芸人もテレビも軸が大事「2024年3月のお笑い」
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ウエストランド井口と作家飯塚の「今月のお笑い」。
ウエストランド井口と構成作家・飯塚大悟が毎月のお笑い界の出来事を勝手に振り返る連載「今月のお笑い」。テレビやラジオの改編、大阪芸人の東京進出、解散や独立、結婚など、何かと発表の多かった年度末に2人が気になった話題は?
構成 / 狩野有理 ヘッダーイラスト / 清野とおる
※取材は4月2日に実施。
「R-1」決勝では伝わりづらいB級感
井口 けっこう日は経っちゃいましたけど、「R-1グランプリ」は飯塚さんどうでした?
飯塚 街裏ぴんくさんの優勝は「M-1」で錦鯉が優勝したときみたいな雰囲気を感じた。ぴんくさんはずっと「面白い」と言われていたし、「よかったね」という気持ちになったお笑いファンは多いだろうなと思う。(漫談の内容が)「嘘ですよ」ってことを伝えるために「ウソ」と書いてあるTシャツを着ていた時代とかも乗り越えての優勝。明治時代の文豪とか明らかに嘘とわかる登場人物だったり、「こんな嘘つく奴やばいでしょ!」というフレーズが足されていたり、初見の人にも理解してもらいやすい作りになっていたのがよかった。
井口 もう嘘がすごいところまで行ってますからね。僕としては、ルシファー吉岡さんがやっと優勝すると思っていたのでそれは残念でしたけど、全体的には盛り上がった大会になったよかったです。
飯塚 真輝志さんのネタがトップバッターにふさわしくて、大会の盛り上がりに一役買っていたと思う。ネタや審査の話はもうやり尽くされていると思うから、もうちょっと別の話をすると、「B級感」みたいなものを決勝の場で伝えるのって難しいんだなって感じた。要は、お抹茶の話なんだけど。お抹茶のネタって、準々決勝も準決勝もめちゃくちゃウケていたんだよね。
井口 1ウケだったみたいな話も聞きました。
飯塚 ライブだったら手作り感あふれるセット、フリー音源に決してうまいわけではない歌を乗せている感じが、味になって面白いっていうのもプラスされていたと思うんだけど、テレビのゴールデンタイムの立派なスタジオでやるとどうしてもそのあたりの面白さが伝わらないんだなと改めて思った。
井口 小さい劇場だったら段ボールで作った小道具のほうがかえっていいけど、テレビでやるとダサい、ちゃっちいっていうのはありますよね。逆に劇場で本物使ってたらなんか笑えない、みたいな。特に、お抹茶のあのネタは道具のクオリティを上げればいいのかっていう部分もあるし。あのクオリティだから面白いわけですから。
飯塚 あと、「そういう人だ」って認識されていたら違ったのかもしれない。初めて観た人はお抹茶がどういう人か知らないから。
井口 もう中学生さんみたいになっていれば。
飯塚 そうそう。単純に「完成度が低いもの」だと思われちゃうと、面白さがうまく伝わらないんだなと思った。
井口 完成度も低いし、(音源の)規約違反してるし、最下位だし。もう最悪ですよ(笑)。
飯塚 ルシファーさんはちゃんと書割を作ってたね。
井口 ずっとルシファーさんも書割を置いてなくて、「置いたほうがいいんじゃないか」みたいな話をしていたんですよ。それで、決勝で置いたらやっぱりよかった。1個1個、これがいい、これはダメの確認の作業をしていくしかない。
飯塚 だからお抹茶のネタはめちゃくちゃ面白かったのに、会場と合わなかったのが残念だし悔しかった。後日、同じ作曲者の人にお抹茶専用の曲を作ってもらって、「トンツカタンお抹茶の『かりんとうの新車発表会』」っていうライブでお披露目していたのを観たら、ほぼ一緒で(笑)。
井口 作った人も怒ってるわけじゃないけど、音源サイト内で決まっているルールだからダメってことですもんね。だから限りなく似ているものを作ってくれたっていう。
飯塚 こんな騒動になるなら最初から頼んでおけばよかったんだって、きっとお抹茶も悔しかっただろうなと思う。
井口 まあ、とにかくお抹茶が悪いですよ。本人にもキツく言っときました。
──寺田寛明さんはフリーのイラストサイトで「わんわん新撰組」を見つけ、作者さんに連絡を取って放送用に新しいものを描いてもらったんですよね。
井口 そういうことですよね。確認しておかないと。
飯塚 まあ、「R-1」側も確認してよ、とは思うけど。
井口 でも「R-1」は何があるかわかんないんだから、自分でやらないとダメなんですよ。
飯塚 井口くん、いろんな場で「R-1でやっぱり何かが起こる」って予言してたもんね。
井口 そうですよ。今回は何も起こらなかったと思っていたら、時間差で起こったので。やっぱり起こりました。
飯塚 決勝で点数の誤表示もあったよね?
井口 ありました。でもそれくらいではもう誰も驚かないので。
飯塚 予想の範疇?
井口 桜木花道のミスみたいなもんですよ。想定の範囲内。
MCとして大会を背負う霜降り明星
飯塚 寺田くんって昔から大喜利強いしめっちゃセンスあると思っているんだけど、寺田寛明という人間が“センス芸人”って世間に認められていたら、同じネタでももっとウケそうだなとも思った。例えばバカリズムさんみたいな存在になっていたら。
井口 今はどう思われてるんですかね?
