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あいみょん、CHAI、吉田凜音……明確な意志を備えた女性シンガーの新作

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 性別によって何かを分かることに何の意味もないが、これまでの価値観を覆すような、独創的な音楽性を持った女性アーティストが続々と登場していることは、疑いようのない事実だろう。今回はあいみょん、CHAIなど、ポピュラリティ、音楽的クオリティ、明確な意志を備えた女性アーティストの新作を紹介したい。

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 シングル『満月の夜なら』『マリーゴールド』のロングヒット、『NHK紅白歌合戦』(NHK総合)への出演、初の日本武道館公演(2月18日)など、名実ともに完全にブレイクを果たし(特にサブスクでの圧倒的な人気は凄まじい!)、新世代シンガーソングライターの旗手となったあいみょんの2ndアルバム。初のドラマ主題歌「今夜このまま」(日本テレビ系ドラマ『獣になれない私たち』主題歌)をはじめとするタイアップ曲も含まれているが、本作の軸になっているのは『瞬間的シックスセンス』というタイトルの通り、彼女自身の直感や生命力がリアルに感じ取れることだろう。揺れ動く刹那的な恋愛感情をリリカルに描いた「恋をしたから」、〈平成うまれのカリスマが/溢れる世の中についてけない〉と歌うパンクチューン「夢追いベンガル」。生と性をしっかりと刻み込みながら、多くのリスナーが共感できるポップスへとつなげる。“ウソのなさ”と“わかりやすさ”をここまでダイレクトに結び付けられるシンガーソングライターは本当に稀だと思う。

 アメリカの人気インディーレーベル<BURGER Records>と契約、アメリカ西海岸ツアーと2度目の『SXSW』出演を皮切りに、欧米でのツアー、フェス出演、メディアでの露出を増やす一方、日本でもパナソニック、GUなどの企業とタイアップするなど、あらゆる方向で活動の幅を広げまくっているCHAI。“コンプレックスはアートだ”というコンセプトを軸に一気に知名度を上げた彼女たちの2ndアルバム『PUNK』は、“やりたいことをやりまくる”がそのまま世界基準のポップミュージックに直結してしまう、日本のバンドとしてはほとんど前代未聞の状態となっている。ニューウェイブ、インディー系ギターポップ、ファンク、ディスコなどを自由にぶち込み、超ポジティブなバイブレーションとともに世界中のオーディエンスを踊らせまくるーー世界各地で起きている現象がそのまま映し出された傑作。豊かで刺激的な低音を軸にした、サウンドメイクの素晴らしさにも注目してほしい。

 オーセンティックにしてブランニュー。親の影響で幼少の頃から松田聖子、槇原敬之、DREAMS COME TRUEなどに親しみ、大学生の頃からシンガーソングライターとして活動をスタートさせた杏沙子。昨年の夏にミニアルバム『花火の魔法』にて待望のメジャーデビューを果たした彼女の1stフルアルバム『フェルマータ』は、80~90年代の良質なJ-POPを引き継ぎながら、新鮮な響きを備えたポップスをたっぷり堪能できる仕上がり。軽快なスカビートと“恋のウイルス”をテーマにした歌詞が一つになった「恋の予防接種」、しなやかなダンスビートと流麗なホーンセクションが極上のグルーヴを生み出す「チョコレートボックス」など、瞬発力と味わい深さを同時に描き出す楽曲からは、彼女自身の歌の魅力はもちろん、宮川弾、山本隆二、富田恵一など、優れたクリエイターをバランスよく配置したプロダクションの確かさが感じられる。

 クラシックをルーツに持ち、チェリストからシンガーソングライターに転身。ロック、クラシック、ポップスなどを融合させた楽曲、ゴシックかつキュートなビジュアルと衣装、“チェロを演奏し、歌う”という独特のステージングによって、アメリカ、ヨーロッパを 中心に海外でも高い人気を得ている分島花音。デビュー10周年のタイミングで制作された初のベスト盤『DECADE』には、確かな音楽技術と独自の美意識に貫かれた彼女の音楽世界が色濃く反映されている。新曲「fragment ornament」はドラマティックなメロディライン、クラシカルにしてエッジーなバンドサウンド、生々しい感情とファンタジックな要素が混ざり合う歌詞など、彼女の独創的なスタイルがさらに進化していることを告げるナンバーだ。

 「りんねラップ」のMVで話題を集め、音楽、モデル、女優として同世代の女性を中心に支持を広げている2000年生まれのアーティスト、吉田凜音のニューシングル表題曲「#film」は、彼女自身が初めて作詞・作曲した楽曲。10代女子の日常と未来に対する思いを描きながら、〈過ごした思い出は/これから先いつだって現像し続けるよ〉というフレーズによって“儚い永遠性”と呼ぶべき感情につなげるリリック、そして、決して感情を大げさに押し付けることなく、楽曲に込めたメッセージを自然に伝えるフロウは、彼女のシンガーソングライターとしてのセンスを証明している。アパレルブランド・#FR2と写ルンですとのコラボレーションによる“レンズ付フィルムカメラ盤”が販売されるなど、リリースの方法も個性的だ。(文=森朋之)