『印象派 モネからアメリカへ』展示の模様をレポート モネの《睡蓮》世界初購入の経緯をたどる展示も
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クロード・モネ《睡蓮》1908年 ウスター美術館蔵
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すべて見るフランスで生まれた印象派が、各国、特にアメリカの画家たちにどのような影響を与えたのか、その展開をたどる展覧会『印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵』が、東京・上野の東京都美術館でスタートした。4月7日(日) まで開催される。
2024年は第1回印象派展が開催されてから150年目の年。フランスで生まれた新しい美術の潮流は、ヨーロッパのみならずアメリカをはじめ世界各地の画家たちに強い衝撃を与えた。同展では、アメリカのウスター美術館の印象派コレクションを中心に据え、印象派の革新性や広がりについて焦点を当てている。
ウスター美術館のあるウスターはマサチューセッツ州にあり、ボストンに次ぐ第2の都市。古代エジプトから現代美術まで約4万点のコレクションを誇っている。開館当初から収集している印象派のコレクションは日本初公開となる。

展覧会は5章構成。第1章「伝統への挑戦」では、印象派が生まれる前、19世紀のフランス、アメリカの風景画を紹介する。フランスではクールベやコローなど、写実主義やバルビゾン派の画家たちが、アメリカではトマス・コールらがあるがままの自然の美しさに気づき、絵を描いた。


続く第2章の「パリと印象派の画家たち」では、モネやルノワール、ピサロなどの印象派の作品のほか、彼らと交流し、そして強い影響を受けたアメリカの画家、メアリー・カサットやチャイルド・ハッサムの作品を紹介する。

ハッサムはボストンで成功したのちにパリに留学、バルビゾン派や印象派の作品に出会い、その手法を自身に取り込んでいった。《花摘み、フランス式庭園にて》は、パリ在住中に過ごした、友人宅の夏の風景を描いたもの。手前に植物を置き非対称な構図、明るい色調、大胆な筆触など印象派の影響を強く受けていることがうかがえる。この展覧会で見逃せない作品の一つだ。

クロード・モネの《睡蓮》は、1909年にパリの画廊で発表された連作のうちの1点で、世界で初めて美術館に購入されたモネの睡蓮として知られている。この作品とともに、この購入にまつわる書簡も合わせて展示されており、購入までの値段交渉などのリアルな駆け引きをたどることができる。


第3章「国際的な広がり」では、フランスで生まれた印象派が、国境を超えて画家たちに与えた影響を追っていく。スウェーデンの国民的画家、ソーンは19世紀後半のパリで学び、印象派など当時の最先端の技法に慣れ親しんだ。印象派は各地域の文化や価値観と溶け込み、さまざまな形で展開されていったのだ。黒田清輝もパリで印象派に触れ、その技術を日本に持ち帰り、多くの画家たちに影響を与えている。


第4章「アメリカの印象派」では、印象派の影響を受け、アメリカで活躍した画家たちを紹介する。印象派の技法を使ってはいるものの、アメリカの自然や都市、社会などを描いた彼らの絵は、私たちの目には非常に新鮮に映るはずだ。


最終章となる第5章「まだ見ぬ景色を求めて」は、セザンヌやシニャックら印象派を受け継いだ次の世代の画家たちの作品を紹介する。パーシャルの《ハーミット・クリーク・キャニオン》は、鉄道会社に招かれて訪れたグランド・キャニオンを描いたものだ。


印象派が生まれ、花開き、そして世界でどのように展開したのかを、日本初公開となるウスター美術館のコレクションで楽しめる貴重な展覧会。その壮大な流れをゆったりと楽しんでみよう。
取材・文:浦島茂世
<開催概要>
『印象派 モネからアメリカへ ウスター美術館所蔵』
2024年1月27日(土)~4月7日(日)、東京都美術館にて開催
公式サイト:
https://worcester2024.jp
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