飯塚 まだ人間の部分はそこまで知られてない気もする。アイドル好きだったり、メイド姿になるライブに出てたり、とらえどころのない人ではあるよね。
井口 ピンの人って暗いですからね。お抹茶が「最下位だったのに明るくていい」みたいに言われていますけど、あいつ暗いですからね!? あいつが明るいと感じるくらい、ほかのみんなが暗い。真面目で暗いから。もっと気楽にやってくれよとは思いますよ。みんな真面目で暗くて堅い!
飯塚 あはははは(笑)。吉住さんのネタもすごく面白かったんだけど、大会後、(1本目のネタで演じる人物のモチーフにしていた)デモの話ばっかりされていて。お笑いファンの間でも俯瞰でいろいろと語られてたけど、まず自分が面白かったかどうかを言おうよ、と思って。まず語るべきは「吉住さんの面白さ」だから。
井口 勝手に論争が巻き起こっちゃうんですよね。本人は何も言っていないのに。
飯塚 そう。あと、MCの霜降り明星がやっぱりすごいなと思うのは、MCとしてちゃんと大会を背負っているんだよね。ハプニングもあって、「R-1」ってちょっとネタにしやすいところがあると思うんだよ。井口くんを筆頭に(笑)。芸人さんだけじゃなくて一般の人も「R-1」をネタにしがちなんだけど、ラジオで「R-1だけ腐そうみたいなノリはやめよう」って言ってたり、霜降り明星が大会としての格を上げようと奮闘しているのを毎回感じる。
井口 僕が思ったのは、いつまで「R-1」VS井口の構図でやるんですかね?(笑) 「R-1」のことを言ったの一昨年なんですよ。
飯塚 田津原理音さんをまたいで、まだ「夢あります!」って言われてる(笑)。
藤井隆チルドレンの登場
飯塚 YouTubeで公開されている「R-1」直後のぴんくさんの密着動画を観ていたら、「藤井隆さんが原点」と言っていたんだけど、最近そういう人多いなと思って。ヤーレンズの楢原さん、ラランド・サーヤさんも藤井隆さんに憧れていたらしいし。
井口 「Matthew's Best Hit TV」(テレビ朝日)の影響なんですかね?
飯塚 世代的にはそのへんなのかな。藤井さんって当時、芸人のマッチョイズムみたいなものとは違う道にいる、独自の存在だった気がする。だからよしもと的な本流の笑いがそこまで刺さらなかった人たちの受け皿になっていたのかなと思って。それ以前はダウンタウン一択だったけど、こういうお笑いだったらやりたいって思える選択肢として藤井さんが存在していて、20年くらい経った今、じわじわ藤井隆チルドレンが出てきてるんだなと。
井口 今後もっと出てきそうですよね。ダウンタウン以外の、いろんな人に憧れているチルドレンが。
サツマカワRPG♥でか美ちゃん
井口 「R-1」生放送直後にサツマカワRPGとでか美ちゃんが結婚を発表したじゃないですか。サツマカワはSNSを使うのが上手っていうのがあるのかもしれないけど、あのタイミングで発表することにでか美ちゃんがなんて言ったのかは気になります。「やめようよ、優勝者がいるんだから」ってどれくらい抗ったのか。でか美ちゃんってすごくいい人なので。
──「やめようよ」と言っててほしいということですか?
井口 言っててほしいです。できるだけ抗っててほしい。夫婦のLINEのやり取りとかを公開しているのもけっこう意外ではありました。
飯塚 「スナックあの」(ABEMA)に2人で出て、めちゃくちゃわかりやすくラブラブな感じを出してたよ(笑)。サツマカワがいつものキャラじゃなくて、「好き好き」って言ってる感じ。でか美ちゃんってお笑いファンでもあるから、お笑いファンからどう思われるかとか腹くくってる感じがした。ワーワー言う人も少なからずいるから。
井口 僕も(2人が)嫌なことを言われてないかチェックはしたんですよ、一応。今はないみたいですけど、今後、この感じをどこまでやるのか。
飯塚 ずっとラブラブ感を見せつけるのか。「もういいよ!」ってなるかもしれないし、それが面白くなるかもしれないし(笑)。
井口 最終的にかつみ♥さゆりさんみたいになるかもしれないですね(笑)。あと、でか美ちゃんの結婚報告に「(サツマカワRPGは)孤高の天才」って書いてあって、それは「違うよ?」と思いました。
飯塚 「暗い」?
井口 「孤高」っていうか「暗い」ね? っていう(笑)。
配信番組化する地上波深夜バラエティ
飯塚 井口くん、「バラバラ大作戦」で番組が始まったね(※)。
※編集部注:当連載では「ウエストランドと1から企画を作り上げていきたい若いディレクターはいない」という話をかねてからしていたが、4月から若手ディレクターによるチャレンジ枠「バラバラ大作戦」でとろサーモン久保田と井口がMCを務める「耳の穴かっぽじって聞け!」がスタート。
井口 初回はコンビの解散がテーマで、元ゾフィー上田航平さんの今の本音を紹介しているんですけど、収録から放送日までにもいろんなコンビの解散が発表されたのでより意味を持つ感じになっちゃいましたね。
──テーマやゲストを決める打ち合わせではお二人が意見を出していく?
