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別役実の戯曲「天才バカボンのパパなのだ」が下北沢にて開幕

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「天才バカボンのパパなのだ」 (撮影:ワタナベミカ)

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舞台「天才バカボンのパパなのだ」が2月21日より下北沢・本多劇場にて開幕した。初日公演に先駆けて同日に行われた公開ゲネプロの模様をレポートする。

日本を代表する劇作家である別役実の戯曲「天才バカボンのパパなのだ」を玉田企画の玉田真也が演出を行う本作。赤塚不二夫のギャグマンガ「天才バカボン」の設定を借りた戯曲だ。
署長を浦井のりひろ(男性ブランコ)、巡査を佐々木崇博(うるとらブギーズ)、バカボンをかみちぃ(ジェラードン)、バカボンのママを浅野千鶴、パパを市川しんぺー、レレレのおばさんを川面千晶、女1をはる(エルフ)、女2を西出結が演じる。
またメトロンズのメンバー(関町知弘、田所仁、児玉智洋、赤羽健壱、KAZMA、村上純)が男役として日替わりで出演する。

タイトルにあるようにバカボンのパパが主人公なのかと言うと少し違う。主人公というポジションをつけるのだとしたら署長と巡査だろう。

冒頭。路上にある電信柱に引っ越してきた派出所。派出所として定められた場所にどこか不服そうな様子を見せる巡査と、場所を提案した署長は最初から問答を繰り返す。
デスクと電話、書類だけの簡素な派出所にバカボンファミリーが次々と現れる。傘を差しながら現れたバカボン、そこに通りかかったバカボンのママ、自分は猫になっているのだと思っているパパ、レレレのおばさん。さほど問題ではないことに揉めに揉める派出所。
さらに、派出所に迷惑行為の相談にやってきた女によって事態は最悪の状況を迎えることになる。

今回の舞台は人気芸人と実力派の俳優たちによって作り上げられた、ある種ハイブリッドな作品だ。浦井、佐々木、かみちぃ、はるは演劇初挑戦となるが、それを感じさせない熱量を発している。よく通る声、その声が現わす感情曲線もとても豊かだ。
冒頭の署長と巡査の「電信柱じゃないとしたら、ここにいるのが嫌かどうか」から始まる押し問答からして、テンションのコントラストが激しく、彼らが言わんとしていることはなんなのか、とグッと身を乗り出してしまう。

そこにバカボンファミリーが加わっていくことで、物語は混とんとしていく。署長と巡査の最初の会話で「なんでもないことにこだわりすぎている」というセリフがあったが、物語の根幹にあるのはその部分だろう。
それぞれの何気ない違和感に主に巡査がツッコミを入れ、その違和感が解消されるどころか、ますます混乱を招いていくことになる。「なぜ?」と思うことに解決が見えないのだ。
署長は何かと「普通」という言葉を口にするが、物語が進んでいくにつれて「普通」とはなんなのかを考えさせられる作りとなっている。それは物語の最後まで答えが出ることなく、この世に「普通」などないのではないかと省みることになるかもしれない。

そして、ハイテンションで物語が進んでいく中で、ふとしたときに訪れる長い沈黙が物語のエッジを際立たせる。もちろん沈黙もシーンのひとつなのだが、役者たちのテンションが振り切っている中での沈黙に、このあと何が起こるのか、と思わずこちらも息をひそめてしまう。そんな期待が常に続くのもこの作品の魅力と言えるかもしれない。
メトロンズが日替わりで演じる「男」についても気になるところ。セリフは少ないが、その動向が気になって仕方がなくなる。ゲネプロでは児玉が演じていたが、コントの名手たちとも言える彼らがどのような存在感を放ってくれるのかも楽しみだ。

「天才バカボンのパパなのだ」は来月3日(日)まで下北沢・本多劇場にて上演中。

取材・文:ふくだりょうこ
撮影:ワタナベミカ

<公演情報>
「天才バカボンのパパなのだ」

公演日程:2024年2月21日(水)~3月3日(日)
会場:下北沢・本多劇場
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/bakabon2024/

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