クソな世の中でも誠実でいたい、anoがアルバムリリースツアーで語ったこと
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神輿に乗って現れたano。(撮影:鳥居洋介)
anoの東名阪Zeppツアー「猫吐極楽つあー ~何&卒よろしゅう~」の東京公演が、222(にゃんにゃんにゃん)の語呂合わせから「猫の日」とされている2月22日にZepp Haneda(TOKYO)で開催された。
神輿に乗って登場!カオティックな幕開け
12月発売の1stアルバム「猫猫吐吐」のリリースを記念して行われたこのツアー。ワンマンライブとして行われた東京公演では、その2枚組アルバムの収録曲をすべて組み込んだセットリストでライブが繰り広げられた。
オープニングムービーとして、anoとマスコットキャラのニャンオェちゃんが“空港のそばにあるゲロ温泉”に浸かりながら公演中の注意事項をアナウンスするアニメが上映されたのち、「猫吐極楽音頭」でライブはスタート。anoはネズミたちが担いだ神輿に乗りながら、ド派手にステージに姿を現した。TAKU INOUE(G)と西浦謙助(Dr)がバンドメンバーを務め、4人の女性ダンサーが踊るのを背にして、anoは神輿の上で大きく上下に揺れながら熱唱。観客も火が付いたように一気に盛り上がり、ライブはカオティックな幕開けとなった。
その後、anoは「デリート」「ンーィテンブセ」「Peek a boo」とロックチューンを連発。ポップなボーカルの中に、嘔吐するようなグロウルや耳をつんざくようなシャウトを織り交ぜながら、激しいパフォーマンスでオーディエンスを扇動していく。彼女がanoとしてのツアーを行ったのは昨年の「トキメキ偏愛♡復讐ツアー」が初めてだったが、その後ライブを重ねてきたことで、そのステージングには早くも貫禄すら漂っていた。
笑ってくれるみんながいるから僕は救われてる
どことなく妖しさをまとった「アパシー」や、アーバンなディスコチューン「Tell Me Why」で徐々に雰囲気を変えてから始まったのは「スマイルあげない」。この曲では「あのちゃん!」といったコールや、歌詞に合わせた合いの手がフロアから沸き起こり、会場内に一体感が生まれていた。そしてanoはブルーチーズを模したビーチフロートに乗ってフロアに突入。観客の頭上を波に乗るように漂いながら「イート・スリープ・エスケープ」を歌い上げた。
ここでアコースティックギターを構えたanoは、観客に向けて「やっぱりライブはいいですね」と笑顔に。「よくみんなに『あのちゃんはいつも自分らしく生きてる』って言ってもらえるんだけど、自分らしくいられないときも意外とあって。人と話すのは億劫だし苦手なんだけど、ライブだと会話とは違って本当につながれる気がする」と話した。そして彼女は、昨年「何をやっても楽しくない」という状況になり、ライブをすることすら怖くなったこともあったが、ファンが自分のライブを待ってくれていたことで救われたと説明。「テレビもラジオもそうだけど、笑ってくれるみんながいるから僕は救われてる。だからみんながしんどくて逃げたいときにも、しっかり僕が立ってみんなを待っててあげられるようになりたい」と観客に語りかけ、その思いを込めて「SWEETSIDE SUICIDE」を披露した。
「AIDA」で渾身の歌声を響かせたanoは、一旦ステージから退場。ベールをかぶって白いふわふわのドレスにチェンジし、「絶対小悪魔コーデ」でライブは後半戦に突入した。anoの煽りを受けてフロアは興奮状態に。さらに「コミュ賞センセーション」「涙くん、今日もおはようっ」と続き、anoがキュートなベールを獅子舞のように振り乱して歌うと、観客もそれに応えるように腕を振った。そして感情を爆発させながら「普変」を歌った彼女は、曲の終わりに「ありがとう! 感謝!」とシャウト。「ちゅ、多様性。」が始まるのと同時に客席に銀テープが発射され、再び会場のボルテージは上昇した。その盛り上がりは続く「F Wonderful World」でも衰えることはなく、残る力を振り絞るようにanoもオーディエンスも熱狂。最後にスモークが焚かれた神秘的なムードのステージに立った彼女は、初めは静かに、だんだんと力強く「鯨の骨」を歌いライブを締めくくった。
みんなも崖から落ちそうなときは、僕を見つけてほしい
アンコールの声に呼び戻されたanoは、「人がたくさんいると面白いです。1人ひとりの頭の中を全部見せてほしいなと思いながら今日はライブをしてました。その眼差しがストレートに刺さってきたので」と充実感に満ちた表情で挨拶。続けて「今って、誠実に生きてる人が報われる世界じゃない気がして。今日来てる人の中にも、学校でいじめられてる人もいるかもしれないし、もしかしたらいじめちゃったことがある人もいるかもしれない。みんながどれくらいの誠実さを持っているのか僕にはわからないけど、僕は誠実じゃないものはおかしいと思う。それに負けずに僕は僕のまま立っていたいし、それがファンのみんなに対する誠意なんだと思う」と自らの立ち位置を表明した。
そして「でも結局、飲み込まなきゃいけないことがいくつもあって限界というか。そうやって飲み込まれていく世の中は本当にクソです」とあふれ出る感情を言葉にしたano。そんな状態だった彼女にとって、目の前でライブを楽しんでくれるファンは「僕があと1歩で崖から落ちそうなときに止めてくれたストッパー」だったという。
「みんなも崖から落ちそうなときは、僕を見つけてほしい。いつでも待ってます」と呼びかけたanoは、最後にアコースティックギターを弾きながら、1月1日に配信リリースされたアルバム未収録の最新曲「YOU&愛Heaven」を歌唱。優しく語りかけるようでありながら、どこか強い意志を感じさせる彼女のボーカルに、オーディエンスはじっと聴き入っていた。歌い終えたanoは、晴れ晴れとした顔つきで来場者にお礼をしてステージをあとにした。
なおanoはこのツアーの追加公演として、3月20日に東京・Zepp Shinjuku(TOKYO)で単独公演「猫吐極楽温泉~ぷかぷか&ほかほかいい湯だなぁ~」を開催する。
セットリスト
「猫吐極楽つあー ~何&卒よろしゅう~」2024年2月22日 Zepp Haneda(TOKYO)
01. 猫吐極楽音頭
02. デリート
03. ンーィテンブセ
04. Peek a boo
05. アパシー
06. Tell Me Why
07. スマイルあげない
08. イート・スリープ・エスケープ
09. SWEETSIDE SUICIDE
10. AIDA
11. 絶対小悪魔コーデ
12. コミュ賞センセーション
13. 涙くん、今日もおはようっ
14. 普変
15. ちゅ、多様性。
16. F Wonderful World
17. 鯨の骨
<アンコール>
18. YOU&愛Heaven
公演情報
ano「猫吐極楽温泉~ぷかぷか&ほかほかいい湯だなぁ~」
2024年3月20日(水)東京都 Zepp Shinjuku(TOKYO)