井口 スタッフさんが希望を聞いてくれますし、久保田さんがいろいろ動いて、出てほしい本人に連絡してくれたりもするので、ありがたいですね。ついていくだけというか。僕はそこで言いたいことがあれば言うっていうスタンスなので(笑)。
──記者会見のときに「視聴率より配信をいかに回すか」ということをテレビ局サイドが強く訴えていたのが印象的だったのと、番組でしゃべったことがネットニュースになる前提で話していて、こたつ記事を歓迎しているムードにも考えさせられてしまいました。
飯塚 最近は「バラバラ大作戦」の投票制についてもいろんな声が出てきていますよね。テレビ局側がオファーして演者に出てもらっているわけだから、「番組を続けさせてください」みたいな選挙アピールを演者にさせるのに僕は少し違和感があって。選挙結果や配信の再生回数が理由で仮に番組が終わっちゃったときに「自分たちのせいなのかな?」って負い目を感じてしまう視聴者も少なからずいそうだし。
井口 面白くて、みんなが観て、人気を得て続くっていうシンプルな本質を見失って、「ただ配信回せばいいんだ」みたいなことになるとわけわかんないですからね。
飯塚 だから、「面白かったら観てもらえるはずだ」という気持ちでやっていればいいけど、「続けるために回してください」というふうになりすぎるとどうなのかなって。
井口 悲しくなりましたもん。地上波テレビでレギュラー番組が始まって喜んでたんですけど、配信番組みたいにも思えてきて。
──会見でも言っていましたね。
井口 僕らはテレビが好きでこの世界に入ってきてますし、配信、配信ってあんまり言われると、「配信番組なのか……」ってなる(笑)。まあ、それを僕も久保田さんも会見とか番組の中で言っちゃうから全然いいですけどね。言えないとストレスになりそうですけど。あと、僕が「TVerで観てください」って言っているのは、応援したいけどどうしていいかわからない人へのガイダンスなんですよ。テレビの録画を何回も観るよりは、TVerで観るほうがいいよっていう。
飯塚 番組が面白くて応援したいからTVerで観るのはいいことだと思う。ただ、自分たちの応援が足りなかったとかはまったく思う必要がないと思う。それは番組側の問題なんだから。
井口 面白ければ観られる、というだけですからね。応援してくれている人以上の人数が観てくれるくらい面白くないと、意味ない。
「終王ノブ」
──ちなみに「バラバラ大作戦」の1つだった「ランジャタイのがんばれ地上波!」の最終回はご覧になりました?
飯塚 「終王ノブ」(※)観ましたよ。ランジャタイはああいうのが得意ですよね。先輩をイジるのが好き。
※編集部注:「ランジャタイのがんばれ地上波!」の最終回には千鳥ノブ扮する、終わりゆく番組の匂いが大好きな“終王ノブ”が登場。ランジャタイは登場しないまま終了した。
井口 「お笑いの日」(TBS)でコラボしたダイアン津田さんとか。
飯塚 ウンナンさんとか巨人師匠とか、先輩をクレイジーに茶化すっていうもともと得意だったことで、思っきりフルスイングしたらああなるんだなっていうのが見えて面白かった。ランジャタイの番組って不思議で、2人が回しに徹して全然しゃべらない回もけっこう多いんですよね。地下の仲間をテレビに出そうとがんばってたのはすごく感じた。
井口 優しいと言えば優しいですけど、僕にはそういう気持ち1ミリもないんですよね(笑)。「お前がまず誰なんだ」って自分がやってたとしても思っちゃうだろうし。たまにいるじゃないですか、テレビに出始めて、すぐ仲間を呼ぶ人。あれはなんなんですかね?
飯塚 ちょっと前のテレビだったら、ランジャタイがライブの仲間を呼ぶなんてめちゃくちゃ内輪なことを地上波の電波使ってやるなよ、っていう考え方もあったけど、今って、それこそほぼ配信番組に近いから、内輪をやってもいい空気も出てきてる。広くたくさんの人に観てもらうことを目指したい、でもそれができないんだったらコアなファンにめっちゃ刺さるものを作る。テレビの制作者はそのどちらに行けばいいか迷いながらやっているんじゃないかなと。
──確かに、MCが近しい仲間をゲストに呼ぶ番組は増えている気がします。
井口 同じ高みでたまたま一緒になるのはいいんですけど、「紹介したい」っていうのがよくわかんないんですよね。自分にはない気持ちなので。
飯塚 それを視聴者が楽しんでいる面もあるよね。「これ地上波か!?」みたいな。
井口 ああー。「大丈夫か?」系(※)ですね。でも、それをどれだけの人が観るのかっていうのはありますからね。
※編集部注:2022年10月に虹の黄昏が「ラヴィット!」(TBS)に出演した際、「虹の黄昏が朝の情報番組!? 大丈夫か?」と心配しつつ期待するお笑いファンを井口は「大丈夫か?」系と呼んでいた。
飯塚 「有田ジェネレーション」(TBS)とかはまた違うよね。メンバーは中野twlの人たちでも、MCの有田さんがいることによって一般化してくれるから。
井口 「ランジャタイのがんばれ地上波!」はイベントもやって、盛り上がってる感じはしましたけど、それでも終わるんですね。
飯塚 イベント化できたくらいでは足りないんだろうね。
井口 そう思うと、だいぶでかいムーブメントにしていかないと続かないってことですよね。ランジャタイ、真空ジェシカ、Aマッソ、ダウ90000とか、お笑いファンにとっては人気者じゃないですか。でもその人気だけではどうにもならない。一般的に関心の高い話題にならないと。でもまあ、僕は久保田さんとやってるから安心感はありますね。内容も話しながら決められるし、久保田さん自身が軸がある人なので。
令和ロマンの評価は一旦保留で
飯塚 「令和ロマンはテレビに出ない」というのがネットニュースになっていて。NON STYLE石田さんのYouTubeにくるまさんが出て、そこでしゃべった話が切り取られているんですけど、大げさにされちゃってちょっとかわいそうな気が。「まったく出ない」とは言っていないし。
井口 世間にはどう捉えられてるんですかね?
