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Aimer、さユり、清原果耶……野田洋次郎、提供曲から感じる歌い手への“愛情とリスペクト”

音楽

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リアルサウンド

 山田孝之がプロデューサーを務める映画『デイアンドナイト』の主題歌、女優・清原果耶が役名の大野奈々名義で歌う「気まぐれ雲」の作詞作曲・プロデュースをRADWIMPSの野田洋次郎が担当している。これまでもAimerや酸欠少女さユりといった女性アーティストを中心に楽曲提供をしてきた野田だが、バンドと異なる魅力はどんな部分にあるのだろうか?

参考:“野田洋次郎のラブソング”が持つ本質的な魅力ーーRADWIMPS「そっけない」を聞いて

 昨年12月に発表されたRADWIMPSの最新作『ANTI ANTI GENERATION』は、メンバーの休養、野田のソロ活動、映画『君の名は。』のサントラ制作などを経て、バンドから音楽集団へと進化したRADWIMPSの現在地が克明に刻まれた作品であり、「ミクスチャー」という言葉を再定義するかのように、ジャンルレスなアレンジ/サウンドプロデュースが印象的であった。しかし、野田の提供曲の多くはシンプルなピアノの弾き語りが基調となっていて、何よりソングライティングそのものが魅力だと言っていいように思う。

 近年の野田は“自分のメロディを自分以外の声の人に歌ってもらうのが楽しくて仕方がない”とも語っていて、『ANTI ANTI GENERATION』に収録されていた「そっけない」も、もともと女性シンガーに歌ってもらうことを想定していたという。

 結果的に、あの曲は野田自身が歌うことになったものの、同じくアルバムに収録の「泣き出しそうだよ」にはゲストボーカルとしてあいみょんを迎え、野田とのデュエットを披露。あいみょんの歌声が持つブラックなフィーリングを引き出す楽曲は、野田のプロデュースセンスを感じさせるものでもあった。野田が唯一楽曲提供をしている男性アーティストがハナレグミだというのも、野田が「記名性の高い歌声」を欲していることを象徴していると言えよう。

 そんな野田のこれまでの楽曲提供の中でも、代表曲と言えるのがAimerの「蝶々結び」。野田がピアノとコーラスで、ハナレグミもギターとコーラスで参加したドラマチックなバラードであり、Aimerのソウルフルな歌声が堪能できる名曲だ。野田は2008年にCharaに「ラブラドール」を提供しているが、その歌声の力と、抑えめだからこそよりエモーションが伝わる曲調含め、YEN TOWN BANDの「Swallowtail Butterfly~あいのうた~」にも通じる部分があるように思う。また、「蝶々結び」と同時期にリリースされた酸欠少女さユりの「フラレガイガール」もやはりピアノを軸としたバラードながら、こちらはざらついたオルタナ風のギターがアクセントになっていて、さユりの歌声とともに切迫感を生み出していた。

 そして、野田の最新の提供曲が冒頭で触れた「気まぐれ雲」である。2017年には行定勲監督の映画『ナラタージュ』で、プロフィールの詳細が明かされていない女子高生シンガーadieuが歌う主題歌「ナラタージュ」を手掛けていたが、「気まぐれ雲」はそれに続く映画主題歌であり、清原の透明感のある歌声と、スケール感のあるストリングスの組み合わせによって、静かな感動を生み出している。

 この曲について野田は「良い作品だからこそ、負けないくらい良い曲にしたいと思ったし、最後に流れる曲なので、映画を観た人が、何度も何度もこの映画を自分の中で反芻できる曲であってほしい、一生懸命生きている登場人物たちの姿が蘇ってきてほしいと思いました」とコメント(野田洋次郎、映画『デイアンドナイト』主題歌にヒロイン・清原果耶が抜擢)。清原の歌唱は野田の提案によるもので、清原に対しての「なるべく何も言わない。事前に声を聞かせていただいて、すごく素敵な声だと感じていたので、足さず、引かずに」という言葉からは、やはり歌声そのものの魅力を第一に考えていることが伝わってくる。また、この曲には野田がコーラスでも参加していて、これは山田からの「一緒に歌ってほしい」という一押しがあったと、野田本人がTwitterで明かしている。

 「そっけない」や「泣き出しそうだよ」も含め、近年の野田の提供曲は基本ピアノバラードであり、やはりピアノを弾きながらメロディを作り出し、それを自分とは違う魅力を持ったシンガーに歌ってもらうことに、大きな喜びを感じているのだろう。そんな姿勢から生み出される楽曲は、「作家として」というよりももう少し無邪気な、歌い手への愛情とリスペクトの結晶のようなものであると感じる。そして、それはシンプルであるがゆえに、バンド以上に野田のソングライティングの核が表れていると言えるかもしれない。(金子厚武)