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傑作、問題作を連発!
日本一“ヤバい監督”吉田恵輔と最新作『ミッシング』の魅力

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石原さとみが主演を務める映画『ミッシング』が5月17日(金)から公開になる。本作は、失踪した娘を探す家族の物語。絶望的な状況で、もがき苦しみながら、光を見つけていく人々の姿を描いた感動作だ。本作の脚本・監督を務めたのは、話題作・衝撃作を連発する日本映画界屈指のフィルムメイカー、吉田恵輔。常に観客を揺さぶり続ける、いま世界で最も“ヤバい”監督のひとりだ。

吉田恵輔はなぜ、観客を沸かせ続けることができるのか? 最新作で何を描くのか? 吉田作品を追い続けてきた編集部・中谷祐介が映画『ミッシング』の魅力に迫る!(※吉田恵輔の「吉」は、正式にはつちよし)

吉田恵輔(よしだけいすけ)

1975年、埼玉県出身。学生時代に塚本晋也監督作品の照明を担当。自主制作映画『なま夏』(06)で注目を集め、同年、『机のなかみ』 で長編映画監督デビュー。その後も、『さんかく』 (10)、『麦子さんと』 (13)、『ヒメアノ〜ル』 (16)、『愛しのアイリーン』(18)、『BLUE/ブルー』(21)、『空白』(21)など話題作を次々と発表。

人気原作の映画化だけでなく、オリジナル脚本作品を数多く手がけており、映画賞の受賞も多数。いま、最も“次回作が待たれている映画作家”。

眼を背けるな! 炎上も辞さない人間の“むき出し”の姿

吉田恵輔は新作が発表されるたびに注目を集める監督で、その作品に“ありきたり”な映画は1本もない。

吉田監督が描き続けるのは、人間の“むき出し”の姿。悪意もあれば、嫉妬も、怒りもある。一方で、キレイゴトではない愛情や親切心、秘めた想いが綴られることもある。ボンヤリと楽しめる、表向きだけ心地のよい“テンプレ映画”は吉田作品には存在しない。その作品は観る者を時に挑発し、時にドン底に誘う。観ている間、緊張感を感じたり、怒りを感じるかもしれない。

でも、それこそが私たちの真の姿、私たちと社会がぶつかる時に生まれる歪みなのだ。吉田監督は“炎上”も“賛否両論”も恐れずに、自身の信じる道を突き進んでいく!

『ミッシング』で描かれるのは、娘が失踪し、手がかりがないまま3か月が経過した夫婦の物語だ。

妻の沙織里は、娘・美羽の捜索を続けながら、娘の存在と事件への世の中の関心が薄れつつあることにあせり、苛立っている。夫・豊とは事件に対する温度差を感じ喧嘩ばかりの日々。彼女の頼りは事件の取材を唯一、続けている地元テレビ局の記者・砂田だけだ。

手がかりがないまま時間だけが過ぎていき、娘の失踪時に沙織里がライブに行っていたことが知られるとネット上では誹謗中傷が渦巻く。娘への注目は薄れ、自分への暴言ばかり増え、さらに追い詰められていく沙織里は、周囲と衝突をくり返し、少しずつ心を失っていく。

「娘に会いたい」ただそれだけを願い続ける沙織里を主人公に、本作でも人間の“ナマの姿と心”が描かれ、小さな子がいなくなった理不尽な出来事に対する周囲の態度を通して、私たちが生きる社会の歪みが浮き彫りになる。

その描写はどれも真摯で、真っ直ぐであるがゆえに容赦がない。映画館の暗闇で真剣に対峙したい、覚悟して挑まなければならないドラマがここにはある。

俳優”脱皮”請負人。吉田作品で俳優は絶対進化

吉田作品が描くのは“生ヌルさ皆無”の重厚な作品ばかり。ゆえに、出演する俳優たちにも極限の感情表現が求められる。

振り返ると、吉田監督とタッグを組んだ俳優は、その作品を機に大きく進化し、俳優としてキャリアアップを遂げてきた。

『ヒメアノ〜ル』では森田剛が冷酷な殺人鬼役を演じ、観客に衝撃を与えた。『BLUE/ブルー』では松山ケンイチがボクサー役を演じるため、2年間をかけて役づくりを行い、負け続きのプロボクサーの内面を全身全霊で体現した。