飯塚 見出しが「もうテレビに出ない」みたいになっていたから、「テレビに出ないんだ」ってたぶん思われていて、「ラヴィット!」木曜レギュラー就任が発表されたときに「どっちだよ!」と言ってる人はちらほらいた。
井口 あとYouTuberとのコラボで「がっかり」みたいな声も挙がっていましたよね。令和ロマンが優勝して以降、僕がずっと「なんだあいつら!」って言い続けていたときは「いや、これが新しいスタイルです」とか擁護していたくせに、自分が気に入らないことがあると「違う」とか言って、なんなんだよ、お前ら! もしかしたら、令和ロマン自身がいろんな活動をすることでそういうのをふるいにかけてるのかもしれないですけど。
飯塚 どうなるか気になるよね。いわゆる「テレビを1周」とかじゃなく、YouTuberとコラボしたり、雑誌に優先して出ていくとどうなるのか。本人もそういう作戦で活動してみたらどうなるんだろう?って思いながらやっているのかもしれないし。レギュラー番組ってカロリー高いわりに毎週毎週は話題にならないけど、雑誌の表紙とか、星野源さんの代打ラジオとか、ニュースになるようなことを積極的に狙いにいってるのが今っぽい感じもする。「ラヴィット!」もレギュラーとはいえ話題になりやすい番組だから、そういうのもあって決めたのかな、とか勝手に想像してる。それに、「テレビ出ないんだって?」とかMCに振られても「あれは違うんですよ」とか言い訳しないところが肝が座ってるなって思う。
井口 令和ロマンが世間にどう捉えられているかわからないですよね。
飯塚 みんな時代を読み間違えたくないから、評価保留にしている感じはある。
井口 それが腹立つんだよなあ。僕が優勝したときは、本当に隙間なく働いても「ウエストランド見ねえな」とか言う奴がいて。でも令和ロマンは何のテレビにも出てないのに「見ねえな」って声がないんですよ。
飯塚 「テレビ出てない」がカリスマっぽいからね(笑)。「テレビ全然出てないじゃん」って令和ロマンに言うのは間違ってるかもしれないから、みんな安易には言えない。
井口 その様子見してる情けなさ! バカ。本当にバカ! 自分から動き出さない、どうしようもない奴らですよ(プンスカしている様子で)。
飯塚 視聴者も冷静に分析しようとしているよね。テレビに出てほしいって思うのは自由なのに。
井口 自信がないんですよ、自分の感覚に。自分の気持ちが本当にないなって感じがします。みんなが絶賛している映画とか音楽とか、本当かな?っていう。僕は全員が好きなものに恐怖を感じちゃうので、自分の気持ちを言えばいいじゃんって思いますけどね。
飯塚 SNS以前は自分が楽しいかどうかしか基準がなかったけど、今は感想どころか「何を見たか」すら見られているからね。みんなが評価しているものに対して「わからなかった」って言えない空気があるし、みんなが異論を唱えてたら、「これは異論を唱えていいんだ」ってなる。
井口 その怖さを感じますね。……令和ロマンのせいで!(笑)
飯塚 でも、井口くんみたいな人が「テレビに出てないじゃないか!」と言ってくれるのって本人たち的にはありがたいんじゃないかと思うけどね。触れづらい話にはならないでほしいし。
井口 令和ロマンに関してはけっこう序盤からいろいろ言ってますからね。「あいつらテレビ断ってるんで、僕らが出ます」とか(笑)。最初はスタッフさんに言っても「ははは……」みたいな感じで目をそらされましたけど、言い続けてたらありになってきました。
飯塚 「よるのブランチ」(TBS)でも令和ロマンについてめっちゃ言ってたね。全然関係ないのに(笑)。
井口 全番組で一応言ってみてるんですよ(笑)。この前、令和ロマンと収録で一緒になって、あいつらもそういうのやりたそうではありましたよ。バチバチではないけど、楽しくできたらなっていう感じはあったので、みんなが腫れ物みたいにしないで「おい、テレビ出ろよ!」とかでいい気はしますけどね。
──ちなみに令和ロマンは今までも「ラヴィット!」に頻繁に出演してましたし、レギュラーといっても隔週出演です。
井口 隔週レギュラーになると出る回数減るっていうパターンがありますからね(笑)。モグライダーとか、隔週レギュラーになってから減ってないか?って思いますもん。
飯塚 もはや誰がレギュラーかわからないよね。ウエストランドも隔週くらいで出てない?
