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第31回読売演劇大賞を受賞したばかりの藤田俊太郎が手がける、珠玉のミュージカル待望の再演

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藤田俊太郎が単身渡英し、現地のキャスト、スタッフと共に2019年に誕生させた英国版『VIOLET』。オフ・ウエストエンド・シアター・アワードでは6部門にノミネートされ、中でも栄誉ある「作品賞」候補に選出されたことで大いに注目を集めた。さらにその翌年には日本版が完成。コロナ禍の影響でたった3日間の上演となったが、心打つナンバーや作品が放つ強いメッセージ性から、再演を望む声が多く寄せられていた。そんな珠玉のミュージカル待望の再演がついに決定。4月の東京を皮切りに、大阪、福岡、宮城で上演される。

主人公は25歳の女性・ヴァイオレット。子供のころに負った顔の傷を癒すため、人生初の旅へ出ることを決意する。同じ長距離バスに乗り合わせたのは、南部出身の白人の老婦人に、黒人兵士のフリック、そして白人兵士のモンティなど。ヴァイオレットにとって初めてだらけのその出会いが、彼女自身を、そして周囲の人々をも変えていく――。

2020年公演より(撮影:花井智子)

1964年のアメリカを舞台にした本作。まだまだ黒人差別が激しい時代であり、その厳しい現実は黒人兵士であるフリックの姿を通して突きつけられる。顔の傷、さらに女性という点で、これまで差別される側に立たされてきたヴァイオレット。そんな彼女でさえ、フリックのことを無意識に差別していることに気づき、彼女自身が驚くシーンがある。それは現代に生きる私たちにも身に覚えのあることであり、本作にはそういったシーンがいくつも登場する。

だがそれらのシーンがなにを意味するのか気づかされるのは、きっと劇場をあとにしたころ。観客は劇中、ヴァイオレットが辿る物語にただただ没入しているはずだ。そして彼女の生きざまの変化に、背中を押されるような気持ちにもなるかもしれない。というのも演じる役者たちは、顔の傷を作ったり、肌の色を変えるようなメイクを施してはいない。あくまでそれらは象徴であり、だからこそ観る者は個々のコンプレックスや弱さを登場人物に重ね、自らの物語として感じることが出来るのだ。

作品を大いに盛り上げ、彩るのは、物語に寄り添う美しい楽曲の数々。つい口ずさみたくなるナンバーから、圧巻の聴かせるナンバーまで、実力派キャストたちが時に優しく、時に力強く歌い上げる。旅へ出るヴァイオレットと、同乗する人々とのコーラスが印象的な「マイ・ウェイ」が冒頭を飾るほか、物語が進むにつれ次々と胸に残る楽曲が登場する。そしてキャスト陣には、ベテランから若き実力派まで、魅力あふれる顔ぶれが並んだ。タイトルロールのヴァイオレット役には、三浦透子と屋比久知奈がWキャストで初参加。近年話題作への出演が続くふたりが、それぞれどんなヴァイオレット像を築き上げていくのか、楽しみでならない。またヴァイオレットに大きな影響を与えるフリックとモンティには、東啓介と立石俊樹が登板。歌の実力はもちろん、演技力の高さも光る気鋭のふたりだけに、この難役からまた新たな一面を見せてくれそうだ。

ヴァイオレットたちの旅立ちに、自分自身の物語を重ね合わせ、前向きなエネルギーをもらえる一作。春という新たな門出の季節にふさわしい、爽やかな感動をぜひ劇場で味わって欲しい。

文:野上瑠美子

<公演情報>
ミュージカル『VIOLET』

【東京公演】
▼4月7日(日)~21日(日) 東京芸術劇場 プレイハウス
【大阪公演】
▼4月27日(土)~29日(月・祝) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
【福岡公演】
▼5月4日(土・祝) キャナルシティ劇場
【宮城公演】
▼5月10日(金)・11日(土) 電力ホール

[演出]藤田俊太郎
[出演]三浦透子・屋比久知奈(Wキャスト)/東啓介/立石俊樹/sara/若林星弥/森山大輔/谷口ゆうな/樹里咲穂/原田優一/spi/他

チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2347421

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