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新国立劇場が来季演目発表。開幕から2か月連続で新制作。細川俊夫新作も

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新国立劇場2024/2025シーズン オペラ・ラインアップ会見

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2月21日、新国立劇場が2024/2025シーズンのオペラ・ラインアップを発表。会見を開き、大野和士芸術監督が概要を発表した。シーズン・ラインアップは以下のとおり。

●ベッリーニ:夢遊病の女【新制作】

© Javier del Real | Teatro Real

10月3日(木)~14日(月・祝)[全5公演]
指揮:マウリツィオ・ベニーニ
演出:バルバラ・リュック
アミーナ:ローザ・フェオーラ(ソプラノ)
エルヴィーノ:アントニーノ・シラグーザ(テノール)
ほか

新シーズンの開幕を飾る新制作。ベッリーニ作品が新国立劇場で上演されるのはこれが初めて。かねてから大野芸術監督が標榜している、ベルカント・オペラのレパートリーを増やすという狙いに合う選曲。プロダクションはマドリードのテアトル・レアル、バルセロナのリセウ大劇場、パレルモ・マッシモ劇場との共同制作で、すでにマドリードで初演されている。
大野「輝かしい愛の歓びで終わるハッピーエンドのオペラ。演出のリュックは俳優出身で、オペラの世界に新しい光を放ちつつある。巨匠指揮者ベニーニとのコンビネーションをぜひ楽しんで。主役二人は説明不要。とくにフェオーラは、まだ若いがMETをはじめ急激に活躍の場を広げている。大スター、シラグーザとの愛の二重唱が繰り広げられる」

●ロッシーニ:ウィリアム・テル(ギヨーム・テル) 【新制作】
11月20日(水)~11月30日(土)[全5公演]
指揮:大野和士
演出・美術・衣裳:ヤニス・コッコス
ギヨーム・テル:ゲジム・ミシュケタ(バリトン)
アルノール・メルクタール:ルネ・バルベラ(テノール)
マティルド:オルガ・ペレチャッコ(ソプラノ)
ほか

ロッシーニ最後のオペラ。序曲は有名だが、オペラ全幕を見る機会はなかなかない。約5時間の大作。オリジナルのフランス語台本による上演(「ウィリアム・テル」という名前はフランス語では「ギヨーム・テル」となる)。
大野「演出のコッコスは、コロナ禍の2021年に『夜鳴きうぐいす/イオランタ』がリモートでの演出だったので、オペラパレスには初登場。リリックな性格を描き出すのが上手い。苦しみながらも自由を希求する村人たちの内面性が強く浮かび上がるだろう。テルを歌うのは、この役のスペシャリストのミシュケタ。ただ優美なだけでなく、人を包み込むあたたかさを持った声に惹かれて彼にお願いした」

●モーツァルト:魔笛(再演・2018年制作)
12月10日(火)~12月15日(日)[全4公演]
指揮:トマーシュ・ネトピル
演出:ウィリアム・ケントリッジ
タミーノ:パヴォル・ブレスリック(テノール)
パミーナ:九嶋香奈枝(ソプラノ)
ほか

大野「不思議な世界に連れて行ってくれるケントリッジ演出の《魔笛》。タミーノ役のブレスリックはいまや誰もが推す大スター。タミーノは若い頃から歌っているが、レパートリーを変えず、あたまの真ん中からぴーんと美しい線を描くように声を出す技術を維持しているのは素晴らしい。夜の女王に安井陽子さん、九嶋香奈枝さんがパミーナ・デビュー。パパゲーナには新国立劇場オペラ研修所出身の種谷典子さん。研修所で学んだ成果を発揮してほしい」

●ワーグナー:さまよえるオランダ人(再演・2007年制作)

新国立劇場「さまよえるオランダ人」2012年公演より 撮影:三枝近志

2025年1月19日(日)~2月1日(土)[全5公演]
指揮:マルク・アルブレヒト
演出:マティアス・フォン・シュテークマン
オランダ人:エフゲニー・ニキティン(バス・バリトン)
ゼンタ:エリザベート・ストリッド(ソプラノ)
ほか

大野「指揮者アルブレヒトに注目してほしい。オペラ指揮者として指折りの存在で、招聘が難しい指揮者の一人。何回もラブコールしてやっと初登場が叶った。オランダ人役には2012年の同役以来の登場のニキティン。威圧感があって、オランダ人の不思議な性格をよく表現することができるバス・バリトン。ゼンタには新国立劇場初登場のストリッド。“ユーゲント・ドラマティシュ”=若く劇的な声で適役。

●ツェムリンスキー:フィレンツェの悲劇/プッチーニ:ジャンニ・スキッキ(再演・2019年制作)
2025年2月2日(日)~2月8日(土)[全4公演]
指揮:沼尻竜典
演出:粟國淳
(フィレンツェの悲劇)
グイード・バルディ:デヴィッド・ポメロイ(テノール)
シモーネ:トーマス・ヨハネス・マイヤー(バリトン)
ビアンカ:ナンシー・ヴァイスバッハ(ソプラノ)
(ジャンニ・スキッキ)
ジャンニ・スキッキ:ピエトロ・スパニョーリ(バリトン) 
ラウレッタ:三宅理恵(ソプラノ)
ほか

