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草彅剛&中川大志が語る武士の魂「正直、面倒くさい(笑)。でも、憧れはあります」

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インタビュー

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左から)中川大志、草彅剛 (撮影:映美)

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この2人が並んでいる姿を見ると、男の美しさの多様さを思い知る。

表情に味わいと色気がにじむ草彅剛。すらりと伸びた四肢から、溌剌さと凛々しさを放つ中川大志。まったく異なる空気をまとった2人が初共演を果たすのが、映画『碁盤斬り』だ。

古典落語の演目「柳田格之進」をベースとした本作で、冤罪事件によって娘と引き裂かれた武士・柳田格之進を草彅剛が、気の優しい萬屋の手代・弥吉を中川大志が演じる。

映画で描かれた清廉潔白、謹厳実直な武士の生き様に、令和を生きる2人はどんなことを感じたのだろうか。

この1年、僕の心にはずっと中川くんがいました

――お2人が会うのは映画の撮影以来ですか。

中川 そうですね。撮影以来ですから、1年ぶりくらいですかね。

草彅 中川くんは全然変わらなくて。今日もイケメンでさ、悔しいなと思って。映画の撮影のときもね、なんで中川くんこんなカッコいいのかなと思って。

中川 いやいや(照)。

草彅 俺の闘志が負けないぞと思ってね、それで役づくりできました(笑)。

中川 そんなことはないです(笑)。

草彅 (ポスターを持って)この顔も中川くんを見つめてる顔じゃないかな? 最後の碁盤を斬るところだよ、これ。

中川 そうですね。この写真いいですよね。

草彅 この顔は、中川くんイケメンすぎんじゃないのって、ちょっと怒りを込めての顔です(笑)。

――とおっしゃっていますが、中川さんにとって草彅さんとの共演はどんなものになりましたか。

中川 ずっとご一緒させていただきたい思っていた先輩なので、純粋にうれしかったです。

草彅 本当に?

中川 本当です。完成した作品を通して見る草彅さんの姿と、バラエティ番組で拝見する姿が全然違うじゃないですか。だから、どういうアプローチでお芝居をつくっていくのかを見られるのが楽しみで。

草彅 現場ではカメラの話ばっかりだったけどね。

中川 そうですね。カメラの話ばっかりしていました(笑)。

草彅 音尾(琢真)さんと中川くんがカメラに詳しくて。最近、自分のYouTubeでカメラを買おうという企画が出てて。「どんなのがほしいですか?」ってスタッフさんから聞かれるから、ずっと「音尾さんと中川くんが持ってるやつ」ばっかり言ってて。だから、会うのは久しぶりなんだけど、僕の心にはずっと中川くんがいたわけです。中川くんはこの1年、僕の存在すらなかったと思うけど。

中川 そんなことないですよ(笑)。

草彅 中川くんの持ってたライカがほしくて。毎日中川くんの名前を叫んでたんだけどな。

中川 ちょっと届いていなかったですね(笑)。

(C)2024「碁盤斬り」製作委員会

現場だけでは拾い上げられない機微を映画は繊細に吸い上げてくれる

――映画の話をさせていただくと、何と言っても草彅さんの佇まいがお見事でした。無私というか、最初は表情から何を考えているのかまったく読み取れないんですけど、後半に進むにつれて、どんどん激情が増してきて。

草彅 やったね。狙い通りだね。

――あの佇まいは、なかなかできるものではないと思うのですが。

草彅 台本読んでないからね(笑)。本当だよ? 今、何をやっているのかわからないでやってるから。でもそれがいいんだよね。そもそも台本を読まないんだよ、俺。

中川 そうなんですね。

草彅 あんまり言うと怒られるから言わないんだけど(笑)。だから、格之進が何に対して怒っているのかよくわかんないんだよね。でも、やってると何となくわかるじゃん? そういう戦法なんですよ。

中川 あんまりいろんな邪念を入れずに。

草彅 そうそうそう。現場でやってるとさ、なるほど、この怒りは娘に対してのことなのかとか、そういう感じでわかってくるのよ。今回もそんな感じでした。

――この後、台本ではこういう展開になるから、ここでちょっと伏線を入れておこうみたいなことは。

草彅 そんなに頭が良くないんで、そういうのはわからないんですよ(笑)。

中川 いやいや。

草彅 本当、本当。台本を読んでてもわからないからさ、みんな頭いいなと思う。清原(果耶)さんとか、めちゃめちゃ頭良くて。まあでも僕は僕のスタイルでいいかなって。わかってない方が緊張するから、それがむしろいいっていうか。

中川 その分、その場で起きることを新鮮に受け取れますもんね。

草彅 そんな感じでやってた。お芝居って、人それぞれいろんなパターンがあると思うので、正解というのはないけどさ、はっきり言えることは1人でやることじゃないっていうこと。だから、ちゃんと台詞だけ覚えていけば、あとは相手のお芝居を見ていれば成立するものなんじゃないかなと僕は思っているんだよね。