すでに人気、キャリアのある俳優たちであっても、さらなる成長が待っている。出演作を観続けてきたファンでも「こんな姿は観たことがない」と驚く。吉田作品で俳優は必ず“進化”を遂げるのだ。

本作で、妻であり母・沙織里を演じた石原さとみも、吉田監督との仕事を熱望し続けてきた俳優だ。

石原はドラマやCMなどで愛らしい姿を見せることも多いが、映画『北の零年』『そして、バトンは渡された』や舞台『奇跡の人』『組曲 虐殺』など、キャリアの節目節目で、それまでのイメージを大きく覆し、俳優として次のステップに向かう役を演じてきた。

その中でも『ミッシング』は石原にとって最大の挑戦にして、最大の進化を遂げた作品だ。石原は本作で、愛する娘を失い、何の手がかりもないまま暗闇を歩き続けるような孤独と、周囲の無理解に対する怒りと焦りといら立ちを“ポーズ”ではなく全存在をかけて表現する。

言葉では説明しきれない感情に飲み込まれそうになる場面では、涙が止まらないだけでなく、その表情、眼、姿勢からも感情があふれ出している。その哀しみや怒り、絶望感は静止できないほどリアルで悲しい。

そんな彼女がもし光を、かすかな希望を見つけ出すことができるとしたら……本作で描かれる感動は、出演者たちの“命がけ”と言ってもいいほどの演技が生み出したものなのだ。

極限状態、緊張状態の人間に納得。これが吉田恵輔の真骨頂!

15歳の高校生、それも恋人の妹に夢中になってしまう三十男が登場する『さんかく』、恋愛関係のもつれから凶行を重ねていく男を描いた『ヒメアノ〜ル』、42歳の独身男とその母、フィリピン人の妻の愛情を巡る闘争を描く『愛しのアイリーン』、万引き未遂事件を起こして逃走し交通事故死した娘の潔白を証明しようと暴走する父親が主人公の『空白』など、吉田作品はとにかく強烈なドラマが多い。

どのドラマでも人間が極限状態、緊張状態に放り込まれ、時に流血すら起こるほどに登場人物が衝突し、正義など存在しなくとも嫉妬や方向違いの怒りでキャラクターが失踪・暴走する。ここには安易な“共感”や“あるある話”は存在しない。あるのは違和感、時に恐怖、時に“ありえない”と思ってしまうおかしみ。

しかし、どの作品でも観客は魅了されてしまう。極限状態を観ながら「このような感情に自分がなってもおかしくはない」と思ってしまうのだ。

映画で描かれるような極限、緊張状態に置かれた経験をした人は多くはないかもしれない。しかし、本作で石原さとみと青木崇高演じる夫婦が経験する理不尽な状況や絶望的な気持ち、出口のない感覚は誰もが味わったことがある/この先に味わう可能性があるのではないだろうか?

自分ではどうにもならない状況は確実に存在する。家族の死、自分ひとりでは解決できない恋愛関係の破局、予告なく襲ってくる自然災害、努力したが叶わなかった夢や目標……私たちは生きている中で突然、大切なものを失くしてしまう、かけがえのないものを自分ではどうにもならない理由で奪われてしまう。

本作はそんな“簡単に共感できるものではないが、確かに存在すると納得できる”感情とドラマを描いている。だからこそ、本作が描く希望と光は登場人物だけでなく、映画を観るあなたにも静かに差し込んでくるはずだ。

衝撃的で、ヤバい映画を連発する吉田恵輔監督は、誰よりも真っすぐで、繊細で、嘘のない映画をつくり続ける監督でもある。甘いだけの“言い訳/なぐさめ”映画はいらない。ヤバい社会を生き、ヤバい問題とヤバい未来を抱える“ヤバい私たち”が本当に必要な映画、心から希望を感じることのできる映画。それが『ミッシング』だ。

『ミッシング』

5月17日(金)全国公開
(C)2024「missing」Film Partners
http://missing-movie.jp/