大野「沼尻・粟國 の名コンビで生まれたプロダクション。シモーネに私たちの『マイスタージンガー』でハンス・ザックスを歌ったマイヤー。スキッキ役のスパニョーリは2017年の《フィガロの結婚》でアルマヴィーヴァ伯爵を歌っているが、その頃よりはるかに声が充実している。しかも面白いことができる歌手なので、ぜひにとお願いした」

●ビゼー:カルメン

新国立劇場「カルメン」2021年公演より 撮影:寺司正彦

2025年2月26日(水)~3月8日(土)[全5公演]
指揮:ガエタノ・デスピノーサ
演出:アレックス・オリエ
カルメン:サマンサ・ハンキー(メゾソプラノ)
ドン・ホセ:アタラ・アヤン(テノール)
エスカミーリョ:ルーカス・ゴリンスキー(バス・バリトン)
ほか

大野「2021年の新制作時はコロナ禍で、人と人の距離を離さなければならなかった。演出のオリエは今回、その距離を詰めて、声の交錯が浮かび上がっているようにしたいと、再来日してくれる。ホセ役のアヤンは若手ナンバーワンとして、強い声で将来を嘱望されているテノール。すでにカルメンで世界的に活躍しているハンキーの深い声と、彼の元気に満ちた強い声が、作品をより劇的にしてくれるはず」

●プッチーニ:蝶々夫人
2025年5月14日(水)~5月24日(土)[全4公演]
指揮:エンリケ・マッツォーラ
演出:栗山民也
蝶々夫人:小林厚子(ソプラノ)
ピンカートン:ホセ・シメリーリャ・ロメロ(テノール)
ほか

大野「蝶々さんを歌う小林厚子さんは、以前に高校生のためのオペラ鑑賞教室ではこの役を歌っているが、本公演ではこれがこの役のデビュー。彼女の大きなデビューになると思う」

●ロッシーニ:セビリアの理髪師
2025年5月25日(日)~6月3日(火)[全5公演]
指揮:コッラード・ロヴァーリス
演出:ヨーゼフ・E.ケップリンガー
アルマヴィーヴァ伯爵:ローレンス・ブラウンリー(テノール)
ロジーナ:脇園彩(メゾソプラノ)
フィガロ:ロベルト・デ・カンディア(バリトン)
ほか

大野「アルマヴィーヴァのブラウンリー、ロジーナの脇園彩さん、フィガロのデ・カンディア、バジリオの妻屋さん。まさに総スター。これだけの歌手が揃った《セビリア》はなかなかないだろう。こんなにもいろんなキャラクターがあるのかというぐらい、登場人物によって歌い方が違う作品。お客さんにもそのキャラクターの違いを心から楽しんでもらええるはず」

●細川俊夫:ナターシャ【新制作/創作委嘱作品・世界初演】
2025年8月11日(月・祝)~8月17日(日)[全4公演]
指揮:大野和士
演出:クリスティアン・レート
ナターシャ:イルゼ・エーレンス(ソプラノ)
アラト:山下裕賀(メゾソプラノ)
メフィストの孫:クリスティアン・ミードル(バリトン)
ほか

大野芸術監督による日本人作曲家委嘱作品シリーズ第3弾。細川俊夫は、大野和士がエクサン・プロヴァンス音楽祭で世界初演した《班女》(2004)や、2018年に新国立劇場で上演された《松風》など、オペラ作品での評価も高い。新作《ナターシャ》は細川自身の原案によるオリジナルのストーリーで、しばしばノーベル文学賞候補の一人としても名の上がる作家・多和田葉子がオペラ台本を手がけているのも注目。新国立劇場の本公演としては異例の8月の公演。

大野「この日本人委嘱シリーズで、私がずっと胸に抱いていた作曲家が細川俊夫さんです。どこか不思議な国の話。ウクライナ語を話すナターシャと日本語を話すアラトの二人が、なんとなく通じ合いながら旅をする。二人は現代のさまざまな問題で埋め尽くされている地下の世界へ下りていき、驚き、絶望しながらも、この地獄を自分たちの中に据え置いてはいけないのだと確信し、最初に出会った海辺に戻り肩を寄せ合う……。というのは私の想像(笑)。まだそこまで具体的にはなっていなくて、多和田さんの戯曲がほぼ完成して、そろそろ細川さんの作曲が始まるところです」

この数年、コロナ禍で邪魔をされた格好ではあったが、大野監督の周到な計画がもう一度軌道に乗り始めたのを感じるラインアップ。古典から現代まで、喜劇から悲劇まで、オペラの魅力をたっぷり味わえるシーズンになりそうだ。

文:宮本 明

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