【イベントレポート】小川絵梨子、上村聡史、映画監督・石川慶が語る「デカローグ」
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『デカローグ 1~10』スペシャルトークイベントより、石川慶 映画監督(中央)、 『デカローグ 1~10』の共同演出を手掛ける小川絵梨子(左)と上村聡史(右)
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すべて見るポーランドの鬼才クシシュトフ・キェシロフスキが旧約聖書の「十戒」をモチーフにTVシリーズとして制作した十篇の物語「デカローグ」。同作を完全舞台化した「デカローグ1~10」が東京・新国立劇場にて4月から7月にかけて上演される。2月12日(月・休)、演出を務める小川絵梨子と上村聡史、そして『愚行録』、『ある男』などの映画監督で、ポーランドで映画を学んだ経験を持つ石川慶によるトークセッションが行われた。
小川はアメリカ留学中に周囲の勧めで「デカローグ」を鑑賞して衝撃を受けたという。当時は「映像の世界の作品」と捉えていたが「10年くらい経って、日本で『やりたい作品はない?』となった時、どうしても心に残っていました。ワークショップをやらせていただいたりもして、演劇でも人間の物語、ちょっと引いた大きな視点で『できなくはないな』と思って『いつかはやってみたい』と。1話ずつ独立しつつも10話でひとつのサーガになっているんですけど、10話連続で上演させてくれるプロデューサーなんていないので、(自身が芸術監督を務める)ここ(=新国立劇場)でやりますと(笑)」と舞台実現に至るプロセスを明かす。
ポーランド留学中に映画学校で本作に触れたという石川は、本作を「教科書のような存在」、「映画をつくっていて困ると見直すような作品」だと明かす。日本で映像化できないかと企画書を書いたこともあったそうで、今回の舞台化の話を知った時は「正直、『自分も仲間に入れてほしかった』と思いました(苦笑)」と少し残念そうに語りつつ「いくつかのエピソードをやるのだと思ったら全10話で、俳優陣を見て『ガチのやつだ』と思いました。お二人が演出と聞いてワクワクしました」と舞台版への期待を口にする。
上村は小川からのオファーに「二つ返事で『やります』と言いました」と明かす。送られてきた映画版の脚本に目を通しながら「映像で評価の高い作品で、舞台芸術ならではのやり方に苦労するだろうとは思いつつも、舞台でもいけるという確信がありました」と舞台化への自信をのぞかせる。
十篇のエピソードを小川と上村でそれぞれ5話ずつ演出することになるが、全体の統一感をどう持たせるか? どちらがどのエピソードを担当するかといった点に関しては「長く互いの作品を観てきているので、そこはスムーズでした」(小川)、「演出プロセスの踏み方は違うかもしれないけど、大事にしていることは似てると思います。(大事なものは)俳優の中にあって、それが物語になる――だからこそ瞬間、瞬間の芝居を積み重ねていくという信念にシンパシーを持っています」(上村)と互いへの信頼は揺るがない。
本作を演劇として上演する意味について、小川は「(戒めを)破ってしまうのが人間の宿命であり、だからこそ十戒というものがあり、宗教だけでなく、人間の根源的なもの――生きていく上で戒めておかないと流されてしまうものという意味なのかと思います。人間の強くないところ、悩んでしまうところ、不安や後悔してしまうこと、合っているかどうかわからず不安を抱えたり、自分をごまかしたり、そうなっていく人間にものすごく寄り添っている物語であり、善い悪いとジャッジしないんですね。決して甘い話ではなく、厳しさはあるけど、人間の根底への肯定感がある。わかっているけどそうなってしまう部分、そこで生まれる葛藤や感情は単色ではなくグラデーションであり、その言葉にできない体温のある感情を、舞台だからこそ感じていただけるところがあると思います。言葉で表現できない葛藤のジレンマや複雑な感覚を生々しく舞台で感じていただけることを目指して頑張ります」と力強く語っていた。
新国立劇場の演劇『デカローグ1~10』告知映像
舞台『デカローグ 1~10』は4月13日(土)より7月15日(月・祝)まで、3つの期間に分けて、全10篇を上演。チケット一般発売は2月17日(土)10時より。
取材・文・撮影:黒豆直樹
<公演情報>
舞台『デカローグ 1~10』
原作:クシシュトフ・キェシロフスキ/クシシュトフ・ピェシェヴィチ
翻訳:久山宏一
上演台本:須貝英
演出:小川絵梨子/上村聡史
2024年4月13日(土)~7月15日(月・祝)
会場:東京・新国立劇場 小劇場
[プログラムA、B交互上演(デカローグ 1-4)]
公演日程:2024年4月13日(土)~5月6日(月・休)
●プログラムA(デカローグ1、デカローグ3)
デカローグ1:ある運命に関する物語
演出:小川絵梨子
出演:ノゾエ征爾 高橋惠子
チョウヨンホ 森川由樹 鈴木勝大 浅野令子
亀田佳明
デカローグ3:あるクリスマス・イヴに関する物語
演出:小川絵梨子
出演:千葉哲也 小島聖
ノゾエ征爾 浅野令子 鈴木勝大 チョウヨンホ 森川由樹
亀田佳明
●プログラムB(デカローグ2、デカローグ4)
デカローグ2:ある選択に関する物語
演出:上村聡史
出演:前田亜季 益岡徹
坂本慶介 近藤隼 松田佳央理
亀田佳明
デカローグ4:ある父と娘に関する物語
演出:上村聡史
出演:近藤芳正 夏子
益岡徹 松田佳央理 坂本慶介 近藤隼
亀田佳明
[デカローグ5~6(プログラムC)]
公演日程:2024年5月18日(土)~6月2日(日)
●プログラムC(デカローグ5、デカローグ6)
デカローグ5:ある殺人に関する物語
演出:小川絵梨子
出演:福崎那由他 渋谷謙人 寺十吾
斉藤直樹 内田健介 名越志保 田中亨
亀田佳明
デカローグ6:ある愛に関する物語
演出:上村聡史
出演:仙名彩世 田中亨
寺十吾 名越志保 斉藤直樹 内田健介
亀田佳明
[デカローグ7~10(プログラムD&E 交互上演)]
公演日程:2024年6月22日(土)~7月15日(月・祝)
●プログラムD(デカローグ7、デカローグ8)
デカローグ7:ある告白に関する物語
演出:上村聡史
出演:吉田美月喜 章平 津田真澄
大滝寛 田中穂先 堀元宗一朗 笹野美由紀 伊海実紗
亀田佳明
デカローグ8:ある過去に関する物語
演出:上村聡史
出演:高田聖子 岡本玲 大滝寛
田中穂先 章平 堀元宗一朗 笹野美由紀 伊海実紗
亀田佳明
●プログラムE(デカローグ9、デカローグ10)
デカローグ9:ある孤独に関する物語
演出:小川絵梨子
出演:伊達暁 万里紗 宮崎秋人
笠井日向 鈴木将一朗 松本亮 石母田史朗
亀田佳明
デカローグ10:ある希望に関する物語
演出:小川絵梨子
出演:竪山隼太 石母田史朗
鈴木将一朗 松本亮 伊達暁 宮崎秋人 笠井日向
亀田佳明
チケット情報:★2月17日(土)10:00より、チケット一般発売開始!
公式サイト:
https://www.nntt.jac.go.jp/play/dekalog/
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