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野村周平と桜井日奈子の心の声がすれ違う 『僕の初恋をキミに捧ぐ』複雑な両想い

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リアルサウンド

 照(馬場ふみか)の死で自分の病気と深く向き合うことになった逞(野村周平)。その一方で繭(桜井日奈子)は昴(宮沢氷魚)と距離を縮めていく。『僕の初恋をキミに捧ぐ』(テレビ朝日系)第4話ではすれ違う2人の様子が繊細に描かれた。

【写真】昴(宮沢氷魚)の車に乗る繭(桜井日奈子)

 逞は照の死に直面し、自分の病気が治らないかもしれないと痛感する。さらには、家族が心配していることや、普通の日常を送れないことへのうしろめたさも感じていた。繭を想うあまりに、繭を幸せにできないのではないかという思いも強くなっていく。繭と逞は、お互いが強い好意を抱いていながらも、不治の病に阻まれ、切なくもすれ違っていくのであった。そんな逞を野村は、飄々とした芝居で演じる。高校生活では、明るく振る舞い、病気にはおよそ見えないようなフランクな様子を見せる。しかし時折、影のあるような思いつめた顔で、逞の心の奥にあるしこりを感じさせる瞳をするのであった。

 第4話ではそんな逞の影を感じさせるシーンが多い。風呂で思いつめたような表情をしたり繭を諦めたり、逞を応援している人には心が痛むシーンばかりだっただろう。野村の演じる逞の高校生活が、あまりにキラキラとしているので病気と向き合うシーンでのギャップは大きい。逞の人間的な2面性を強く打ち出した芝居だと感じた。

 さらに今回、昴が繭に対して積極的ではない逞を「情けない」と評する場面がある。逞は、本当は心の底から繭を想っている強さがあるからこそ、繭を遠ざけている。視聴者から見れば逞が情けない訳ではないことは一目瞭然だ。しかし昴は頻繁に逞にちょっかいを出しながら繭にアプローチする。昴は、繭を想う気持ちと同時に、父の病気のこともあり逞に発破をかけたい気持ちがあるのではないかと感じる。繭にアプローチをするだけでなく、逞にも気にかけるそぶりを見せるのはそのためだ。昴にとっても逞は、複雑な感情を抱かずにはいられない存在なのだろう。

 病気であるということで逞が抱える問題は大きい。家族、友達、好きな人。誰に対してもいつだってうしろめたさと悔しさは付いて回る。そんな中、唯一心地よく過ごせたのは同じ病気であった照だったのではないだろうか。しかし逞は照を好きにはなれなかった。逞にはまだ、苦しくても家族や友人と向き合う力が残っていた。照との守られた世界での人生ではなく、外に向かおうとする気持ちを尊重したのだ。逞が照を選べなかった気持ちも、繭を好きというシンプルな気持ちだけではないはず。本作は、高校生の恋愛ながら複雑な事情が絡み合うことでより深い心理描写が魅力になっている。次回は繭にも命の危機があったことが示唆された。逞の気持ちのゆらぎに注目したい。

(Nana Numoto)