伝説のアニメをインバル・ピントが舞台化する話題作

自分がコナンとして舞台に立つ……ワオ！って感じです

――話題の大作ですが、出演が決まった時の心境は？

まさに大作ですよね。僕にとっては宮崎駿様であり、インバル・ピント様であり、しかも自分がコナンとして舞台に立つ……ワオ！って感じで（笑）。今はそのワオ！を少し静観出来るようになってきましたが、相当タフな現場になると思うんです。身体的にも、技量的にも。さらにたくさんの人が特別な想いを持っているこの作品に、主演として立たせていただくわけですから。その重みというのは、これまで共演させていただいた諸座長たちの背中を見て痛感し続けてきたことでもあって。考え過ぎるのもよくないですが、作品に真摯に向き合うという意味でプラスに働くのであれば、その重さは常に持ち続けたいなと思っています。

――演じられるコナンは多くの人に愛されるキャラクターですが、その理由はどんなところにあると思いますか？

少年なんだけれど少年じゃないところかなと思います。この人出来すぎだな！と思う場面もあるのですが、なるべくしてなっているせいか、いやらしさがない。それでいてませているわけでもなく、ちゃんと純粋で少年らしさもあるところがコナンだなと。だからこそ他の登場人物たちも動かすし、『未来少年コナン』を見た人たちをも動かす。それって役者としても見習わないといけない力だと思っていて。僕にとってコナンは、非常に魅力のつまった、尊敬出来るキャラクターですね。

――そんなコナンを演じる上で、大切にしていきたいこととは？

コナンって冷めている時が一瞬もないんですよね。人に対してもそうだし、自分のしたいことに対してもそう。その炎を絶やさず燃やし続けている人で。だから自分がコナンを演じるに当たっては、いかに冷めずにやり切れるか。どれだけ舞台『未来少年コナン』に燃やせるか。それがとても大切であり、また楽しみにしていることのひとつでもあります。

絶対に今の加藤清史郎を超えなければ出来ないこと

――演出・振付・美術を手がけられるのは、昨年再演された『ねじまき鳥クロニクル』でも高い評価を得たインバル・ピントさん。彼女が作る舞台の魅力とは？

僕が思ったのは、そこにその空間を存在させる、という力のある人だということです。しかもその存在のさせ方が、新時代的なデジタルに頼るだけではない、むしろ頼らない、もっと簡単に人が演じるという方法を選んでいて。でもその簡単な方法を選んだがゆえに、もっと複雑で難しい部分もある。そしてそれを一緒に乗り越えてきた役者さんが、今回のキャストの中にもたくさんいらっしゃるんですよね。そういった方々と一緒に、この作品に向き合える。その楽しみがある一方、自分も同じ土俵に立つ以上は、相当なちゃんこを食べないと立てないだろうなというプレッシャーも感じています（笑）。

――高い身体性を求められるインバルさん作品ですが、『るろうに剣心　京都編』で見せた加藤さんの殺陣が素晴らしく、実は自信があるのではないかと思っているのですが……。

子供のころから体を動かすことは好きでした。殺陣は『るろうに剣心』の時が初めてだったんですが、すごく人気のある役ということもあり、基礎に忠実にレッスンを受けさせていただいて。ただ刀を振ること自体は、誰にでも出来ることだと思うんです。でもコナンのように壁を二足歩行で登るっていうのは、なかなか難しいだろうなと（笑）。もちろんいろいろな助けを借りつつも、絶対に今の加藤清史郎を超えないと出来ないこと。そのためにもまずは、その壁を越えようとするパッション、（胸に手を当てて）ここが大事じゃないかなと思っています。

――今の時代にこの『未来少年コナン』という作品は、どんなふうに響くのではないかと思いますか？

この作品自体は70年代のアニメですが、その中で語られている内容や本質というのは、今の時代でもまったく変わらないと思うんです。それが宮崎駿さんのすごさでもあって……。そういった作品を観た時に、コナンから見たら大人である僕ら、そして多くの観客の方がなにを思うのか。絶対に刺激的な体験になると思いますので、ぜひ劇場に足を運んでいただけたら嬉しいです。

取材・文：野上瑠美子
スタイリスト：古舘謙介
ヘアメイク：Ken Nagasaka

＜公演情報＞
舞台『未来少年コナン』

公演期間：2024年5月28日(火)～6月16日(日)
会場：東京芸術劇場 プレイハウス
チケット情報：
https://w.pia.jp/t/fbconan2024/