井口 出てます。だからもう、レギュラーってなんなんだっていう(笑)。
「背低い芸人」は付け焼き刃じゃない、人生の話
飯塚 前回、井口くんが「テレ朝にずっといる」って言ってたけど、本当にめちゃくちゃ出てるね。
井口 一時期、住み着くぐらいテレ朝にいましたから(笑)。「アメトーーク」もプレゼン大会に続いて2週出てますし。
飯塚 うちの奥さんが、普段そこまで芸人バラエティを観ていないんだけど、「M-1」で観て以来、久々にちゃんと井口くんをプレゼン大会で観たらしくて、「井口さんっていう人はいつの間にこんなにみんなから受け入れられるようになったの?」って驚いてた。番組の軸みたいになってたから、「今こんなことになってるの?」って(笑)。
井口 あはははは(笑)。そう思ってもらえたら1年間がんばってきたかいがありますね。出続けることで「このくらい言っていいんだ」とかもわかってきますし。プレゼン大会はたまたまデカい人が集まるっていうラッキーな奇跡があってよかったですよ。
──「背低い芸人」のプレゼン中に、アンガールズ田中さん、カズレーザーさんなど180cm超えの芸人さんに囲まれる構図がインパクト大でした。
飯塚 井口くんのプレゼンの仕上がり方がすごかったね。今まで「ぶちラジ」とかで話してきた集大成。
井口 付け焼き刃的に考えたやつじゃないですからね。「背低い芸人」なんて、人生を話してるだけですから。
もっと自分の思うことを貫けよみんな!
井口 話が戻っちゃうかもしれないんですけど、「深夜のハチミツ」(フジテレビ)でも視聴者投票していたじゃないですか。
──視聴者投票で4月からのレギュラー出演者8組を決定しました。
井口 僕もこういうのに参加したことがあるから思うんですけど、決める責任は番組側に持ってほしいなと思っちゃいましたね。「ロケットライブ」(フジテレビ)(※)のこととか思い出して。落ちたときは「なんで選ばれないんだよ!」ともちろん思いましたけど、それが糧になったし、選ばれたら「テレビ局の人がおもしろで認めてくれた」って自信にもなる。
※編集部注:2012年10月から放送された深夜バラエティで、さまざまな若手芸人が週替りで出演。その中から選抜された6組で「明日のナイナイを目指す番組」として「バチバチエレキテる」がスタートした。選抜されたメンバーはうしろシティ、ラブレターズ、ニューヨークら。ウエストランドは選ばれなかった。
井口 まあ、世間を巻き込む意味では投票もいいのかもしれないですけど。番組がもし不評で終わったとして、「視聴者投票で選んだメンバーだったので」と言うのはずるい気もするんです。
飯塚 こうなると、全部投票でいいじゃんってなってくるよね。「新番組でMCしてほしい人、リクエスト募集!」とか。確かに投票を呼びかけるという名目で番組に関するSNS投稿をたくさんしてほしいっていう狙いもあるのかもしれないけど。
井口 芸人ががんばるのはもちろん、番組側にも人気者にあやかるだけじゃなくて「自分たちが選んだメンバーでがんばってやっていくぞ」と思ってもらいたいですし。それがお互いにとっていいと思うんですよね。
飯塚 自信がなくなってるんだろうね、テレビが。「これは芽がある」って制作者が思えば残していいと僕は思うけど、それすら放棄したら「テレビ局ってなんなんだ」ということになってくる。
井口 (制作者の)感覚で勝負してほしいというか、自分を信じてほしい。ある意味、もっと偉そうでいいというか。番組側は「これが面白いんだ!」という気持ちでいてほしいですけどね。
飯塚 自信がない時代なのかもしれないね。作り手も、受け手側も。
井口 もっと自分の思うことを貫けよみんな! 結局、芸人も軸があるかどうかなんですよ。こっちの番組ではこれ言う、あっちではこれ言うってやってるとわけわかんなくなっちゃうから。僕なんか、どの番組出ても同じことを言ってるだけなので、言い方悪いですけど“手ぶら”で行けるから、しんどくならないっていうところはあります。
飯塚 井口くんもそうだし、永野さん、Aマッソ加納さんとか、ヒコロヒーさん、もっと言えばバカリズムさんやカズレーザーさん。他者評価によって自分の感覚がブレない人が求められてる感じがあるね。それで言うと、令和ロマンも。
井口 世間の人もみんな不安だから、方向を示してくれる人についていきたくなるのかもしれないですね。要は、制作者の独断で選んだってこっちは怒らないのになっていう話でした。
飯塚 もともとは投票制じゃなかったから、いろんな事情があるんだろうなとは思うけどね。現場の制作者の意図とは違うのかもしれない。
井口 それはそうですね。続けていくために、何かテコ入れをせざるを得なかったとかもありますし。
「ザセカ」かもめんたるとザ・パンチの衝撃
井口 「THE SECOND」面白いですね。一筋縄ではいかないというか。
飯塚 よくSNSでも言われているけど、32組で同じ予選をやって上位16組を選んだらこういう結果に絶対ならない。
井口 ちょうど早坂営業だったので、リアルタイムで楽屋のみんなで観て盛り上がりました。ザ・ぼんちVSハンジロウから観たんですけど、すごかったです。
