音楽・ダンス・演劇が有機的に絡み合う、小尻健太ら「ラヴェル最期の日々」開幕
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「Music Program TOKYO シアター・デビュー・プログラム『ラヴェル最期の日々』《新制作》」より。(撮影:飯田耕治、提供:東京文化会館)
「Music Program TOKYO シアター・デビュー・プログラム『ラヴェル最期の日々』《新制作》」が本日2月17日に東京・東京文化会館 小ホールで開幕した。
これは、東京文化会館が中・高校生向けのオリジナル作品を発信する「シアター・デビュー・プログラム」の一環として披露される作品。今回は「ボレロ」などで知られるフランスの作曲家モーリス・ラヴェルの波乱に満ちた生涯を、加藤昌則の音楽監督・作編曲、劇団太陽族・岩崎正裕の演出・脚本、小尻健太の振付・ダンスによって立ち上げる。
作中では、ラヴェルの楽曲構成の仕組みや彼にまつわる小ネタを挟みつつ、ラヴェルが作曲家として絶頂を極めるも、晩年の交通事故をきっかけに記憶喪失・言語障害に陥り、自身の中から音楽が消えていくさまが、切なくも美しく描かれる。
本作ではラヴェルが生んだ“音楽”が、ピアノ・弦楽器・バンドネオンの生演奏によってまるで1人の登場人物であるかのように力強くステージ上に存在。加藤をはじめ演奏者はキャストと目線を交わしたり、小芝居で応えたりしながら、物語に参加する。ラヴェル役の小尻は冒頭、記憶の残像であるかのような“温度のなさ”で現れ、観客を引きつけた。また、音楽家として輝かしい時代では華やかでダイナミックな身振り、人生の暗部で苦悩と狂気にまみれるシーンでは静動巧みに使い分け、表現力の幅を見せる。ラヴェルの隣人として語り手的にストーリーを牽引するジャック・ド・ゾゲブ役の西尾友樹は、出演者の間を縫うようにして舞台上を動き回り、ラヴェルの物語を情熱的に伝えた。舞台上では音楽・ダンス・演劇の3要素が共鳴。ラヴェルという1人のクリエイターの音楽から、栄光と挫折、友情、そして命の終わりまでが、力強く立ち上げられた。
上演時間は約2時間、公演は明日2月18日まで。
「Music Program TOKYO シアター・デビュー・プログラム『ラヴェル最期の日々』《新制作》」
2024年2月17日(土)・18日(日)
東京都 東京文化会館 小ホール
音楽監督・作編曲:加藤昌則
演出・脚本:岩崎正裕
振付・ダンス:小尻健太
出演:西尾友樹
演奏:加藤昌則(ピアノ)、橘和美優(バイオリン)、清水詩織(チェロ)、仁詩 Hitoshi(バンドネオン)
※小尻健太の「尻」はしかばねに丸が正式表記。