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「ふじのくに⇄せかい演劇祭」で安部公房『友達』、瀬戸山美咲演出『楢山節考』など

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「ふじのくに⇄せかい演劇祭2024」プレス発表会より、左から)宮城聰、中島諒人、石神夏希 (撮影:F4.5牧田奈津美)

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静岡市内の各所でゴールデンウィーク中に開催される「ふじのくに⇄せかい演劇祭2024」のプレス発表会が3月15日に開催され、主催の「SPAC-静岡県舞台芸術センター」の芸術総監督を務める宮城聰らが出席し、今年のラインナップの詳細が発表された。

「ふじのくに(静岡県)と世界は演劇を通じてダイレクトに繋がっている」というコンセプトの下、国内外の舞台芸術を届けてきた同演劇祭。今年も国内外の先進的な演劇作品、パフォーマンスアートがプログラムされている。

鳥取市を拠点に活動する劇団「鳥の劇場」とSPACの初の共同制作による作品では、生誕100年を迎える安部公房が1967年に発表し、自ら“黒い喜劇”と呼んだ『友達』を上演。隣人愛を盾に近づいてくる集団に飲み込まれていく青年を描く本作について、演出を務める「鳥の劇場」の中島諒人は、現代の日本社会を覆う「息苦しさ」に言及しつつ「何でこんなに集団やコミュニティが苦しいものになってしまったのか? 中にいるとわからないけど、芝居を通じて外から見ると、現在の社会の課題、時代について考えられるのではないか?」といま、上演することの意味を語る。

「鳥の劇場」中島諒人(中央)(撮影:F4.5牧田奈津美)

また、瀬戸山美咲が演出と上演台本を手がけ、昨年、利賀芸術公園「利賀山房」で創作初演された「楢山節考」を、舞台芸術公園内の屋内ホール「楕円堂」にて上演。姥捨て山の物語=棄老伝説を瀬戸山が独自の解釈でエネルギッシュに描いた本作だが、今回、3人の俳優に加え、チェリストの五十嵐あさかによる生演奏も加わる。

2018年の同演劇祭にて「民衆の敵」を上演し、観客を魅了した演出家トーマス・オスターマイアーと彼が率いる「シャウビューネ」は今回、チェーホフの「かもめ」を上演する。ベルリンでの上演では、象徴的な大木が舞台美術として客席にそびえ立っていたというが、今回は大木の代わりに、オスターマイアー自身の発案により、雄大な景色を観客の目の前で描いていくというスペシャル版演出で上演する。

SPAC『白狐伝』チラシ

SPACの新作公演では、日本およびアジアの美を世界に知らしめた智の巨人・岡倉天心が晩年に英語で執筆したオペラ台本『THE WHITE FOX』を宮城が新たに台本化し「白狐伝」として上演。白狐と人間が織りなす幻想的な愛の物語だが、宮城はこの作品について「天心の近代への絶望がにじみ出ているんですが、本当に絶望していたなら、こんな戯曲は書かない――死後何十年か先への“希望”が埋め込まれている」と語る。

このほか、カメルーン生まれで、パリで大人気のダンサー・振付家のメルラン・ニヤカムが、アフリカの神話にもとづく摩訶不思議な世界を肉体で表現する「マミ・ワタと大きな瓢箪」、誰もが知る童話「カチカチ山」を、観客が参加する“回遊型”の間食付きツアーパフォーマンスとして描く「カチカチ山の台所」など、創意工夫に富んだ多様な企画が盛りだくさんとなっている。

SPAC-静岡県舞台芸術センター芸術総監督・宮城聰(撮影:F4.5牧田奈津美)

宮城は会見で最近、気になることとして「日本の人たちが自己完結型となり、他者との関係に興味を持たず、期待もしない――『人はどうせ変わらない』という意識でいる」と指摘。「関係の中で成長していくというイメージを信用しなくなった風潮の中で、演劇はそれでもなお人は変わりうる、成長しうるということを実感させてくれるもの」と語り、「目の前の利益をとりあえず確保する、5年先に損しないようにする…という意識ではなく、『20年後を考えて、いまこっちをチョイスしていく』という意識、20年後の物差しをもうひとつのポケットに入れること提唱したい」と演劇の意義、そして演劇祭を通して訴えたい思いを語った。

「ふじのくに⇄せかい演劇祭2024」は4月27日(土)より5月6日(月・休)まで静岡市内各所で開催。

取材・文:黒豆直樹

ふじのくに⇄せかい演劇祭2024 上演全ラインアップ

■『友達』[SPAC×鳥の劇場]共同制作
ジャンル / 製作都市(国):演劇 / 静岡・鳥取(日本)

