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見どころ満載の人気作を貴重な“通し上演”で

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寒さの中にも少しずつ春の足音が聞こえてきた3月、東京・東銀座の歌舞伎座では「三月大歌舞伎」が上演中だ。

昼の部(11時開演)は、歌舞伎三大名作のひとつ『菅原伝授手習鑑』より、「寺子屋」で幕を開ける。二組の夫婦の忠義と悲劇を、尾上菊之助、片岡愛之助らがどう描くか見ものだ。

続く華やかな舞踊『傾城道成寺』は、四世中村雀右衛門の十三回忌追善狂言。四世の次男で当代の雀右衛門が「傾城清川実は清姫の霊」に、かつての恋人である「白川の安珍実は平維盛」には尾上松緑が扮する。蛇身と化した清川を鎮めるクライマックスには、導師尊秀として尾上菊五郎が登場。歌舞伎座ならではの豪華な布陣で贈る。

昼の部の最後は、新歌舞伎の名作『元禄忠臣蔵』より、「御浜御殿綱豊卿」を。のちに六代将軍・家宣となる聡明な徳川綱豊卿に片岡仁左衛門、気骨ある赤穂浪士・富森助右衛門には松本幸四郎と、こちらも見逃せない顔合わせだ。

一方の夜の部(16時15分開演)は、『伊勢音頭恋寝刃(いせおんどこいのねたば)』を、歌舞伎座ではなんと62年ぶりという“通し上演”で。その後は、桜が満開の京・東山で喜撰法師が祇園の茶汲み女お梶と共に繰り広げる舞踊『六歌仙容彩 喜撰』で打出しとなる。

『伊勢音頭恋寝刃』は、江戸時代に起きた実話をもとにした人気作。主人公は、伊勢神宮の神職・御師(おんし)の福岡貢(幸四郎)。御家横領の陰謀に巻き込まれたかつての主筋、今田万次郎(菊之助)が紛失した名刀・青江下坂と、その鑑定書である折紙(おりかみ)を見つけるために奔走する。ようやく二見ヶ浦で悪の一味の密書を手に入れるものの、事態は二転三転して……。

“通し上演”だけに、万次郎が青江下坂と折紙を紛失するという、物語の発端となる「相の山」からの上演。貢が万次郎と対面する「宿屋」、密書を巡って万次郎の従者・奴林平(中村歌昇)と、悪方の杉山大蔵(大谷廣太郎)・桑原丈四郎(中村吉之丞)がユーモラスな駆け引きを繰り広げる「追駈け」「地蔵前」。さらに夫婦岩を背景に、貢が密書の宛名を読み上げる「二見ヶ浦」と、見せ場が続く。当時の人気観光地である伊勢の名所を、随所に盛り込んだ趣向も楽しい。

続く「太々講」は上演されることが少ないため、今回の見どころだ。奉納金の百両をせしめようとする正直正太夫(坂東彦三郎)のコミカルなシーンをまじえつつ、青江下坂の妖刀たる因縁が明かされる。貢の叔母おみね(市川高麗蔵)の鮮やかな意趣返しが、歌舞伎らしい面白さ。

そして後半、人気の「油屋」「奥庭」へ。貢は遊廓油屋で、深い仲の遊女お紺(雀右衛門)を待つ間に、仲居万野(中村魁春)の計略にはまってしまう。貢は、歌舞伎でいう“ぴんとこな”(上方らしい柔らかさの中に、立役の強さをもつ)の代表的な役どころ。前半は優しげな表情が続くが、万野に煽られ次第に理性を失うところから、物語は急展開を見せる。妖刀に魅せられたように血にまみれてゆく幸四郎に注目したい。

悪方の前であえて“愛想尽かし”をするなど、情の深さを感じさせるお紺の雀右衛門、憎々しげな仲居を見事に演じて存在感を放つ魁春。さらに貢を助ける料理人喜助に扮した愛之助のキビキビとした頼もしさ、貢恋しで万野に加担することになる不器量なお鹿役・坂東彌十郎のチャーミングさ、貢とお紺を見守るお岸を演じる坂東新悟の繊細さなど、次々に登場する人気役者の競演も、さらなる見どころだ。

『伊勢音頭恋寝刃』の後は、華やかに咲き誇る桜の下、喜撰法師・松緑と祇園のお梶・中村梅枝の洒落っ気あふれる踊り『六歌仙容彩 喜撰』を堪能。所化(僧の弟子)役で出ている彦三郎の長男・亀三郎、寺島しのぶの長男・尾上眞秀、梅枝の長男・小川大晴も、まだ小学生ながら所化の1人として出演。それぞれに可愛らしくもしっかりとした所作で、客席からさかんに拍手を浴びていた。

取材・文/藤野さくら
※無断転載禁止

<公演情報>
三月大歌舞伎

公演日程:2024年3月3日(日)~26日(火)
昼の部 午前11時~
夜の部 午後4時15分~
【休演】11日(月)、18日(月)
会場:歌舞伎座

チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2449455