永山瑛太が思う“縁”の大切さ「出会いには、何かしらの意味がある」
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インタビュー
永山瑛太 (撮影:友野雄)
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すべて見る底が知れない。俳優・永山瑛太の居住まい、そして目を見ると、ふとそんな言葉が浮かぶ。
土橋章宏の原作・脚本で、また新たな時代劇が誕生した。ムロツヨシ主演の『身代わり忠臣蔵』は、若い世代にとっては馴染みが薄くなりつつある忠臣蔵を、ポップで親しみやすいものに仕上げている。
吉良孝証・上野介の一人二役を担ったムロツヨシ。孝証と不思議な友情を築く赤穂藩の家老・大石内蔵助を演じた永山瑛太。唯一無二と思える縁で結ばれた二人の関係性を振り返り、いま、永山瑛太が思うことは。
ムロツヨシ主演と聞いて「やります」と即答
大石内蔵助役のオファーを受けたとき、永山が得ていた前情報は「ムロツヨシが主演で一人二役を演じる」「土橋章宏が原作・脚本を務める」の二点だけだったのだとか。「ムロくんが主演で、忠臣蔵を描く。そう聞いた瞬間に、気づいたら『やります』と返事をしていました。間違えましたね」と、永山はユニークに語る。
「あ、このときが来たんだな、と思いました。土橋さんとは、以前にも『幕末相棒伝』という作品でご一緒させてもらっていて。土橋さんのつくる型破りな時代劇で役を演じることが、とても楽しかったんです。不安要素は何もありませんでした」
忠臣蔵そのものは、これまで多くの映画やドラマで扱われてきた題材だ。偉大な前例があるなかで、永山は「あまり意識はしなかった」と役作りに触れる。
「大石内蔵助を演じるうえで、史実に基づいていたのは“昼行燈”だった、ということぐらい。制作陣とチームを組んでより良い作品にすること、かつ、ムロくんと向き合う過程で新しい何かが自然と生まれるんじゃないか。そんな思いで現場にいました」
腹の底がわからないからこそ、魅力的
土橋章宏の原作・脚本作品で、ムロツヨシが主演。永山にとって、内容を精査する前から「やる」と即答できる、信頼できる布陣だった。20年ぶりのムロとの共演で、感じた変化とは。
「変わらないですよ、彼は。明るくて、人をイヤな気持ちにさせない。でもどこか、何を考えているかわからない感じもあって。それは、どうしても僕が『本当はムカついてるんじゃないかな』とか、人の負の面を想像してしまうからなんですけど。人って、わからないものじゃないですか。絶対的にポジティブな人なんて、いないと思うから。僕にとって、ムロくんはずっとおもしろい人。腹の底が知れないからこそ、魅力的だなと思います」
永山とムロツヨシが20年前に共演したのは、映画『サマータイムマシン・ブルース』(2005)。大衆居酒屋でたくさん芝居の話をした二人は、お金もなく、都内から離れた場所に住み、ギリギリの生活をしていた。お互いの苦しい時代を知っているからこそ、久々の共演には「照れくささ」があったという。
「もちろん緊張感もありましたが、僕としては、照れくさい気持ちのほうが強くて。普段は面と向かって、目を見て話すことなんてないですけど、芝居では目を見なきゃいけない。ここまで長く付き合いがあって、出会ったころのつらさも、頑張ってきた過去も知っている相手ですから、ムロくんは。あらためて会って話さなくても、どこかで通信し合っていた感じがずっとあったんです。だから、なんていうかね……照れくさかったですよ」
長いあいだ一緒にいる友達と、あらためて向き合って話すことなんてないでしょう? と話す永山には、撮影当時の「照れ」を思い返している様子が窺えた。
人との出会いには、絶対に意味がある
長く親交のあるムロと永山が、20年ぶりの共演。本作『身代わり忠臣蔵』で二人が演じた吉良孝証と大石内蔵助も、ひょんな出会いから不思議な友情を築いている。永山にとって、人との「縁」の大切さを実感する瞬間はあるのだろうか。
「2024年、誰しもにとって考えることの多い年になっているな、と思います。そんななか、エンターテイメントに携わる者として、二つの思いに挟まれるんです。前向きに生活をしたほうがいいという気持ちと、何か自分にできることはないか模索する気持ちと。両者のあいだで模索しながら、何が失礼にあたることで、何がそうではないのか……その価値判断も難しくなってきている気がして。そういった葛藤のなかでの、人との出会いには、やっぱり何か意味があると思うんです」
まさに先日、永山には奇特な縁があったようだ。取材日の数日前に更新された永山のInstagramには、「野生爆弾・くっきー!さんの『肉糞亭一門』に入門させてもらった」「僕は門下生の『肉糞亭ポリたん』になりました」と和やかな報告が。永山の交友関係の広さに、あらためて驚く。
俳優にとどまらず、映画監督やフォトグラファーとしても引き出しを増やしてきた彼の目には、もはや職業も立場も関係のない、フラットな視界が拓けていると思えてならない。
「今後この出会いが、また何か新しいことに繋がっていくかもしれないですよね。もし、それを楽しみにしてくださる方がいれば、さらに役者冥利に尽きるな、と思います。ただ僕は、新しい出会いがあったあと、いったん距離を置いて考えるタイプなんです。このご縁は、僕に何をもたらすのか……時間をおいて考えてみる。良い意味でも悪い意味でも、人って変わっていくものですから」
自分にとって必要な縁を繋ぐには?
役者という仕事上、撮影現場が変われば、関わる人々も変わっていく。変動性の高い日常のなかで、大切にしたい縁を切らさずに、繋ぎ続けるためにはどうしたらいいのだろうか。
「この人と仲良くしたい、と思ったら、必ず自分から『連絡先を交換しませんか?』と聞きに行きます。それか、InstagramでDMを送ります。以前までは、先輩に対して自らアクションを起こすのが難しかったんです。でも、もし後輩から『電話番号を教えてください!』って言われたら、僕だったら嬉しい。少なくとも、イヤな気は絶対にしません。たとえ怖そうな先輩でも、大御所の方でも、絶対に自分から聞きに行ったほうがいいです」
そうしたら、高級焼肉をごちそうしてもらえますから、と永山は、最後までユーモアたっぷりに語ってくれた。
役者は、不思議な仕事だ。いきなり「夫婦になってください」「300年後からやってきた未来人になってください」「葛藤の気持ちを表現してください」と言われ、そのとおりに動く。だからこそ、その現場でしか出会えない“縁”を実感する瞬間も多いのだ、と回顧する永山。彼の目には、やはり底が知れない魅力がある。
取材・文:北村有 撮影:友野雄
<作品情報>
『身代わり忠臣蔵』
2月9日(金) 公開
公式サイト:
https://migawari-movie.jp/
(C)2024「身代わり忠臣蔵」製作委員会
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