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全員が主役級のキャストで贈る“希望”の物語

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ブロードウェイミュージカル『カム フロム アウェイ』初日前会見より (撮影:田中亜紀)

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2001年の同時多発テロ「9.11」にまつわる実話をミュージカル化、数々の演劇賞を受賞した『カム フロム アウェイ』が、3月7日、東京・日生劇場で開幕した。演出は、本作でトニー賞の最優秀ミュージカル演出賞を受賞したクリストファー・アシュリー。出演は、安蘭けいや石川禅、浦井健治、加藤和樹、咲妃みゆ、シルビア・グラブ、田代万里生、橋本さとし、濱田めぐみ、森公美子、柚希礼音、そして吉原光夫と、全員が主役級の実力を持つ12人。圧巻の演技力と共にノンストップの100分間を駆け抜けている。

舞台はカナダの最東端、ニューファンドランド島にある小さな町ガンダー。2001年9月11日、ニュ―ヨークで同時多発テロ事件が発生し、行き場を失った飛行機は次々にガンダー国際空港に緊急着陸する。その数、合計38機、降り立った乗客は約7000人。わずか1万人の町は人種も国籍もさまざまな乗客を迎えてごった返すが、町の人々は温かさと強さをもって受け入れる。避難生活に必要なのは、食べ物や着る物、マットレスに赤ちゃんのオムツ、女性には生理用品、その他いろいろだ。さまざまな言語には少しでも話せる町民がかき集められ、さまざまな宗教には禁忌の食べ物をチェックして対応。両者の葛藤と探り合い、そして和解と希望が、“スピーディな展開”と“芝居の深度”という2つのベクトルを保ったまま進む。

衣裳はシャツやデニムなど、役者自身の普段着のようなリアルクローズ。セットはいくつかの椅子とテーブルのみで、演者が自ら動かしてカフェや飛行機の機内、空港のバス、宿泊所、町の住宅などを出現させる。場の空気感を瞬時に作り上げるのは、舞台に出ずっぱりで複数の役を演じ分ける12人の役者たち。冒頭から数秒でトップスピードに乗り、しかもパズルの小さなピースをはめるような繊細さで、歌やセリフの応酬を積み重ねていく。

それぞれのメインの役についても触れよう。ガンダーの町長クロードを演じる橋本は、緊急着陸の一報が入ったシーンから、硬軟両方の表情を見せながら頼もしく物語を引っ張る。一方、乗客側を力強くまとめるのが、アメリカン航空初の女性機長ビバリー役の濱田だ。テロの報にも毅然と対峙し、歌い上げるソロが胸に迫る。

ストーリーの中でホッとさせてくれる存在は、安蘭演じるテキサスのバツイチ女性ダイアンと、石川が演じる真面目なイギリス人技師のニック。困難な状況でも人間くささをにじませる2人の恋は、思わず応援したくなるほど。ロサンゼルスの会社経営者ケビンT(浦井)と秘書兼恋人ケビンJ(田代)という、ゲイカップルの行く末も気になるところだ。田代はイスラム教徒であるがゆえに警戒されてしまう料理人の役も印象的。「9.11」が理由のヘイトクライムと、そんなバッシングは愚かだと声を挙げる人々。本作が現実と地続きであることを、改めて思い出させてくれる。

マンハッタンで働く消防士の息子と連絡が取れず、電話から離れられないハンナ(森)。ガンダーの在郷軍人会の会長として、また同じ消防士の息子を持つ母として、ハンナと友情を結ぶビューラ(柚希)。さらに、筋金入りのニューヨーカーのボブ(加藤)、ガンダー警察署の巡査オズ(吉原)、ガンダーの動物愛護協会の会長で、貨物室からペットを救い出すボニー(グラブ)の造型もリアルだ。地元テレビ局の新人レポーターであるジャニス役は、最年少の咲妃。再び乗客を送り出すまでの5日間、彼女はメディアの人間として悩みながらも走り続ける。その先に何が見えるのか。その答えは、劇場で確かめてほしい。

取材・文/藤野さくら
撮影:田中亜紀

<公演情報>
ブロードウェイミュージカル『カム フロム アウェイ』

公演期間:2024年3月7日(木)~29日(金)
会場:日生劇場
チケット情報:
https://w.pia.jp/t/comefromaway2024/

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