中川 僕は心配性なので、草彅さんとは逆で、いろいろ準備して武器を持っていかないと怖いタイプなんですよね。

草彅 そうなの? でも、寝てるシーンとかめちゃくちゃ良かったよ。清原さんと2人で、あくびしてるところ。俺、ああいうところ好きでさ、見ちゃうんだよね。すごい眠そうな感じがして。

中川 本当ですか。

草彅 寝てる演技ってめちゃくちゃ難しいじゃん? でも、めっちゃ上手いよね、俺が言うのも何だけどさ。

中川 そんな褒めていただけるなんてうれしいです。

草彅 今度眠いシーンがあったら、ああいう中川くんのグルーヴ感でやろうと思った(笑)。若い方からもらうことってすごく多くて。中川くんも、清原さんも、吸収してるものがすごく多くて、引き出しをたくさん持ってる。一緒にやって刺激になったね。

中川 草彅さんのキャリアで、若い世代からもらうものがあると言えることがすごいです。

草彅 いやいや、年齢なんて関係ないからね。

――中川さんも、草彅さんとお芝居をして学びになったことはありましたか。

中川 たくさんありましたね。

草彅 勉強なんかなる?

中川 なりますよ。現場でも、素の草彅さんの自然体で力が入っていない状態から、柳田格之進にスイッチを入れていくプロセスを覗き見していたんですけど、完成したものを見たときに、こういうことをやっていたんだと改めて気づいたというか。現場だけでは拾い上げられない機微を映画は繊細に吸い上げてくれるから、草彅さんが現場でやっていたことが、完成したものを観て、こういうことだったんだって発見できたのがうれしかったですね。

草彅 言葉がいいね。映画は機微を吸い上げてくれるとか、よくそんな言葉出るね。今度、舞台挨拶でちょっと使わせてくれる?

中川 じゃあ、ここでは言ってないことにしてください(笑)。

草彅 機微を吸い上げるなんて言葉、使ったことないよ。ヤバいな。って、こうやってすぐヤバいとか言っちゃう人間だから(笑)。機微という言葉は僕も当たり前に知ってるけど、それがパッと出てくるところが中川くんは素敵だよね。

中川 そこまで褒められると、逆に恥ずかしいです(照)。

草彅 絶対言うわ、初日の舞台挨拶で。絶対入れるから(笑)。

(C)2024「碁盤斬り」製作委員会

僕の俳優としての始まりの場所

――日本で生きる俳優として、こうした作品を演じることに対する特別感や使命感のようなものはありますか。

草彅 確かに言われてみればね。まあ、言われてみればと言ってる時点でないのかもしれないけど(笑)。

――確かに(笑)。

草彅 でもね、後付けみたいになっちゃうけど、今回、何十年かぶりに松竹の撮影所に行ったんですよ。実は僕、若い頃、それこそ今の中川くんよりも若かった頃に、『付き馬屋おえん事件帳』という山本陽子さんが主演の時代劇に出させてもらったことがあって。まだ演技の仕事を本格的にやる前で、言ってみれば俳優としての始まりの場所が時代劇であり、松竹の撮影所なんだよね。そういう原点に帰ってきたという思いがあるからこそ、この作品が僕にとって新しいターニングポイントになればいいなと思うし。古き良き時代の魂を心がけて演じたので、日本人のアイデンティティみたいなものが作品を通じて誰かにつながっていけばいいかな、とは思うかな。……俺、何かいいこと言った?

中川 めちゃくちゃ良かったです(笑)。

――草彅さんのピンと伸びた背筋が時代劇を感じさせました。

草彅 着物を着ると、やっぱり背筋が伸びるよね。それこそ現代劇だと一瞬で終わるのが、時代劇だと着物とカツラを合わせるだけで2時間くらいかかるんですよ。その間に役づくりができていくところはあるかもしれない。撮影初日とかね、刀を差していると腰骨のあたりに当たって痛いんです。でも、体が覚えていくんでしょうね。2日目くらいからどんどん痛くなくなっていく。だから、撮影所に入ると無意識のうちに背筋が正されるというのはあると思う。

中川 それはすごくわかります。撮影所に行くと、ちょっと緊張するんですよね。あの撮影所でしか会えないスタッフの方々がいて、撮影所にしかない独特の文化があって。昔から受け継がれているものがあり、それにみなさん誇りを持っていらっしゃるので、いつもちょっとドキドキします。

草彅 所作もやっぱり現代劇とは違うじゃない? 正座をするにしても、立つにしても、現代の動きではないから、体幹が大事になる。僕は日頃から鍛えている方ではあるけど、やっぱり肉体は重要だよね。

