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【ライブレポート】「原因は自分にある。」は新たな高みへ。彼らが描く『架空のアウトライン』は進化の予兆

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原因は自分にある。ホールツアー『架空のアウトライン』3月31日(日) 埼玉・三郷市文化会館 (撮影:米山三郎)

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夢だったのかもしれない。2024年春、桜の蕾がひらく時期に合わせて幕を開けた、宮城・埼玉・愛知・福岡・大阪の5都市をめぐるホールツアー『架空のアウトライン』で、一夜の夢のようなコンセプチュアルなライブパフォーマンスを魅せつけた『原因は自分にある。(げんじぶ)』。

3月31日、三郷市文化会館でおこなわれた埼玉公演、アンコールなしの潔いステージングは、まだまだ進化の途中にある彼らの底力と、今後も観測者たち(げんじぶファンの呼称)の心を掴んで離さない覚悟に満ちていた。

序盤からトップスピードで観測者の心を連れていく

3月13日に発表されたばかりのコンセプトEP『仮定法のあなたへ』を引っ提げての本ツアー。誰もが期待していた『マルチバース・アドベンチャー』から、げんじぶの輝かしいショーが始まる。

メインモニターには薔薇色を主としたツアーロゴが堂々と浮かびあがり、ステージを這うスモークの合間からげんじぶの7人が登場。ピンクを基調とし、袖元や襟に花やビジューがあしらわれた衣装は、さながら城からやってきた王子様のよう。高校を卒業したばかりの桜木雅哉は金髪になっており、大胆なイメチェン姿にさっそく観測者の歓声が上がる。

発表から2週間ほどしか経っていない『仮定法のあなたへ』オープニングタイトルでもある本曲だが、全力でパフォーマンスするげんじぶに負けないほど、観測者の息もぴったり。一寸の狂いもなくコールできるのは、事前にSNSにアップされた、メンバーたちによるレッスン動画のおかげだろう。

ファンを誰ひとり置いていかないげんじぶのライブ。序盤からトップスピードで観測者たちの心を絡めとったまま、長野凌大の「みなさん、今日は一緒に歌って楽しんでいきましょう!」の掛け声で、次曲『原因は君にもある。』へ。

ステージを交互に照らす白・青のライトに合わせ、客席では無数のペンライトが揺れる。空間に響きわたるクラップ。冒頭から吊り上げられたボルテージはそのままに、小泉光咲の透明なハイトーンボイスと、安定のフォーメーションダンスが融合する。杢代和人の決めゼリフ「明らかに観測者、君たちのせいだ」に酔いしれたと思えば、気づいたときには、虹色に明滅するライトに浮かびあがるげんじぶの7人から、目が離せなくなっている。

大倉空人の「みなさんの声を聞かせてください! せーの!」に煽られて、お馴染みの「ら・らららららら〜♪」の大合唱。重ねられる「そんなもんですか?」の掛け声に置いていかれまいと、観測者もヒートアップしていく。「OK! みなさん最高です、ありがとう!」と太鼓判を捺された勢いのまま、げんじぶの大人気ナンバー『シェイクスピアに学ぶ恋愛定理』へとなだれ込んでいく。

予測不能な、げんじぶとのゼロ距離体験

『シェイクスピアに学ぶ恋愛定理』から『GOD釈迦にHIP-HOP』の流れで、予期せぬ展開が。リーダー・吉澤要人が「埼玉公演、はじまりました! 僕たちと力を合わせて最高の公演をつくりましょう」と優しく呼びかけ、正面のメインモニターにはバラの花びらが咲き誇る。美しさに見惚れている間に、ステージの際まで距離を詰めているメンバーたち。

すでに最大値まで昂らせた観測者たちの心は、大倉の投げキスと「みなさんに会いに来ました!」、そして小泉の「みんなのところに行くよ!」の呼びかけで、さらに想定外の領域まで連れていかれる。暗転していた客席の隅から隅まで眩い光に包まれたところで、気づけば、げんじぶメンバー全員がステージを降り、観測者たちのすぐそばに。

興奮は加速する。不確かな恋の物語について歌い上げていたはずの彼らは、自己紹介曲としても知られる『GOD釈迦にHIP-HOP』を、なんと客席のド真ん中でパフォーマンス。これまでメインステージに釘付けだった観測者たちは、身を180度回転させ、客席中央でニコニコとマイクを握るメンバーに熱い視線を送る。

