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話を盛らず、端折らず、全部をしゃべる。鶴瓶噺の完全体は、やっぱり@舞台にて。

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笑福亭鶴瓶 撮影:源賀津己

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齢72歳にして新番組が始まった男、笑福亭鶴瓶。昭和、平成、令和と世は移ろい、あらゆる価値観がアップデートされる時代で、ことさらに「年齢」のことを語るのはいかがなものかだが、それでもなお72歳からの新番組はすごい。なのに、である。当の本人は新番組への気負いなどまるでなく、鶴瓶噺の素のようなエピソードを紡ぎ始めるではないか。取材現場だというのに、まるでココが舞台であるかのように。

「新しい番組は、阿川佐和子さんと一緒にやっているんですけど、菅原洋一さんという歌謡界の大御所の方がゲストに来てくださったんです。90歳になられたのかなぁ。でも、いまだに現役でライブやコンサートをしているすごい方で。菅原さんのマネージャーは奥さんが担当しているそうなんですが、阿川さんは週刊文春で対談の連載をしていて2年ほど前に菅原さんへオファーをしたことがあると。編集部の人がマネージャーである奥さんに電話をしたんでしょうね。そしたら奥様が『文春!?』とえらいびっくりされて。ご主人の菅原洋一さんが女性関係でなにかしでかしたのかと勘違いされたみたいで。いやいやと。菅原洋一さんはまじめな人だし、その時88歳の米寿の方に文春砲は炸裂しないでしょうって(笑)」

鶴瓶噺の肝は「日常で本当にあったことが一番おもしろい」ということ。だから、話を盛らず、端折らず、全部をしゃべる。まるで、喫茶店でのツレとの雑談のように。とくに舞台では、テレビのような時間の制限がないから、より自由なのだという。

「自由というのなら、鶴瓶噺を聴きに来てくれるお客さんも相当ですけどね。落語会でも本ネタに入る前に鶴瓶噺をしゃべるんですけど、少し前の芸文(兵庫県立芸術文化センター)でのことでした。鶴瓶噺として吉永小百合さんのはなしをしたんです。吉永さんの歴代の恋人役は、渡哲也さんや石原裕次郎さんといったスーパースターばかりだったと。なのに、なぜか僕がお相手役に選ばれたことがあると。『なんで俺なんやろ?』と舞台でつぶやいたら『もう飽きたんや!』と絶妙なタイミングで叫んだ観客のおっさんがいたんですよ。変に笑わそうとする言い方じゃなかったのがよかったんでしょうね。爆笑でした。しかもね、一般の人は一度ウケると調子にのって次のエピソードでもなにか言おうとするもんなんですけど、その方はその1回だけ。関西人って、すごいなぁと思いました」

「笑いにする」という表現がある。たとえば、悲しい出来事を笑いに昇華させるという、それはそれで素敵な処し方でもある。けれど、鶴瓶噺は根本が違う。「笑いに〝する〟」という作為がない。「笑わす」でも「笑われる」でもなく、日常に「笑いがある」ことを発見して、話を盛らず、端折らず、全部をしゃべる。でも、である。なぜ、笑福亭鶴瓶は、一般人ならば見逃してしまう日常の笑いを、かくも高確率で発見できるのだろうか。

「才能とかそんなんじゃ全然ないんです。ただ、瞬間瞬間のアンテナっていうのかなぁ。そういうものは立てておかないととは思うんです。たとえばね、大阪の伊丹空港で漬物屋の前で掃除してはるおばちゃんがいてて、千枚漬けを売っていたんです。『千枚漬け、いかがですかぁ。千枚漬け、いかがですかぁ』って。そしたら小さな声でぼそっと『千枚ないけど』って(笑)。こういうのが僕はめっちゃ好きなんです。こういう日常が一番おもしろいと思うんですよ」

取材現場だというのに、鶴瓶噺の〝素〟のようなエピソードは続いた。素ではなく、鶴瓶噺の完全体はどこで聴けるのか。もちろん、観客の笑い声や時に絶妙な〝コール&レスポンス〟が起こる劇場にてである。

取材・文:唐澤和也
撮影:源賀津己

<公演情報>
『TSURUBE BANASHI 2024』

■大阪公演
公演日程:2024年4月17日(水)~4月21日(日)
会場:森ノ宮ピロティホール

■東京公演
公演日程:2024年5月8日(水)~12日(日)
会場:世田谷パブリックシアター

チケット情報:
https://w.pia.jp/t/tsurubebanashi2024/

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