飯塚 ザ・ぼんちさん面白かった。対戦後の動画でも言っていたけど、ベテランの楽屋って、体の不調、薬、年金、介護保険の話ばっかりだけど、劇場で若手と一緒になるとみんな漫才がうまくて、賞レースの話をしていて刺激をもらったと。すごく前向きに挑戦しているのがカッコいいなと思った。
井口 誰もが熱くなりましたよね。「芸人はこうありたい」っていう理想の姿というか。もちろんハンジロウさんもゴリゴリに仕上げてきていて面白かったです。「THE SECOND」はバランスみたいなものが勝負の肝だったりしますよね。わかりやすさとか、本人に合っているかとか。策に溺れないことが大事というか。
飯塚 「M-1」と違うなって改めて思うよね。“人間”が出ているネタをみんなやってる。去年、三四郎との対戦で話題になった流れ星☆さんが、去年の三四郎のような内輪ネタも盛り込みまくったネタで挑んでいた。でも対戦相手のかもめんたるのネタが裏話っぽい話は一切ない、6分の完成された作品だったんだよね。しかも先攻だったから、どうしても後攻の流れ星☆さんのほうが亜流に見えちゃうとか、順番の妙もすごくあった。
井口 1対1の面白いところですよね。流れ星☆さんが前回三四郎に負けて、悔しい思いもあって「今度は人間味を出していこう」となる。一方、かもめんたるさんは流れ星☆さん対策のネタを作るから、お互いのその取り合いで、今回はう大さんが上回った。正直、かもめんたるさんめちゃくちゃ面白くて。やばかったです。
飯塚 めちゃくちゃ面白かった。
井口 衝撃受けました。誰が当たっても勝てないんじゃないかという強さでしたけど、対戦相手の噛み合わせもありますよね。
飯塚 う大さんが「今月のお笑い」にゲストで来てくれたときに、「ネタを量産できる能力も大事」と言っていて。
井口 そうだそうだ。言ってましたね。
飯塚 かもめんたるは、持ちネタから選ぶんじゃなくて、流れ星☆対策でネタを3本作っていた。その都度、その場面に合ったネタを作れる能力がう大さんは高いから、その結果、とんでもないネタができたっていう。
井口 偉そうなことを言うつもりはないんですけど、かもめんたるさんがちょっと前から漫才を始めて、今ちょうど漫才にアジャストした感はありました。今までも漫才面白かったですけど、けっこう突飛なネタではあったじゃないですか。今回はう大さんワールドだけど、みんなが笑うし、僕らもめちゃくちゃ刺さるネタだった。
飯塚 さらに進化してる感じはしたね。
井口 あ、一応「槙尾さんも」って書いといてください。怒るんで。
──「槙尾さんもすごい」?
井口 流れ星☆さんにこの前会ったら、「う大に負けた」って言ってたんで。一応槙尾さんもやってるって書いといてください。
飯塚 あと、ザ・パンチがめちゃくちゃ面白かった。
井口 すごかったですね!
飯塚 僕はこの32組の中だと、かもめんたるとザ・パンチが特に印象的だったんですけど、(次回のノックアウトステージ16→8でこの2組が当たるので)もったいないなっていう。どっちかしかファイナルに行けないのは残念。
井口 よしもと以外のメンバーで観ていたので、みんな2008年の「M-1」決勝以来のザ・パンチさんだったんですよ。そしたらうますぎるし、びっくりして。今ザ・パンチさんこんなことになってたんだっていう。
飯塚 「M-1」とは違う、「わかんないけどなんか面白い」っていう面白さ。なんか笑っちゃうみたいな。
井口 くだらないことでも笑っちゃう。
飯塚 雰囲気がずっと面白いんだよね。ちょっと達人の感じがした。
マユリカ阪本は顔がカッコいい
井口 狩野さん(=この記事のインタビュアー)が「バラバラ大作戦」の会見に来ていたじゃないですか。
──行きました。
井口 なんかちょけてましたよね? 芸人勢が「お笑いナタリーの人だ」ってなってる中、いきなりFRUITS ZIPPERに質問するっていう。
──まったくちょけてないですよ! 本当に最初からFRUITS ZIPPERに質問しようと決めてたんです。マユリカとの相性みたいなところを聞きたかったので。
井口 マユリカも去年東京に来てから、またさらに人気ですね。
飯塚 全国ネットでレギュラー番組(中京テレビ・日本テレビ系「お笑い4コマパーティー ロロロロ」)が始まるし、ポッドキャストのランキングでもマユリカの番組(ラジオ関西「マユリカのうなげろりん!!」)が1位になることもあって。霜降りとか令和ロマンとかを抑えて。
──ヨシモト∞ホールの大会で優勝もしていましたけど、お客さんからもすごく愛されている感じがしました。
飯塚 劇場人気もめちゃくちゃあるし芸人からも愛されてる。でも千鳥やかまいたちとは違った、なんて言ったらいいのかな……。ニューヨークがYouTubeで言っていたのが、「ダイアンさんっぽい」。ど真ん中じゃない2人が組んで、幼なじみならではのノリでやってるっていう。
井口 「キモい」ってけっこう言われていますけど、阪本くんのほうは僕からすれば普通にカッコいいだろって思うんですよ。「キモい」とか一応言っといて好きっていう、ファンの一番ずるいやつ。「キモいところも好き」とか言うけど、いや顔カッコいいから!
