Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
ぴあ 総合TOP > 新キャストの東啓介と立石俊樹が『VIOLET』への想いを語る

新キャストの東啓介と立石俊樹が『VIOLET』への想いを語る

ステージ

インタビュー

チケットぴあ

左から)東啓介、立石俊樹

続きを読む

フォトギャラリー(3件)

すべて見る

顔に大きな傷を負った若き女性・ヴァイオレットが、その傷を癒すため、初めてひとり旅に出る。長距離バスに乗り込んだ彼女は、そこでさまざまな人たちと出会い――。現代にも通じる多様な問題を、優しく、そして力強く問いかける珠玉のミュージカル『VIOLET』。その再演が決定し、19年のロンドン版、20年の日本初演版に続き、藤田俊太郎が演出を手がける。また主人公のヴァイオレットほか、多くのキャストが一新。黒人兵士のフリックには東啓介が、白人兵士のモンティには立石俊樹が抜擢された。そこで東と立石のふたりに、本格的な稽古開始を前にした現在の心境を語ってもらった。

“恐怖”を共有し合う、不思議な信頼で結ばれたふたり

――おふたりが演じるのは、黒人兵士のフリックと白人兵士のモンティです。それぞれの人物像、またふたりの関係性についてどう捉えていますか?

 フリックはすごく不器用で、でも心の優しい人だと思います。抱えているものはとても大きいですが、その中で戦っている姿は非常にカッコ良くて。モンティとは上司と部下という関係ですが、ちょっと兄弟っぽい感じもありますよね。ただ時代的に、白人と黒人が仲良くしていることの危うさみたいなものも感じて。ヴァイオレットの登場によっても変化しますし、本当にいろいろな関係性の見えるふたりだなと思います。

立石 モンティは女性に対する差別的な部分が見られますが、その一方、黒人差別がまだまだ激しい時代にフリックを守るような姿勢も見せるんですよね。きっとモンティにとってフリックは、友達とか、上司とかを超えた、人として頼れる、心の拠り所のような存在なのかなと。ただふたりは軍人で、共に命に関わる仕事をしている。“恐怖”を共有しているという意味でも、不思議な信頼によって築かれた関係なのかなと思います。

――この人物を演じる上で、最初の足がかりになりそうなのはどんなことだと思いますか?

 徴兵制や肌の色の違いなど、日本に暮らす僕らにはよくわからない部分もありますが、“コンプレックス”と捉えるとすごく身近なものとして考えられると思うんです。今の時代、普通に生活していくだけでも戦っているような感覚がありますから。さらに演出の藤田(俊太郎)さんからいただいた映像資料なども参考にしつつ、フリックという役を肉づけしていきたいと思っています。

立石 もともと僕は消防士で、実はその前に自衛隊の面接を受けたこともあったんです。その時の面接官から、自衛以上の危機感というか、もっと真に迫った、殺気にも似たような空気を感じて。それって普段生活している僕たちにはわからない世界ですが、実は身近なもの。そういった空気感みたいなものは、この役に生かせるのかもしれないなと思いました。

――ふたりにとってヴァイオレットとは、どういった存在なのだと思いますか?

 フリックがヴァイオレットに言う、「愛している」という言葉の意味を、僕はまだよくわかっていません。人として愛している、なのか。ほっとけない、守ってあげたいという意味なのか。もしくはモンティに対する嫉妬なのか。またコンプレックス、差別という点では同志のような繋がりを感じながらも、どこか素直になれない部分もあって。これから稽古を通して自分がどういう気持ちになっていくのか、今から楽しみです。

立石 女性経験が豊富なモンティですが、あんなふうに夢を語るなんてことは、ヴァイオレット以外の人にはしたことがなかったんじゃないかと思うんです。それは自分でも思ってもみなかったことで、もしかしたらモンティにとっては、真実の愛だったのかもしれないなと。それが戦争に行く前というのが悲しいですが、一生の間にそう思える人が出来たのであれば、とても素敵なことだと思います。

自分に置き換えることで、見つめ直すきっかけになれば

――演出は、第31回読売演劇大賞最優秀演出家賞にも輝いた藤田俊太郎さん。東さんとは『ラグタイム』以来、立石さんとは初の顔合わせとなります。

 すごく優しくて、なんでも挑戦出来るような場所を作ってくださる方です。それによってこちらも自信が持てますし、進むべき道をしっかり照らしてくれる。作品によっては間違いを恐れてしまうような現場もありますが、藤田さんとはタッグで作っている感覚があって。僕にとってはとてもありがたい演出家さんですね。

立石 僕はまだお会いしたのも2回くらいなんですが、作品に関する参考資料をくださったり、それを熱心に教えてくださったり、皆さんからお話しを聞いていた通り、とても素敵な方だと思います。あと僕も藤田さんも同じ秋田県出身ということで、そこがまた嬉しく、共にいい作品を作り上げられるよう尽力したいと思っています。

――この作品を通して、お客様にどんなものをお届け出来たらと思いますか?

 この『VIOLET』は異国の話ではありますが、日本でもわかり得るところがたくさんあると思います。ヴァイオレットの顔の傷やフリックの肌の色など、自分たちに置き換えられるような題材がたくさんあって。人に対する見方がすごく単調になっている今だからこそ、なにかを見つめ直したり、自分はこうしたいと動き出すきっかけになれたら、これほど嬉しいことはありません。

立石 ヴァイオレットは25歳で初めて外の世界に飛び出すわけですが、それを遅いと感じる人もいるかもしれません。でも自分の気持ちで動いたものっていうのは、絶対に誰かの人生になにかしら影響を与えるものだと思いますし、それに早いも遅いもないんじゃないかなと。だからスタートはいつでも切れますし、この作品を観ることで前向きな気持ちになってもらえたらなと思います。

取材・文:野上瑠美子

<公演情報>
ミュージカル『VIOLET』

東京公演:2024年4月7日(日)~21日(日) 東京芸術劇場プレイハウス
大阪公演:2024年4月27日(土)~29日(月・祝) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ

チケット情報:
https://w.pia.jp/t/violet2024/

フォトギャラリー(3件)

すべて見る