宮下雄也が体当たりで挑む“出られなくなってしまう男”、田村孝裕「莫逆の犬」
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「莫逆の犬」稽古より。
神保町花月2月公演「莫逆の犬」の稽古が進行中だ。ステージナタリーは、2月上旬に東京都内で行われた本作の稽古を取材した。
「莫逆の犬」は、田村孝裕のONEOR8がココリコの田中直樹を主演に迎え、2008年に上演した作品。罪を犯し、自分の父親と彼女に匿われた男の10年が描かれる。男は身を隠すため、桜の木が見える部屋から1歩も出ずに彼女の帰りを待ち続け……。今回の上演版では、宮下雄也が男・一郎役を、大谷麻乃が彼女の美月役を演じ、父親役を板尾創路、美月の弟・照実役をヒラノショウダイを務めるほか、照実の同僚・圭介役の矢部太郎(カラテカ)らが登場する。
本作の冒頭で描かれるのは19年4月の場面。そこから、訳ありな一郎と美月の同棲が始まった09年へと遡り、10年、11年……と、1年ごとに時間を追う形で2人の変化が切り取られる。この日の稽古では、冒頭から13年のシーンまでが通された。
宮下と大谷は、すれ違っていく一郎と美月の関係性を緊張感のある演技で表現。一方で、山口森広演じるオカマのガリ子の演技や、板尾演じる父の飄々とした異常さがシーンに笑いを添えるひと幕も。
張り詰めた空気の中で行われた通し稽古が終わると、田村は出演者それぞれに丁寧にダメ出しをしていく。特にこだわっていたのは、一郎と美月の関係性だ。田村は宮下へ、「言い方がへりくだってしまっているので、説得するような言い方をしてみたら?」とアドバイスを送る。宮下はこれらのダメ出しを受け、「はい」と真摯に応じながら、悔しそうに頭をかきむしった。
稽古を終えた田村は、初演版からの変化を「10年前に比べると、引きこもり自体が珍しくなくなってしまったので、脚本にけっこう手を入れました」と説明。さらに「今回はそれよりも、美月との関係性の中で、一郎が“出られなくなってしまう”ことに重きをおいて演出しています」と明かす。続けて「本当はもう少し救いがある感じに結末を書き直すつもりだったんです。でも『神保町花月でやるからこそ、これでいいんじゃない?』と板尾さんに言ってもらったので」と語り、笑顔を見せた。
09年の「シュート・ザ・クロウ」、14年の「きりきり舞い」など、これまでにも田村と共に作品に立ち上げてきた板尾。今回の公演は、そんな板尾のリクエストから企画されたという。発起人である板尾は、本作を「内容がすごく刺激的。笑いもありますけど、すごくシリアスな話です」と紹介。また観客に向け、「神保町花月では、今後も人気劇団の方たちとコラボして舞台をやっていくので、ぜひ期待していただけたら」とメッセージを送った。「莫逆の犬」の公演は2月20日から3月3日まで東京・神保町花月にて。
神保町花月2月公演「莫逆の犬」
2019年2月20日(水)~3月3日(日)
東京都 神保町花月
脚本・演出:田村孝裕
出演:宮下雄也、冨田直美、山口森広、恩田隆一、大谷麻乃、ヒラノショウダイ、西田どらやき(入間国際宣言)、奈良岡にこ / 矢部太郎(カラテカ)/ 板尾創路