飯塚 確かに、顔カッコいいよね。
井口 僕は言い続けますよ、マユリカが好きっていうお笑いファンに、「顔カッコいいもんね!」って。
飯塚 絶対に言っていこう。「阪本さん顔カッコいい」。
井口 「キモいけど好き」は通用しないぞっていう。カッコいいんだから。でも、ファンアートとかチェキがどうとか、顔ファン問題みたいなことがありますけど、そういうの僕はなかったなーって思って。
──ウエストランドはファンアート描かれてない?
井口 探せば1、2枚はあるでしょうけど。僕はむしろ描いてくれとしか思わないし、顔ファンにもなってほしいし。そう思えることが気楽なもんだなと。それぞれ事情は違うから一緒くたにはできないですけど、究極、全部笑わせればいいじゃんって思ってしまうというか。もちろん怖い思いとかをさせられているんだったら問題ですけど。
飯塚 「顔が好き」って思うことは別によくて、発信の仕方なのかなと思う。ネタが好きで顔も好きって、全然いいと思うし、それを顔ファンと言うかもわからないけど、例えば芸人の名前で検索したときに「ビジュ爆発」みたいなことばかり出てきて、「あぁ、この人たちはネタじゃないところで人気なんだ」って思われたらその芸人さんが損するかもな?とは思う。
井口 芸人側も悲しくなりますもんね。自分が発表しているもの以外のことばっかり褒められるのは。
飯塚 でも、ずっと顔ファンが元気よく騒いでいるコンビっていないから。チュートリアルの徳井さんもめちゃくちゃカッコいいけど、今そういうワーキャー人気っていうわけじゃないし。人気が上がってくるタイミングは、どうしてもそういう現象が起きる気がする。
ロングコートダディ堂前の「マスク」
飯塚 「チャンスの時間」(ABEMA)の「ジム・キャリー選手権」(※)でロングコートダディ堂前さんががんばってた。ロングコートダディも仕事を選んでるって番組で言っているけど、「ジム・キャリー選手権」は「やろう!」と思って、入念な準備をして挑んだんだなって思ったし、今までの堂前さん像とは違う一面が見られてよかった。
※編集部注:ジム・キャリー演じる気弱で冴えない銀行員の主人公が不思議なマスクをつけるとことで人格が一変するコメディ映画「マスク」のように、普段は真面目な芸人に自身の殻を破り新たな一面を見出してもらおうという企画。3月17日配信回。
──自分でも「殻を破れた」とおっしゃっていましたね。堂前さんは「ひとりで60分」(関西テレビ)など、ズタボロになりかねないお笑い企画にも積極的に出演している印象です。
飯塚 とはいえ、「ひとりで60分」も「ジム・キャリー選手権」も、言ったら準備と大喜利ですよね。ちゃんと自分の作品を見せられるという意味で選んでいる仕事なのかもしれないです。
井口 番組的にも、チャレンジャーがベタじゃないほうが面白いっていうのはありますよね。「ジム・キャリー選手権」に出ていたザ・マミィ林田が別番組でも体を張っていて、自分の出しろがなくなるって酒井は逆に震えてましたけど(笑)。
飯塚 確かに、だんだん「酒井さんがやるのは普通なので、林田さんで」ってなってきそう(笑)。
井口 「有吉クイズ」(テレビ朝日)の「ローリング・クレイドル誰が一番返せるか」も、技をかけられるのがせいや、オズワルド伊藤、僕っていうメンバーで、「なんで僕らがやるんですか?」となるのが面白いですからね。
南海キャンディーズ山里のコントロール力
飯塚 南海キャンディーズの20周年ライブ(※)を観たんですけど、山里さん、改めてすごいなって思いましたね。オードリー若林さんとの「たりないふたり」でもそうだけど、山里さんって、マイクの前に立って、隣の人がなんか言ったらもう漫才にできる。そういう選手権があるとしたらもしかしたら日本一なんじゃないかっていうくらい、ちゃんと自分で面白くコントロールする能力がすごい。
※編集部注:「南海キャンペーンズ」と題し、1日目にはしずちゃん主演舞台、2日目には古舘伊知郎、元和牛・水田、あの、爆笑問題・太田と山里による即興漫才企画「まんざいこわい」、3日目には南海キャンディーズの単独ライブが行われた。4月10日(水)までFANY Online Ticketで配信中。
──囲み取材ではしずちゃんとのしゃべくり漫才に充実感を覚えていたようですし、賞レースに言及する場面もあって、漫才により力を入れていこうという思いがあるのかもしれません。
飯塚 しずちゃんとの漫才も、自分たちの現状を踏まえたドキュメント漫才になっていて、「M-1」のときとはまったく別の形に進化してました。以前はけっこう、売れたらネタをやらなくていい風潮があったけど、今テレビに出ている中心の人たちみんなネタをやっていますよね。
井口 なんだかんだ、年に何回かネタ特番があるから、毎年作ってやっているほうが、見てるほうも楽しいし、やってるほうもやりがいがある。
飯塚 太田さんがほかの人と漫才したのってめちゃくちゃ珍しいんじゃない?