げんじぶにとっての2023年は、初の全国ホールツアー、そして、ぴあアリーナMMでおこなわれた初のアリーナ公演と、初めて尽くしの一年だった。デビューから約5年、着実に新たな地平へと歩を進めている彼らの背中は、誇らしく頼もしい。少しずつ遠くなっていく彼らに一抹の寂しさを感じていた観測者もいるかもしれないが、そんなファンたちだって、げんじぶは見逃さない。

杢代の「愛してるよ、ばか!」に脳を痺れさせ、大倉の「みんな、声出してくれる?」のお願いに必死で応える観測者たち。楽しそうに目を合わせながら歌う吉澤と小泉がメインモニターに映し出されるや否や、武藤潤の骨太なボーカルにさらなる厚みを感じる。予測不能なげんじぶたちとのゼロ距離体験に、客席からの安定したコール「き・き・きすみー!」にも自然と熱がこもる。

最低限のMCに滲む自信

定番の人気曲で盛り上がった熱を秘めたまま、突如、ステージは暗転。メインモニターに浮かび上がったインタールード映像に呼応するように、ステージ右側のスポットライトが点灯し、登場したのは吉澤だ。

意味深に置かれたデスクが見え、ザアッと一陣の風の音がして、便箋が頼りなく飛んでいく。吉澤はその一枚の紙片を追うように、長い両手足を存分に使ったバレエダンスを艶やかに披露。その背景には「運命以上のあなたと、また会う日まで」の文字が。

メインモニターに浮かんでは消えていく歌詞が儚げな『ダイヤモンドリリー』。幻想的なスモークが漂うなか、ほかのメンバーも一人ずつ姿をあらわす。伸びやかに染みわたる小泉の声。MVを彷彿とさせるリリックムービーを背に、それぞれのメンバーがしっとりと歌い上げるバラード。ペンライトの光の波が、静かに揺蕩う。

もしも、君がいなくなってしまったら……。本ホールツアー『仮定法のあなたへ』のコンセプトを裏切らないラインナップに、観測者の心はとらわれたままだ。

ここから『キミヲナクシテ』『貴方に溺れて、僕は潤んで。』『美しい人』『In the Nude』と、序盤のアップテンポなシーンから一転、じっくりと聴かせるセットリストに否応なく引き込まれていく。少しずつ立ち位置を変えながらクルクルと歌い踊る彼らは、視線を一ヶ所に留めておくことを許さない。全体を通してMCの少ないライブ構成にも、彼らの自信が滲む。

明滅する光が、鼓動にリンクする地響きのようなスネアが、観測者の視覚と聴覚をジャックする。ステージ真上から降ろされたストリングカーテンが予感になびいて揺れ、赤く妖艶な世界で武藤と長野が高らかに歌い上げた『貴方に溺れて、僕は潤んで。』は、そのまま『美しい人』へ。

ストリングカーテンの裏に用意されていたのは、一人ひとりのメンバーに設えられたヴィンテージ風チェア。ライトアップされ、キラリと銀色に輝くチェアに座った状態で繰り広げられる妖艶なパフォーマンスに、いとも簡単に目が奪われる。曲調に合わせ、暗転したかと思えば白や紫に染め上げられる舞台。独特な指を鳴らす振り付けも相まって、これまでにない大人なムードを漂わせるげんじぶの姿に、歓声とはまた趣のちがうため息が混じる。

流れるように『In the Nude』へ、途端にステージ上は架空のダンスホールに変貌。首筋を撫でる大倉に場が沸き、一瞬のスポットライトが小泉を強く照らしあげる。ダンサブルなナンバーは怒涛の勢いで観測者を飽きさせない。成熟に近づいた彼らのセクシーさを目の当たりにしたと思いきや、『推論的に宇宙人』から『チョコループ』へとポップな世界観に導かれる。

サビの「宇宙中中中(宙!)」のコールや通称「ニナニナダンス」など、この日初めて『推論的に宇宙人』の生パフォーマンスを体感する観測者も多かったはずだが、そうとは思えないほど呼吸が合っている。吉澤が長野と肩を組んだかと思えば、次は杢代が吉澤に絡みに行き……と、いくら目があっても足りない。