演出:中島諒人
作:安部公房

2024年4月27日(土) 〜4月28日(日)
会場:舞台芸術公園 野外劇場「有度」

『友達』

■『楢山節考(ならやまぶしこう)』
演劇 / 富山(日本)

上演台本・演出:瀬戸山美咲
作:深沢七郎

2024年4月27日(土)〜4月29日(月・祝)
会場:屋内ホール「楕円堂」

『楢山節考』

■間食付きツアーパフォーマンス『かちかち山の台所』
回遊型演劇 / 静岡(日本)

演出:石神夏希

2024年4月27日(土)〜4月29日(月・祝)
会場:舞台芸術公園ほか

『かちかち山の台所』

■『かもめ』※日本初演
演劇 / ベルリン(ドイツ)

演出:トーマス・オスターマイアー
作:アントン・チェーホフ

2024年5月3日(金・祝)〜5月6日(月・休)
会場:静岡芸術劇場

『かもめ』 ©︎ Gianmarco Bresadola

■『マミ・ワタと大きな瓢箪(ひょうたん)』※日本初演
ダンス / パリ(フランス)

演出・振付・出演:メルラン・ニヤカム

〜グランシップこどものくに連携事業〜

2024年5月5 日(日・祝)
会場:グランシップ 交流ホール

『マミ・ワタと大きな瓢箪』 ©︎ Peggy Riess

<駿府城公園で同時開催>
ふじのくに野外芸術フェスタ 2024 静岡
■『白狐伝(びゃっこでん)』※SPAC新作
演劇 / 静岡(日本)

演出・台本:宮城聰
作:岡倉天心(『THE WHITE FOX』)
音楽:棚川寛子

2024年5月3日(金・祝)〜6日(月・休)
会場:駿府城公園 紅葉山庭園前広場 特設会場

同時開催:ストリートシアターフェス「ストレンジシード静岡2024」

ストレンジシード静岡に初参加する三浦直之(ロロ)(右端)(撮影:F4.5 牧田奈津美)

<コアプログラム>
ストレンジシード静岡がプロデュースする作品を含む、まさにフェスティバルのコアとなるプログラム。

■オムニバス・ストーリーズ・プロジェクト『パレードとレモネード』※新作演劇 / 静岡(日本)

テキスト・演出:三浦直之(ロロ)

2024年5月4日(土・祝)~5月6日(月・休)
会場:青葉シンボルロード B3(野外上演)

移動型パフォーマンス
■『The Road to Heaven』※新作

インターナショナルコーディネーター:チョ・ヨンスン

2024年5月4日(土•祝)〜5月6日(月・休)
会場:静岡県庁前〜駿府城公園

<オフィシャルプログラム>
ストレンジシード静岡とタッグを組んだアーティストが、ストリートシアターの魅力を最大限に引き出す作品を上演するプログラム。

■サファリ・P『おちゃのじかん』パフォーマンス・ダンス / 京都(日本)
■劇団 短距離男道ミサイル『オチャー・ウォーズ エピソード4/新たなる茶坊 OCHA WARS -EPISODE Ⅳ A NEW HOPE-』演劇 / 宮城(日本)
■ワワフラミンゴ『タヌキのへそくり』演劇 / 東京(日本)
■お寿司『にぎにぎしく逃逃』パフォーマンス / 京都(日本)

<オープンコールプログラム>
公募により選ばれた、ストリートシアターの可能性に挑戦するアーティストによるプログラム。

■ほころびオーケストラ『恋するロボット』演劇 / 東京(日本)
■鈴木ユキオプロジェクト『風景とともに』ダンス / 東京・山梨(日本)
■浅川奏瑛×演劇空間ロッカクナット『ビトゥイーンズ・パーティー』パフォーマンス / 福岡・埼玉・東京(日本)
■のあんじー『待たない!』演劇 / 東京(日本)
■第二次谷杉 ≒ ミミトメ『すべての主人公はこの通りで』演劇インスタレーション / 東京(日本)
■Co.SCOoPP『まちなかサバイバル!』パフォーマンス / 京都(日本)

他、演劇祭期間中は関連企画も開催。関連企画の詳細や各公演の最新情報は、公式特設サイトにてご確認ください。

◆ふじのくに⇄せかい演劇祭 特設サイト:
https://festival-shizuoka.jp/

◆ストレンジシード静岡 公式サイト:
https://strangeseed.info/

◆SPAC公式サイト:
https://spac.or.jp/

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