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これは夢か現か、安田章大扮する浮世絵師が舞台を駆け巡る“痛快ファンタジー時代活劇”『あのよこのよ』上演中

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舞台『あのよこのよ』より (撮影:田中亜紀)

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安田章大主演、青木豪作・演出の舞台『あのよこのよ』が東京・渋谷のPARCO劇場で絶賛上演中だ。

幕末から明治へと移り変わる時代を背景に、安田扮する浮世絵師・刺爪秋斎(さしづめしゅうさい)が、権力に対する反骨心を抱きながら絵師としての生き方に迷い続けるなか、浮世の人々との出会いによって奇怪な事件に巻き込まれてゆく痛快ファンタジー時代活劇!?……とオモシロ要素がてんこ盛りの舞台で、5年ぶりの完全オリジナル作品だという青木の筆と采配が、劇の冒頭から冴えていた。

新政府への批判を込めて描いた秋斎の風刺画の世界と、その絵を描いたことで邏卒(巡査の旧称)に捕まり、牢屋に入れられてしまう秋斎の現実世界、そのふたつが混濁していくオープニングに早くも興奮、軽妙な音楽に乗ってテンポよく転がる劇世界へと瞬時に誘われる。その後の展開でも度々この混濁に巻き込まれ、はたしてこれは夢か現か、まさしくあの世なのかこの世なのか、といった妄想のスリルと浮遊感がラストまで続くのである。散りばめられた笑い、豪快な殺陣やアクション、謎にくすぐられる上質のエンターテインメントを味わいながら、権力の横行に痛めつけられる庶民、流行り病のパンデミックなどの描写に、「巡り巡って、この世かな」と想起させる運びも心憎い。

“アングラの匂いをまとったアイドル”、そんな稀有な魅力を備えた俳優、安田の存在が、この巧みな構想の発起点だろう。宣伝ビジュアルで見かけた浮世絵師の扮装の耽美的な雰囲気を楽しく裏切って、舞台上には先走って空回りし、後悔して反省し、地団駄を踏む愛おしい人間・秋斎がいた。

その秋斎を中心に、未来が見える不思議な力を持つ木賃宿の女将フサ(池谷のぶえ)、騒動の発端となるワケありげな女ミツ(潤花)、彼らを追い詰める冷酷非道な邏卒の組頭・山路(中村梅雀)など濃厚キャラが続々登場、ひとり一人それぞれがキーマンとなる深い肉付けに青木の人間愛、演劇愛が覗く。

笑い、驚き、心地よく活劇に身を委ねていきながら、要所で世のはかなさ、虚しさが胸を突くのは、タイトルのままに生と死を見つめた物語だからだろう。未来が分かり、死んだ人間とも会話するフサは、いわばあの世とこの世の境目を曖昧にする役回りで、コミカルな振る舞いの奥に慈愛の達観を忍ばせた、池谷の表現の滲み出る旨味たるや。ラストシーンの秋斎とフサの対話は白眉。波乱の一日の出来事が、「生きるとは」の命題に行き着く見事な仕上げに快い痺れを味わった。

取材・文:上野紀子 撮影:田中亜紀

<公演情報>
PARCO PRODUCE 2024『あのよこのよ』

作・演出:青木豪

出演:安田章大
潤花 / 池谷のぶえ / 落合モトキ / 大窪人衛 / 村木仁 / 南誉士広 / 三浦拓真
市川しんぺー / 中村梅雀 / 他

【東京公演】
2024年4月8日(月)〜4月29日(月・祝)
会場:PARCO劇場

【大阪公演】
2024年5月3日(金・祝)~5月10日(金)
会場:東大阪市文化創造館Dream House 大ホール

チケット情報:
https://w.pia.jp/t/anoyokonoyo/

公式サイト:
https://stage.parco.jp/program/anoyokonoyo

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