序盤の『GOD釈迦にHIP-HOP』で前代未聞のゼロ距離を果たした彼らだが、まだまだ油断はさせない。左右に伸びた花道に繰り出した彼らは、一階席も二階席も分け隔てなくファンサービスを送る。

客席の奥まで覗き込む武藤、桜木の頬に顔を寄せる杢代、じわじわと小泉に身を寄せる長野。互いに目配せし合いながら、全力の笑顔でパフォーマンスするげんじぶたち。メンバー、そして観測者の一体感あるサビのダンスが会場を満たす。最後はメンバー全員でつくったハートマークで、観測者全員への愛を表現した。

汗に濡れた長野の前髪を、桜木が……

ステージも中盤、メンバーそれぞれの自己紹介を兼ねたMCタイムへ。一人ひとりが名前を告げるたびに観測者が応えるお決まりの応酬に、げんじぶのライブらしいアットホーム感が醸される。

「ちょっと長めのMCをやりますので、みなさん座ってください!」と観測者にこころ配りをした大倉から「あらためまして、コンセプトEP『仮定法のあなたへ』を引っ提げたホールツアー『架空のアウトライン』埼玉公演です! お越しいただきありがとうございます」と感謝の言葉が。

「いまのところですね、全11曲かな? コール&レスポンスできる曲がありましたが、声出してくれましたか?」と客席へ呼びかけるも、即座に「聞かなくても聞こえてます!」と少々ズレた発言を続け、メンバーから突っ込まれる場面も。

やはり、サビのコール&レスポンスに一体感が生まれる『推論的に宇宙人』はメンバーにとっても思い入れのある一曲のよう。なかでもサビの「宇宙中中中(宙!)」を担当する桜木からは「僕が歌ってますけど、(みんな歌ってくれるから)歌わなくてもいいのかな? って」とチャーミングな一言が。続けて武藤の「(コール&レスポンスは)これから練習できる動画もあると思いますので、みなさん見てください!」という促しに、さすがの最年長らしさを感じる。

本ツアーが『仮定法のあなたへ』のコンセプトにちなみ「もしも〇〇だったら……」というストーリー仕立てになっている旨を説明する長野に、客席からどよめきが。メインモニターに映し出された長野の前髪が濡れる汗で反射し、そのあまりの美しさに我慢ならず声を上げた観測者が多数いたのだ。

「僕の髪はどうでもいいんですよ! 今回のライブは、一つのストーリーを見ているような感覚で楽しんでもらえたらと思っています」と懸命に続ける長野だが、見かねた桜木が身を寄せて彼の髪を直すと、必死に抑えていたであろう観測者の嬌声が爆発した。

ここまで、自ら声を発することが少なかった吉澤に向け、大倉が「要人さん、お声を聞かせてください!」と振ると、「今日、元気っすよね、観測者のみなさん! みんな元気もりもりで」と要人節で応答。ここで言うことじゃないんだけど、重要なことを思い出して……と前置きし、「犬を飼ってるんですけど、3歳になりました!」と愛犬のルー(ルーチェ)が誕生日を迎えたことを報告した。

その流れに任せ、吉澤が「ルー、ルー」と愛犬に呼びかけるように声を出すと、武藤が鳴き真似で応える小芝居が。長野が「ルーじゃなくて潤や!」と突っ込むと、武藤はなんとも絶妙な真顔でメインモニターを凝視する。杢代が「笑いをとったあとに、よくその顔できるよね」と締めるところまで、げんじぶらしい阿吽の呼吸が感じとれた。

ホールツアー真っ最中の彼らだが、2024年11月17日にぴあアリーナMMで開催されるアリーナ公演『白昼夢の招待』が決まっている。埼玉公演の当日が申し込み締切であることを流麗に伝えた大倉が、長野が出演するドラマ『シークレット同盟』(読売テレビ)、そして小泉が出演する『ラーメンD 松平國光』(CS日テレプラス)の告知も。後者はちょうど埼玉公演の当日が放送日であったことから、大倉が「このライブが終わって20分で帰れる人はリアタイできます!」と言うと、小泉も「どっかに帰ってもらって、観られる方は観てください」と続けて笑いを誘った。

