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仲道郁代が描き出す、ベートーヴェンとシューベルトの理想と夢

クラシック

インタビュー

ぴあ

仲道郁代 ©N.Ikegami

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仲道郁代は、高い技術と美しい音色、哲学的思考をもって楽曲に向かい、常に高みに向かって挑戦し続けるピアニストである。そんな彼女が自身の演奏活動40周年と、特に敬愛し情熱をもって取り組んできた作曲家であるベートーヴェンの没後200年が重なる2027年に向けて行っている「仲道郁代 The Road to 2027リサイタル・シリーズ」が6月2日(日)に開催される。

「今回は、音の響きの中に“さめざめと泣き続けたくなるような夢”を聴いているようなプログラムです。タイトルにある“夢”というのは、理想かもしれませんし、どこか永遠の世界や焦がれてやまない故郷、あるいは永遠の世界かもしれません。“何処へ”とは、場所を指すかもしれませんし、探し求めるという行為とも言えます。二つの言葉を照らし合わせながら今回の楽曲をお聴きいただくことで、何か見えてくるものがあると思います」

「The Road to 2027」には春と秋のシリーズがあり、春はベートーヴェンのピアノ・ソナタを核としたプログラム。今回は第27番に第13番「幻想曲風」、第14番「月光」を並べ、そこにシューベルトの第18番「幻想」を重ねることで、ベートーヴェンとシューベルトのソナタに込められた哲学的意味を探求していく。

「ふたりの作曲家が生きた時代は重なっていますし、シューベルトはベートーヴェンを尊敬していました。しかし、彼らの夢の捉え方は異なるように思えます。ベートーヴェンは夢や理想に真っすぐに向かい、理想を追うこと自体が素晴らしいという考え方を持っていたと思います。対するシューベルトは、理想には到達しないとわかっていて、わかりつつもさすらい、巡ることが美しいと味わうという考え方のように思えます。今回の演奏曲を通して、ベートーヴェンがどのように夢や理想、遠く離れたものを描いたのか、シューベルトが見出したかったものは何だったのか、ということをぜひお聴き比べ頂きたいです」

全てのプログラムが注目曲なのだが、特に今回は最有名曲「月光」の印象が大きく変わりそうである。

発見されたベートーヴェン自身によるメモ書きから、彼が「月光」作曲に関連してエオリアンハープという古来の楽器に関心を持っていたことや、『エオリアンハープ』と題された書物に掲載されている詩に興味を抱いていたことがわかりました。その詩の一節には、こんな言葉が書かれています。

『…甘い夢に抱かれて、人生からあまりに早く見放され、この世の目的を果たせなかった人々の魂…』

第1楽章から第3楽章にかけて、ベートーヴェンがこの曲で何を見出したかったのか、ということを改めて考えながら演奏していきたいと思っています」

取材・文:長井進之介

The Road to 2027 仲道郁代 ピアノ・リサイタル 夢は何処へ

■チケット情報
https://w.pia.jp/t/nakamichiikuyo2024-dream/

5月11日(土)14:00開演
アクトシティ浜松 中ホール

5月19日(日)14:00開演
兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール

5月25日(土)14:00開演
宗次ホール

6月2日(日) 14:00開演
サントリーホール

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第27番 Op. 90
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第13番 Op. 27-1
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第14番「⽉光 」Op. 27-2
シューベルト:ピアノ・ソナタ第18番「幻想 」D894 Op. 78

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