Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
ぴあ 総合TOP > ショスタコと共振する二人が世代を超えて強力タッグ

ショスタコと共振する二人が世代を超えて強力タッグ

クラシック

インタビュー

チケットぴあ

(撮影=源賀津己)

続きを読む

フォトギャラリー(6件)

すべて見る

50歳以上の年齢差の二人の音楽家をショスタコーヴィチが固く結ぶ。この作曲家に特別な思いを抱く服部百音と、ショスタコーヴィチ演奏の第一人者・井上道義。深く信頼を寄せ合う彼らが、そのヴァイオリン協奏曲全2曲をひっさげてNHK交響楽団と共演する[6月29日(土)東京・サントリーホール/30日(日)大阪・フェスティバルホール]。

百音 私にとってショスタコーヴィチは、幼少期から精神的に支えてもらった特別な存在です。

道義 幼少期から? ませてるな。おれは大人になってからだよ。

百音 私は朝から晩までヴァイオリンだけに費やす生活をしていたから、人間的に欠如している部分があったんです。その部分に、ショスタコーヴィチが共感してくれるように感じていました。私たち音楽家にとっては、その孤独みたいなものは表現のツールにもなっていますけど、そこには自分の中の違和感もたっぷり入っているんです。ショスタコーヴィチもそうだったと思います。

道義 ショスタコーヴィチは本当に天才なのに、ソビエトの時代に育ったので、残念ながらいつもそういう社会的な問題とくっつけられてしまう。ただ、彼がもし他の国に生まれていたら、あれだけいい作曲家にならなかったかもしれない。才能を育てるだけの土壌が、あの時代のペテルブルクにはあった。いい時代だからいい作曲家、いい絵描きが生まれるわけじゃないし、逆に、悪い時代だから芸術がダメになるっていうこともないんだよ。それは不思議なんですよ。

百音 会場で実際に演奏を聴いていただければわかる事なので、ここでショスタコに関してあまり偉そうな蘊蓄を述べるつもりはありませんが、彼は作品を通して人間的な愛情の形を求めていたように私には見えます。じっさい彼自身どれだけ愛の深く純粋な人間であったとしても“素”の自分を出せば命が危うかった時代でしたから、それは音でしか表現できなかったんですね。言葉にはできないので音にした。彼の楽譜が弾き手にとって手紙や日記と同じように感じられたり、この音は絶対にこの表現であるべきだと直感的と言えるほど明晰に感じられるのは、彼が曲の中で本音をぶちまけているからでしょう。私にとっては最もわかりやすく自然な音楽なんです。

道義 服部百音のパワーとエネルギーと戦闘的な音楽はショスタコーヴィチに合っていると思う。それは素晴らしいことなんだよ。世の中、そういうものをあらわにすると、逆に攻撃される。それに負けずに自分の生き方を貫くのは、やっぱりパワーがいる。

百音 私は道義先生の、作品の政治的な背景や世の中の評価とか余計な先入観をすべて取り払って、物事の核心だけ、音楽ならその曲の魅力だけを明確に伝えて、それ以外は聴き手に想像の自由を与えるところが好きなんです。

道義 うん。おれはわりと目が強いので、あまりサングラスをしないんだ(笑)。そうね、人が言うことはなるべく信じない。世の中で言われている常識を信じない。

百音 その考え方をすると、政治も芸術も人間も別のベクトルで見ることができる。音楽は音楽の良さだけを伝えるべきという信念は、これから私たち世代の音楽家が受け継いで行きます。本番で真正面からぶつかってきてくださるマエストロと本音を言い合う舞台上での音での対話は本当に愉しい。皆さん、またとないそのエネルギーに当たりに来てほしい。

道義 その対話はお客さんにも伝わると思いますよ。そういうお客さんに来てほしい。

百音 何も予習なんかしないで来てもらえればいいですね。

道義 うん! N響のお客さんは予習とかやるタイプが多いと思うけれど、どうなんだろう? 今回はなんとなく、彼がいくつの時に2番を書いたのかを調べたくなると思う。

(聞き手・構成=宮本明)
(撮影=源賀津己)

<東京公演>
井上道義指揮 NHK交響楽団演奏会 ヴァイオリン:服部百音

公演日程:2024年6月29日(土) 15:00開場/16:00開演
会場:サントリーホール 大ホール
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/inoue-nhk2024/

フォトギャラリー(6件)

すべて見る