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King Gnu、ネクライトーキー……2019年バンドシーンの傾向を『バズリズム02』恒例企画から考察

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 1月4日放送の『バズリズム02』(日本テレビ系)にて、「今年コレがバズるぞ!BEST10」が発表された。「今年コレがバズるぞ!BEST10」は新年恒例の企画で、音楽関係者へのアンケートを基に「今年ブレイクするアーティスト」のランキングを作成するもの。今年のランキングの詳細はオフィシャルサイトにて発表されている。

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 1位のKing Gnuは4人組ロックバンド。R&B、ジャズ、クラシックなどの要素を汲みこみつつあくまで歌モノとして着地させるサウンドが特徴的であるほか、メンバーの常田大希(Gt/Vo)が立ち上げたクリエイティブチーム・PERIMETRONによるMVも毎作鮮烈な印象を残している。彼らは、1月16日にフルアルバム『Sympa』をリリースし、アルバムに収録されていない新曲「白日」がドラマ『イノセンス 冤罪弁護士』(日本テレビ系)の主題歌として現在オンエア中。各所の注目を集めているこの機を逃すことなく、攻めの一手を打ち出せることもこのバンドの強みだろう。

 奇しくも「トーキョー・ニュー・ミクスチャー・スタイルバンド」を標榜するKing Gnuが1位を獲得したことも象徴的だが、今年のランキングは、前年に比べ、より個性豊かなラインナップとなっていた。わかりやすいところで言うと、前年は上位30組中27組がバンド(楽器を持たないパンクバンドと標榜するBiSHを入れれば28組)だったのに対し、今回は30組中20組のみがバンド。考えうる大きな要因は二つ。1、“ライブハウス界隈での口コミ的な広がり”以外にも“MVの再生回数伸長”や“SNSやサブスクリプションを通じた著名人によるフックアップ”など、バズるまでの経緯が多様化したこと、2、2018年が米津玄師、あいみょんらソロアーティスト飛躍の年であったことであろう。

 1で言うと、たとえば、3位のネクライトーキーは、「オシャレ大作戦」のMVが公開からわずか4カ月で再生数150万回を突破したことで話題になった。また、6位のずっと真夜中でいいのに。もMVから人気に火がついたアーティストだ。この2組に共通する特徴は、歌い手・ボーカロイド界隈と強い繋がりを持ったアーティストであること。ネクライトーキーのメインコンポーザーである朝日(Gt)はボカロP・石風呂としての活動も長い。ずっと真夜中でいいのに。はボーカリスト・ACAねの正体こそ謎に包まれているが、編曲やMVのアニメーションを手がけるクリエイターはボカロ界隈でよく知られている人物だ。ハチ(米津玄師)/wowaka(ヒトリエ)の二大巨頭時代の終幕およびニコニコ動画の衰退以降、シーン全体が下火になりつつある印象も否めなかったが、2018年にはEveが凄まじい勢いで躍進(すでにバズっているという共通認識からかランキング圏外だったが)。その他にも界隈出身者の台頭が目立った。2019年は、彼らが支持層をさらに拡大させることになるのかもしれないし、さらに若い才能が出現する可能性も高い。

 2で言うと、5位の中村佳穂が衝撃的だった。旅先で出会い、意気投合した仲間と音を合わせるようなスタイルでライブを展開してきたというだけあり、彼女の音楽はどこにもカテゴライズできないほど自由である(一方で、日本におけるポップスの系譜を体現していたりもするのだが)。他アーティストと関わりあいながら作品づくりを行っている点は、12位の折坂悠太、18位のKID FRESINOも同様。様々なジャンルがボーダーレスに混ざり合う現在の音楽シーンでそれを行うからこそ、独創的な作品が生まれることとなるのだ。ちなみに、中村は、1月20日放送『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系)での「売れっ子音楽プロデューサーが選ぶ2018年間ベスト10!」でも取り上げられ、最新アルバム『AINOU』が翌朝、iTunesのデイリー・アルバム・チャートで6位に浮上した。多くの人の目に触れるであろう地上波の音楽番組が、本来評価されるべき音楽家に光を当てるようなメディアとして機能しているのだとしたら、それは非常に喜ばしいことだ。

 バンドにも触れておくと、お茶の間へのリーチという面においては、ポップな楽曲を書くことのできるソングライター、カラフルな音色を鳴らすことのできる鍵盤奏者が所属するバンドが依然として強い。番外編として実施された街の300人に対するアンケートにおいて、半数以上が“飛躍する”と予想した3組がMrs. GREEN APPLE、sumika、Official髭男dismだったこともそれを裏付ける結果だったと言えるだろう。そういう意味で特に注目したいのが10位のマカロニえんぴつ。昨年10月にリリースされた2ndシングル表題曲「レモンパイ」は、印象的なメロディと愛らしい歌詞を兼ね備えつつ、バンドのルーツや遊び心も感じさせるような名曲。長らくネクストブレイク候補だと言われてきた彼らが、いよいよ新たなステップに駆け出すのだという兆候が見られた。彼らは元々“全年齢対象ポップスロックバンド”と名乗っている。その代名詞、いよいよ現実味を帯びてきたのではないだろうか。

 また、11位以下に関しては、“My Hair is Bad以降”の潮流にあるストレートなギターロックサウンドを鳴らすバンド、Age Factoryをはじめとしたオルタナ系の新鋭など、ライブハウスにおいて強い存在感を発揮しているバンドが目立つ。ライブハウスにある情熱だけが真実ではないが、ライブハウスにある情熱には嘘がない。この辺りは、現場に足繁く通う音楽関係者だからこそフックアップできたポイントだろう。

 以上が、ランキングの全体的な傾向とそれに対する所感である。このランキングを足掛かりにして、あなたが、自身にとってかけがえのない存在となる音楽を見つけることができたのならば、それ以上に嬉しいことはないが、一方、数字による評価だけがすべてではないのだということは気に留めておいてほしい。末筆ながら、「今年コレがバズるぞ!BEST10」および本稿があなたの音楽人生を豊かにさせるものになることを願いつつ、この記事を締め括りたいと思う。

■蜂須賀ちなみ
1992年生まれ。横浜市出身。学生時代に「音楽と人」へ寄稿したことをきっかけに、フリーランスのライターとして活動を開始。「リアルサウンド」「ROCKIN’ON JAPAN」「Skream!」「SPICE」などで執筆中。