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「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメは『ともしび』

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リアルサウンド

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替わりでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、最近色々あったリアルサウンド映画部の島田が『ともしび』をプッシュします。

参考:<a href=”https://www.realsound.jp/movie/2019/01/post-311959.html”>配役と演出の妙が生み出す物語の奥行き 『轢き逃げ 最高の最悪な日』は水谷豊監督“渾身の一本”に</a>

『ともしび』
 『愛の嵐』、フランソワ・オゾン監督作『まぼろし』などに出演し、名女優としての地位を確固たるものにしているシャーロット・ランプリングの主演作である『ともしび』。もはやランプリング主演作というだけで一見の価値があると言っても過言ではないだろう。本作でも、2017年ヴェネチア国際映画祭主演女優賞を受賞している。

 ベルギーの小さな地方都市で慎ましく暮らす老夫婦であるアンナとその夫。しかし、夫がある罪を犯したことから徐々にアンナがその孤独感に苛まれていく様子が静かに描かれている。セリフも少なく、過剰な音楽もないが故にそのアンナの孤独感が一層際立って伝わってくる。

 そして、そんな静かに進む映画でもずっと観ていられると感じるのはランプリングあってこそ。表情やちょっとした所作だけでアンナの不安定な心情を表現する。かと思えば、ふとした拍子に嗚咽し号泣する。息を呑むような演技の数々で、ランプリングでなければ本作は成立しなかったのではとすら思わせる。

 夫が犯した罪名も劇中では語られず、ひたすらアンナの行方だけに焦点を絞る本作を観れば、映画祭主演女優賞作というのも頷けるはずだ。ランプリング自身も40代で鬱病に苛まれ、さらには精神疾患で姉を喪い、二度目の夫とは彼の不倫が原因で離婚するなど年を経ても平穏とは遠い生活を送ってきた。あらゆる経験を実人生においても送ってきたからこそ出せる「重み」というものを、やはり感じざるを得ない。 (文=島田怜於)