MCの最後は、メンバーと観測者が息を合わせて『推論的に宇宙人』のコールを練習。実際の歌割りに沿って、観測者が声を入れるタイミングをメンバー自らがレクチャーする。

「うわめっちゃ盛ってるパクチー!(パクチー!?)」から「もっとわからない!」まで練習すると、大倉から杢代へ「ちゃんとレコーディング通りにやって?」とダメ出しが。杢代の言い分としては「レコーディング通りにやるとIKKOさんみたいになっちゃうんだもん!」とのことだったが、2度目の練習ではしっかり指の振りをつけて「指どうなってんの? 音ゲー(音ゲー!)」とやり切った杢代。大倉は満足げに「和人、いいねえ〜!」と喜んだ。

メンバーそれぞれの色が出たMCコーナーが、いわば本ライブの前章と後章の区分けを担う。桜木の「そろそろ僕たちのパフォーマンスが観たくなってきたころじゃないですか? ご起立ください!」の掛け声を受けて立ち上がった観測者たちのエネルギーは、まだまだ発散の余地を残していた。

ストーリーテラーから贈られる1000年後の物語

『架空のアウトライン』後章は、桜木のボーカルと打鍵音が印象的な『545』からスタート。ピアノサウンドに合わせた優雅なダンス、その合間に杢代と小泉が肩を組み合えば、長野と大倉の伸びやかな声が混じり合う。武藤から桜木、そして小泉へと、まるでバトンが渡されるように繋がっていく歌声は、ピアノアレンジされた『ラベンダー』へと帰着する。

地から天へと光の粒が浮かび上がるメインモニターの映像は、愛にはなれず星に変わった無念の恋を象徴しているのだろうか。情感を込めてしっとりと歌い上げる桜木と杢代の思いを受け取るように、長野と武藤が担うサビが会場に轟く。

少しずつスモークが這い、スポットライトがメンバーを照らす幻想的な舞台は、ピアノの一音を余韻に残したまま、見守る観測者たちの期待をくすぐる。

『545』から『ラベンダー』と、げんじぶの表現の幅を示唆するバラードナンバーで身を揺らしていた観測者。すると、メインモニターに一冊の本が映し出され、眩い光とともに一枚ずつペラリ、ペラリとページが捲られていく。そこには、げんじぶ一人ひとりの写真が。

次の瞬間に登場したのは、城の王子然とした高貴な衣装から一転、白と黒のモノトーンに変化したメンバーたち。それぞれ対極に位置する色をまといながら一人ずつ再登場し、煌々たる光をバックに圧巻のDANCETRACKを見せつける。白と黒、身につけられた反対色は何を意味するのか。過去か未来か、善か悪か、それとも、喜劇か悲劇か?

考える暇も与えぬまま、舞台の真上から降りる白い垂れ幕が荒野を彷彿とさせる『ケイカクドヲリ』のパフォーマンスへ。嵐にも似た風が吹きすさぶなかでも、一糸乱れぬフォーメーションダンスに五感もろとも持っていかれる。

勢いを緩めぬままに『Museum:0』へと突入したステージ上はもはや異空間で、見慣れたはずの時計の針を模したようなラインダンスも、非現実的に映る。

加速。疾走。このまま我々はどこへ行くのか。行き先もわからないまま、メンバー全員の「Welcome Back! Museum: Zero」の声が響いた次の瞬間には、天井から歯車や時計、本、額縁のモチーフが吊り下げられており、意図せず架空の美術館へ迷い込んでいたことがわかる。

本を手にしたメンバーたちが、一人ひとり確立したストーリーテラーとして、架空の未来を紐解いていく。

「もしも1000年後の世界で、あなたの歌が見つかったら」
「古ぼけた道を歩いていた」
「片思いの残骸を歩いていた」
「気の迷いをコンパスに変えて」
「返事がしないんだ」
「1000年後の未来も響いている」
「誰も知らない歌を歌おう」

恋や愛が消えてしまった1000年後に思いを馳せる『誰も知らない歌』で、メンバー全員と観測者の声が融合していく。無数の光の粒に誘われて、気づいたら「ら・ららら・ら〜♪」のシンガロングに心ゆくまで身を委ねている。

