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戸塚祥太が“問題児”扱いされる三男に、舞台「緑に満ちる夜は長く…」は「家族の“再生”の物語」

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舞台「緑に満ちる夜は長く…」より。

戸塚祥太主演「舞台『緑に満ちる夜は長く…』」が本日3月1日に東京・新国立劇場 小劇場で開幕する。これに先駆け昨日2月29日、囲み取材とゲネプロが行われた。なお記事ではあらすじや演出に触れているため、ネタバレを避けたい読者は注意してほしい。

これは田村孝裕が作・演出を手がける新作。劇中では、女手一つで育てられた男四兄弟の、母の死をきっかけに動き出す物語が描かれる。雪深い田舎町にぽつりと建つ緑川家。大人になった兄弟たちは実家を出て行ったが、あるハンデを抱える三男だけは母と暮らし続け、やがて母を看取った。母の葬儀の日、久しぶりに集まった兄弟たちが、鍵屋を呼んで母の金庫を開けようとすると、家族の秘密が明らかになっていき……。

舞台上には2階建ての一軒家。1階には、上手側に石油ストーブや金庫が置かれた広めの土間、下手側には畳の居間があり、2階には母の仏壇が鎮座する。3月だというが、屋根の上には残雪がまだ残っている。

幕が上がると、子供時代の四兄弟と母が、人形で戦隊ヒーローごっこをしている。誰よりも戦隊ヒーローに夢中な三男ユウ役の戸塚は、家族が真剣にごっこに取り組んでいないと感じて地団駄を踏んだり、キャラクターの設定を口を尖らせながら解説して再現させようとしたりし、頑固な性格を表現。ただその中には子供らしい、あどけなさも含まれていた。その後ユウは、家族を巡る事故をきっかけに、コミュニケーション障害を発症する。戸塚は、心を閉ざしたようにどこかを見つめながらじっと立つ姿や、つっけんどんな話し方で、ユウが場の空気を悪くしてしまう様子を生々しく演じた。

しかし舞台上には緊張感が漂い続けるわけではない。加藤虎ノ介演じる長男ゴウ、山口森広演じる次男カイ、溝口琢矢演じる四男ケイ、坂田聡演じるミノル(鍵屋)は、シリアスな場面でも気の抜けたやり取りをし、空気を和ませる。高橋由美子演じる母アキナは、心配や悩みはあるだろうが表には出さず、いつも明るく朗らかだ。また、舞台装置に変化はないが、過去に家の外で起きた出来事について語られるシーンでは、兄弟たちが子供の頃に遊んでいたのと同じ人形を、俳優自身が黒子になって操ることで当時の状況を再現するという手法で、観客の心をくすぐった。

家族の回想シーンを織り交ぜながら進んでいく本作では、繊細な会話のやり取りを通じて、現在に至るまでの兄弟や母の思いや、真実が描かれていった。事故を機にユウに罪悪感を抱いた兄弟と母は、ユウに特別に優しく接するようになり、一方でユウは家族から対等に見られないこと、みそっかす扱いされていることに不満を持つ。しかし、表に出ていなかった真実や本音が明かされていくうち、家族は心を通わせていく。それは、冬に降り積もった雪が春になって解けていくのと重なって見えた。

ゲネプロ前に行われた囲み取材で戸塚は「準備は万端です。明日の初日に向けて良いスタートが切れそうだ」と自信を語る。自身が演じるユウについては「幼い頃のトラブルが影響して、いわゆるコミュ障を抱えてしまう人物。そんなユウの存在があって、家族もコミュニケーションが円滑にいっていない。一言でまとめると“問題児”」と説明し、「たとえ家族同士でも、白黒つかないグレーな部分があると思います。(緑川家の)四兄弟たちは、母の死をきっかけに、未来を見据えて家族の在り方に向き合っていく。“再生”のメッセージが込められた物語です」と語った。

上演時間は約1時間45分。東京公演は3月17日まで行われ、その後、30・31日に大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TTホールで上演される。

舞台「緑に満ちる夜は長く…」

2024年3月1日(金)~17日(日)
東京都 新国立劇場 小劇場

2024年3月30日(土)・31日(日)
大阪府 COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール

作・演出:田村孝裕

キャスト

ユウ(三男):戸塚祥太
ゴウ(長男):加藤虎ノ介
カイ(二男):山口森広
ケイ(四男):溝口琢矢
ミノル(鍵屋):坂田聡
アキナ(母):高橋由美子