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竹下景子が豪放磊落な無敵のおばあちゃんに…? 「まるは食堂2024」

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左から)佃典彦、竹下景子 (撮影:黒豆直樹)

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愛知県で展開する海鮮料理のチェーン店「まるは食堂」の創業者である相川うめの一代記を舞台化した「まるは食堂2024」が東京、愛知にて上演される。コロナ禍で中止となった2020年の初演および2021年の縮小版「続・まるは食堂 ~なにごとの おわしますかは 知らねども~」に続き、うめを演じる竹下景子と作・演出の佃典彦が本作に込めた思いを語ってくれた。

戦後、魚の行商から始まり、魚屋を開業して一代で「まるは食堂」グループを築き上げた相川うめの姿を描く本作。他の船が漁に行かない嵐の海に船を出したり、時に子どもさえも商売の道具として利用するなど、豪放磊落なうめの姿が印象的だが、佃が彼女の人生を戯曲化する上で惹かれたのはそこではなかった。

 最初はうめさんの人生の“メチャクチャ”な部分を抽出して描こうと思ったんですけど、生前のTVインタビューや書籍にあたる中で「これはただメチャクチャなおばあさんとして書いても全然違うな」と気づきました。うめさんが九十数年生きた中で、何より大事にしていたのがお母さんのといさんの教えなんです。子どもの頃から言われてきたことを守り抜いて、それにそぐわないことは絶対にやらない――そうやって生きていく中で、気づいたらお店がこんなに大きくなってたんですね。うめさんが昔のヤミ仲間のサヨリ(今井あずさ)から「あんたと私、何が違うんだ?」と問い詰められて「ワシにもわからんのだ」と答えるシーンが一番好きなんですけど、その言葉が彼女の生き方を象徴してるんじゃないかと思います。

この豪快なうめという人物を竹下が演じることに多くの人が驚きを感じたが、竹下自身も「私もびっくりしたね。まさかやらせてもらえるなんて…」と笑いつつ、自身のイメージを覆すような役柄との出会いを「楽しんだ」と語る。

竹下 最初は「どうしよう?」と思いましたけど、救いは私も名古屋の人間なので、セリフに助けられる部分があったというところ。うめさんのセリフを読みながら「あぁ、私にも同じ土地の血が流れてるのかな」と感じるところがたくさんありました。とはいえ、キャラクターとして、こんなに差がある人を演じるってこれまでなかったので必死でしたね(苦笑)。

竹下景子

 周囲に怒鳴り散らすような人ではない竹下さんが演じるからこその面白さがあったと思います。最初の時点でうめさんとの間に差を感じられていたと思いますが、それを埋めていく作業の中で、うめさんに『近づく』というよりは、竹下景子独自の相川うめが出来上がっていったと思います。

竹下 それは演出のおかげです。「(もっと)上!上!」ってよく言われましたね。ただ、考えるよりも行動の人で、そこに嘘がないので、演じていて気分がよかったです。解放されていく感覚がありましたね。

物語は、うめの孫であり、現在「まるは食堂」の社長を務める豊和が時空を超えて、うめに付き従い、彼の視点で物語が進んでいく。演じる関口アナンは竹下の次男である。

竹下 息子だと思うとつい甘くなっちゃうんですけど(笑)、身内に厳しいうめさんなので、公私混同せずに、その時代、時代を生きてきたうめさんの姿が豊和の目に映ればいいなと思っています。

 「ぬけがら」という岸田國士戯曲賞をいただいた作品で、いろんなお父さんを描いたんですけど、うちの親父が死んだ時、遺品整理をしていたら、僕は当時40前後でしたが、40過ぎの頃に親父が海外旅行に行った時の写真が出てきて、それが僕そっくりだったんですよ(笑)。この頃の親父と話がしてみたかったなぁ…」ってのがあって「ぬけがら」を書いたんですけど、今回も戦時中に空襲警報が鳴っている中で畑を耕してるおばあちゃんの姿を豊和がどんなふうに見るのか? 結婚式があって、戦争もあって…そこで自分とほぼ同じ年頃の祖母と話をする感じが素敵だなと。前作の時はそこまで考えてなくて、2人のシーンはおばあちゃんと孫のやり取りって感じでしたけど、今回、うめさんと豊和のやり取りがどうなるのかってのはすごく楽しみですね。

いまなら即アウト? 不適切にもほどがある言動の数々! それでも愛されたのは…

昭和の時代のうめの豪放磊落な言動は、コンプライアンス的にいまの時代では許されない部分も多そうだが…。本作やうめの生き方、佇まいが現代の観客にどう響くのか? 楽しみでもある。

 いまの時代に昭和の不適切なそういうことがどう受け止められるか、ちょっとわかんないですが(笑)、「こんなことが許されていた」というよりも、「これが許されるために、これだけのことをやっていたんだ」という部分が大きいと思います。当時だから許されていたわけでもないし、誰でも許されるわけじゃないけど、うめさんのメチャクチャな行動にそれでも家族みんなが付いていく――それだけ愛されていたし、それを“カリスマ”と言うのか? まあ「いま、これは絶対アウトだな」ってことはいっぱいありますけど(笑)。

佃典彦

竹下 私も戯曲を読ませていただいて、まず感じたのが「これ本当のことなの?」って(笑)。実際にこういう人がいたってことが伝われば面白いと思います。

やってることは相当メチャクチャなんですけど、うめさんは“弘法大師さま”への信心というのがあって、どこか無意識に「大きな存在に対する小さな自分」という思いをよりどころとして持っていたんじゃないかと思います。その信心に支えられて、恐れずに何でも言うし、メチャクチャをやる――ただ、自分が被るべきものは潔く引き受ける。そこがうめさんの人としての大きさなのかなと思います。単にメチャクチャで強いってだけでなく、人として大事な部分を持っているうめさんをきちんと押さえて演じたいですね。でも正直、あそこまでハジけられるのうらやましいですね(笑)。

取材・文・撮影:黒豆直樹

<公演情報>
舞台「まるは食堂2024」

東京公演:2024年4月17日(水)~21日(日) 座・高円寺1
愛知 半田公演:2024年4月24日(水)・25日(木) 半田市福祉文化会館 瀧上工業雁宿ホール
愛知 名古屋公演:2024年4月28日(日)・29日(月・祝) メニコンシアターAoi

チケット情報:
https://w.pia.jp/t/maruha2024/

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