デビュー後まもなくコロナ禍の影響を受けたげんじぶのライブでは、世相に合わせ、長らく観客の声出しが制限されていた。客席に呼びかけても返事がない時期が長かった彼らにとって、コール&レスポンスや、その場一体となっての大合唱は、決して当たり前の景色ではない。

「もしもの世界」をコンセプチュアルにまとめ上げた物語も、終幕が近いことを悟る。終わらないでほしい。ずっとこの時間が続いてほしい。観測者たちの願いを背負った彼らの姿は、伸びゆく音像に包まれて一瞬だけ暗転する。

げんじぶが魅せた一夜の夢

明転した舞台は、速度と勢いはそのままにメドレーへ突入。杢代の「観測者のみなさんと、もっともっと盛り上がっていきたいです! あなたの声をもっともっと聞かせてください!」のお願いに応える形で始まった『夢に唄えば』から、吉澤の「まだまだ声出せますよね! その調子だよ!」の掛け声で『嗜好に関する世論調査』へ。

もはや身に染み付いている「二択! 二択!」コールが会場中に鳴り渡る。ふたたびメンバー全員が客席へ降りてくると、あまりにも近い距離と目線に、観測者たちは悲鳴にも似た声を上げる。

肩を組み合いながら歌う桜木・杢代がメインモニターに映し出され、ファンサービスまみれの『ギミギミラブ』が流れると、小泉の「僕はどこにいるでしょうか?」の問いかけが。なんと二階席に出現した小泉の姿に観測者たちのテンションは上限を突破。続けて大倉も二階席に顔を出し「クラップして一緒に盛り上がっていきましょう!」とニコニコの笑顔で煽る。

怒涛のメドレーはライブの結末に向けてまっすぐに迸る。客席の間を練り歩きながら、武藤が「最高だよ! また、げんじぶに会いに来てくれ。俺たちはそんな存在でいたい。グッドラック!」と自身の言葉で思いをぶつける。

セットリストは『ネバーエンドロール』から『桜Ground』、そして『THE EMPATHY』へ。一階も二階も関係なくメンバーがあらわれることがわかった今、どんな瞬間も油断はできない。メインモニターには、画面いっぱいに投げキス&連続ハートのファンサを繰り出す大倉のアップが映し出される。

武藤・小泉のタフなボーカルに、長野の軽快なラップが重なる『THE EMPATHY』で、メインステージ側に戻っていくメンバーたち。クラップで団結力を増した会場は、ともに手を振り上げるメンバーと観測者の熱気で満たされていた。吉澤の「みなさんの声を聞かせてください! もっと!」でさらに温度を高めていく。長野の「僕たちとあなたなら、きっと見つけられるはず。今日という一日、最高の一日を」の誠実な声が届く。

序盤から緩急をつけつつ、しかし確かな勢いのままで、彼らのセルフタイトル『原因は自分にある。』のイントロに飲まれる。安定した武藤のボーカルには、どれだけ時が経っても、どれだけ大きく高い存在になっても、原点はここにあると示してくれるような安心感がある。

きらめくピンスポット、細部まで見落とせないダンス、ステージからもメインモニターからも目を離す猶予はなく、歌声に震える鼓膜。やがて鐘の音が聞こえ、歯車を巻き戻す調べが場を支配する。時間がきたのだ。ドン、ドンドンドン、とリズミカルに地の底を叩くようなイントロは『灼けゆく青』。げんじぶらしい哲学的なポエトリーが、メインモニターに浮上しては溶けていく。

「ら・らら・らら・らら」と声を重ね合ったメンバーたちは、やがてスモークに包まれ、覆い隠された。気づいたらもう舞台上に彼らの姿はなく、7人分のスポットライトが無人の夢の跡を照らすばかりだった。

動から静、またもや動へと押し上げられるようなエンターテイメントの余韻は冷めやらない。アンコールなしのステージは、そのまま本ツアータイトル『架空のアウトライン』を体現しているかのようだった。一夜限りの夢の続きは、次にいつみられるのだろう。

11月にはアリーナ公演が控えている。さらなる進化の途中であることを仄めかした『原因は自分にある。』は、これからどんな高みを目指していくのだろうか。

取材・文:北村有 撮影:米山三郎

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