中川 毎日着物を着て過ごしているわけではないので、意識しないとどうしてもそこに違和感が出てくるんですよね。だから、一つ一つの何気ない物の扱い方や、基本的な立ち座りを含めた動きは特に体に馴染ませなきゃなと思っています。

――今や中川さんといえば20代で最も時代劇が似合う俳優との呼び声も高いです。改めてですが、中川さんからも時代劇への思いを聞かせてください。

中川 この映画で思いました、世界のお客さんに観てほしいなって。

草彅 そうだね。海外の人が観ても面白いと思うよ。

中川 現場で監督を見ていると、映画づくりが本当に好きなんだなというのが伝わってくるんです。監督自身が日本の時代劇へのリスペクトを持ってつくっているのが、完成した作品にも出ていて。昔ながらの時代劇の良さもありつつ、新しさもあって。

草彅 元々の話が落語だから、わかりやすいしね。

中川 完成した作品を観たときに、日本映画って素晴らしいなと思ったし、カッコいいなと思いました。日本人の映画づくりの素晴らしさ、仕事の素晴らしさがつまった映画のような気がして、本当に参加できて良かったです。

草彅 というか、中川くんは世界に出ていった方がいいよ。

中川 本当ですか。

草彅 身長もあるし、中川くんなら行ける。海外は早いうちに行った方がいいから。明日行こう!

中川 いや、早いです早いです(笑)。

(C)2024「碁盤斬り」製作委員会

リンゴの皮剥きは、名人級です

――ちなみに、格之進のような清廉潔白、謹厳実直な武士の生き様についてどう思いますか。

草彅 正直、面倒くさいですね(笑)。可愛い娘がいるのにさ、何こだわってんのと思っちゃいましたよ(笑)。

中川 頑固ですよね(笑)。

草彅 頑固だよね。まあ、それを言っちゃ話にならないわけで(笑)。そういう気持ちもありつつ、格之進の美しくて清らかな魂に憧れる気持ちはあったかな。それは、今の僕たちでは到底辿り着けないもので。きっと昔の日本人はみんな持っていたんだと思う。それを、観てくれた人が少しでも感じてくれたらうれしいかな。きっと監督もそういう思いでこの映画を撮ったと思うので。

中川 日本人の生き様というか、美学が描かれた映画ですよね。僕の役も板挟みになって、些細なことが気づいたら取り返しのつかない大きなことになってしまう。そういうところは共感できるんですけど。嫌疑をかけられて、もし自分が間違えていたら腹を切るというところまでいくのは、やっぱり今の僕らの感覚とは全然違う。共感できるところも、全然違うなと思うところも含めて、いろんな思いをめぐらせられる映画だと思います。

――ちなみに、中川さんには清廉潔白、謹厳実直な武士の魂は?

中川 あ、僕、全然ないです。

草彅 ないんだ(笑)。ああいう男らしい要素みたいなのは?

中川 ないですね。

草彅 そっか。カメラばっかりさわってるんだね。

中川 はい。カメラばっかりさわってます(笑)。

――では最後にライトな質問を。格之進は囲碁の名人ですが、お2人のこれだけは負けない名人級なことといえば?

草彅 僕は古着を結構いいやつ持ってます。10代の頃から集めてて。ジーンズだけじゃなく、ヴィンテージ全般が好き。そういうマニアックなところはなかなか負けないと思う。中川くんは?

中川 僕はリンゴの皮剥きです。細く長く丸々1個剥くのは得意です。父親が得意で、教えてもらったんですけど。

草彅 そうなんだ。リンゴ好き?

中川 好きです。

草彅 僕も好きなんだよ。今度あげるね。どこのを買うの?

中川 あ、普通にスーパーで売ってるのを……。

草彅 へー! スーパーとか行くんだ!

中川 普通に行きますよ(笑)。

草彅 なんだかこのリアクション、俺が中川くんのファンみたいじゃん(笑)。

取材・文:横川良明 撮影:映美

<作品情報>
『碁盤斬り』

5月17日(金) 全国公開

(C)2024「碁盤斬り」製作委員会

配給:キノフィルムズ

出演:草彅剛
清原果耶 中川大志 奥野瑛太 音尾琢真 / 市村正親
斎藤工 小泉今日子 / 國村隼

監督:白石和彌
脚本:加藤正人
音楽:阿部海太郎

公式HP:
https://gobangiri-movie.com

STORY

浪人・柳田格之進は身に覚えのない罪をきせられた上に妻も喪い、故郷の彦根藩を追われ、娘のお絹とふたり、江戸の貧乏長屋で暮らしている。しかし、かねてから嗜む囲碁にもその実直な人柄が表れ、嘘偽りない勝負を心掛けている。ある日、旧知の藩士により、悲劇の冤罪事件の真相を知らされた格之進とお絹は、復讐を決意する。お絹は仇討ち決行のために、自らが犠牲になる道を選び……。父と娘の、誇りをかけた闘いが始まる!

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