2月7日(水)~2月12日(月・祝)
会場:新宿シアタートップス
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/taac/

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