井口 ああー。「笑っていいとも!」最後の水曜日にタモリさんとやって以来かもしれないです。
飯塚 水田さんも、なんとなく勝手にですけど、吹っ切れてる感じがしたというか。
井口 「アメトーーク!」もそんな感じでしたね。「このタイミングでこれを言うのはよくなかった」と番組では言っていましたけど、今までだったら逆に言えなかったと思うんですよ。コンビでいると、ブレーキかけないといけない部分があるじゃないですか。
飯塚 コンビって相方のイメージも一緒に守らなきゃいけないからね。
井口 それがなくなったから、水田さん全開のプレゼンして(笑)。
飯塚 これからもっといろんな場で活躍する人なんでしょうね。「ひとりで60分」にも出ていましたよね?
──最新回に出演されています。上手に料理するさまで笑いを起こしていたのも水田さん独自の技が光っていました。
解散とその後
井口 ここ数日でいろいろ解散発表がありましたけど、話します?
──解散後も本筋とは別のことでネットニュースになってしまっているのを見ると、話題に出すことすらはばかられますが。
飯塚 そうなんですよね。本人たちにしかわからないことを勝手な解釈で語ってもしょうがないというのもあるし、見ているほうが勝手にいろんなものを背負わせすぎてるのかなとかも思います。
──個々のことではなくて解散全体について少し話しましょうか。
飯塚 ネタの面白さだけじゃなくて、「こういうメッセージ性がある」とかっていうレッテル貼りがその芸人さんの活動を狭めかねないなとかは思いますね。本人たちは自分がやりたいネタをやっているだけだろうし。だから、解散の真意を勝手に汲み取って代弁したり、勝手に傷ついたり怒ったりしなくていい。まあ、とにかく面白いんだったら「面白い」って言い続ければいいってことだよね。
井口 そうですね。それが一番。
飯塚 あえてズラして、「仲がいい」とか別のところを語ると反発を生んだりもするから。
井口 「仲がいいところがいい」と思っても、当然のこととしてはしょらずに「面白い」は確実に言ってほしいですね。「面白いし、仲がよくて好き」「面白いし、カッコいい」とか。面白いと思っているのであれば、ですけど。「本当につまんないけど、仲がいいから好き」ってことはあんまりないと思うので(笑)。解散で言うと、藤井ペイジさんのYouTubeに元5番6番さんが出ていて。「ウエストランドが優勝したときに久しぶりに元相方にLINEした」という話をしていて、ちょっとでもそのきっかけになってたんだったらよかったなって思いましたね。
飯塚 再会のきっかけになったんだ。
井口 猿橋さん的には、自分からお笑いに誘ったのに自分から解散したってことをずっと引きずっていたみたいで。最後のほうはめちゃくちゃ仲が悪くなってたし、モヤモヤしてるところもあったと思うので、平和に着地してよかったです。
編集部注:解散については「2022年11月のお笑い」でも語っている。飯塚「コンビ解散を今生の別れみたいにしすぎないほうがいいと思う。別にやりたくなったらまたやればいいわけだし、いつでも戻ってこれるくらいの雰囲気を作ってあげてもいいのかなって」。
──あと今月言いそびれたことはないですか?
井口 「ラヴィット!」のアンケートで、僕がJ2のV・ファーレン長崎のマスコットに会いたいって書き続けてたら、僕がいない日に普通に出てたっていう。そんなことあります!?
飯塚 それ、めっちゃ言ってるけど悔しさがあんまりわからない(笑)。
井口 平たく言うと、「パクんなよ!」っていうことです。僕以外の人が思いついたとは思えないので。出すにしても、連絡くらいしてくれよ! 大変なんだから。アンケート書くの。
飯塚 あ、パーマ大佐の宣材写真が変わったのは見た?
井口 変わってましたね! 今度は太鼓の達人のバチを持つっていう。今推してる楽器を持つスタイルだったということが判明しました。よく見たらプロフィールの特技も「太鼓の達人」が一番目になってますから。
──よく見てますね。
飯塚 「日本4大なんか持ってる宣材写真」で、ギャル曽根さんのフライ返し、吉田豪さんのパイプ椅子、ゴー☆ジャスの地球儀と、パーマ大佐のバチ。
井口 (写真を見ながら)腹立つなあ(笑)。
プロフィール
井口浩之(イグチヒロユキ)
1983年5月6日生まれ、岡山県出身。2008年、河本太(コウモトフトシ)とウエストランドを結成。2013年4月に「笑っていいとも!」(フジテレビ)のレギュラーに抜擢され、最終回まで不定期で出演した。2012年から2014年に「THE MANZAI」認定漫才師。「M-1グランプリ」では2020年に初の決勝進出を果たし、2022年に優勝! ラジオ形式の番組「ウエストランドのぶちラジ!」をYouTubeなどで配信中。とろサーモン久保田とのレギュラー番組「耳の穴かっぽじって聞け!」(テレビ朝日)は毎週火曜26:34~。タイタン所属。
飯塚大悟(イイヅカダイゴ)
1982年4月13日生まれ、新潟県出身。テレビ、ラジオの構成作家。現在の担当番組は「サンドウィッチマン&芦田愛菜の博士ちゃん」「家事ヤロウ!!!」(テレビ朝日)、「水曜日のダウンタウン」(TBS)、「ヒルナンデス!」(日本テレビ)、「オドオド×ハラハラ」(フジテレビ)、「オードリーのオールナイトニッポン」(ニッポン放送)など。書籍「深解釈 オールナイトニッポン~10人の放送作家から読み解くラジオの今~」(扶桑社)。