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ナタリードラマ倶楽部 2024年春クールを語り尽くす(前編)

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左から綿貫大介、明日菜子。ポーズは、朝ドラ「虎に翼」の主人公・猪爪寅子の口癖である「はて?」をイメージしたもの。

放送・配信中のドラマについて語りまくる連載「ナタリードラマ倶楽部」。Vol. 5となる2024年春クールの前編は、本連載でおなじみのドラマウォッチャー・明日菜子と綿貫大介の座談会をセッティングした。

前編は、4月9日までに放送を開始したドラマが対象。どんな人の生き方も肯定する「虎に翼」や、まさかの“ムーミンママ”と通じる「おいハンサム!!2」の優しいセリフ、“トンチキドラマ愛好家”明日菜子が真剣に語る「ACMA:GAME アクマゲーム」の魅力など、ドラマ愛あふれる2人のトークをお届けする。

取材・文 / 脇菜々香・尾崎南 題字イラスト / トモマツユキ

「虎に翼」があれば生きていけるってレベルで面白い

──春ドラマが始まりました。前編では4月9日までにスタートしたドラマを扱いますが、今一番話したい作品はなんでしょうか?

明日菜子 これはもう「いっせーのーで」でも合うんじゃないですか!?

綿貫大介 そうですね! “春ドラマ”って言っていいのか悩ましいけど、朝ドラ「虎に翼」は語りたい。最初、吉田恵里香さんが朝ドラの脚本を書くの?ってびっくりしたんですけど。

明日菜子 わかります。朝ドラみたいな長編作品ではどうなるのか未知数でしたよね。ただ始まってみると、たとえこの半年ほかのドラマがイマイチでも、「虎に翼」があれば生きていけるね……と思えるレベルで面白いんですよ!

綿貫 そう、めっちゃ面白い。吉田さんはドラマ「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい(チェリまほ)」のあと、夜ドラ「恋せぬふたり」、単発ドラマ「生理のおじさんとその娘」などを手がけている方。今回の朝ドラは、今SNSで盛り上がるような内容をしっかりキャッチしている。時代も追い付いてきているし、テーマも役者もいい、となると条件がそろいすぎていて心配だった。……けど全然大丈夫でした!(笑) 「初めてフェミニズムにしっかり向き合ってる」といった意見には「いや、これまでも朝ドラはずっとやってきてくれているよ!」とは思うけど、とにかく「虎に翼」はめちゃめちゃいい作品ですね。

明日菜子 女性の権利問題に真正面から向き合った本作には、歴代の朝ドラヒロインたちがつないできたバトンを感じますよね。実は私がリアルタイムで朝ドラを観始めたのは「まんぷく」からなんですが、1話の時点で「あ、すっごく好きかも」と思ったのは「虎に翼」が初めてかもしれません。

綿貫 1話でこう思えるってすごいこと。立て続けにお見合いをする初回から、(伊藤沙莉扮する)主人公・猪爪寅子は口癖である「はて?」の連続でしたよね。尾野真千子さんが語りを担当しているのも朝ドラ好きにとってはうれしいし、「カーネーション」のときに尾野さん演じるヒロインのお父さん役だった小林薫さんが法学者役で出演してるのもエモい。名優たちを使っているだけじゃなくて、セリフもうますぎる!

明日菜子 社会派ドラマなのに、朝から観たいと思えるキャッチーさがありますよね。

綿貫 1週ずついろんな裁判の判例でテーマを作れるから、間延びするようなエピソードを無理に入れなくても一代記を作れるし、その分強いメッセージを毎週届けられる。

──キャラクターも、それぞれがいろんな立場の誰かを代弁してくれている印象です。

明日菜子 最近は多様性がテーマの作品が多いじゃないですか。でも多様性って、ただマイノリティの人生にフォーカスすることじゃなくて、どんな人の生き方も肯定することだと思うんです。「虎に翼」では主人公の寅子が開拓者になっていくけど、彼女だけじゃなくて、花江ちゃん(森田望智扮する、寅子の親友であり義姉)とかはるさん(石田ゆり子演じる、寅子の母)とか、いろんな女性の生き方を肯定しているところがいいなと思いました。第15話で、花江ちゃんが明律大学女子部のメンバーに対して「皆さんの話を聞いていると、あ、私はこの輪に入れないって思うの。私は皆さんの言う“戦わない女側”なんだなって」と言ってたけど、花江ちゃんだって戦う女の一人なんですよ。

綿貫 その(法廷劇で扱う事件を再現するための)まんじゅう作りの回を観て、本当に誰も取りこぼさずに描こうとしているんだなと思いました。女子部のそれぞれの事情にもさらに踏み込んでいくと思うんですけど、そうなると(ハ・ヨンス演じる朝鮮半島からの留学生・)崔香淑が一番気になる。今後戦争が始まっていく中で、朝鮮人であることにのしかかる重みがどこまで描かれるんだろうと思うし、それをちゃんとやろうとしてるんじゃないかと期待しています。

明日菜子 「虎に翼」はすごく斬新な朝ドラだ、みたいな感想も多く見かけるんですけど、あえて新しいことをしようとしているのではなく、吉田さんが作品を通して訴え続けてきたことが反映されているように感じます。例えば、生理の描写も「生理のおじさんとその娘」を手がけた吉田さんらしい気付き。女子部のみんなが花江ちゃんを女中さんと間違えるシーンの“マイノリティ側(女子部)の人間だって誰かを傷付ける”という描写は、「恋せぬふたり」で恋愛至上主義社会において生きづらさを抱えていたアロマンティック・アセクシャルの主人公が、レズビアンの友達を傷付けてしまう場面を思い出しました。

綿貫 吉田さんは、「チェリまほ」を経た「恋せぬふたり」から、そういったものを背負い始めたんじゃないかな? ジェンダーとかセクシュアリティのことをすごく勉強されたんだろうなと。自ら学んだ人は本当に信頼できる。今のSNSの感じだと、男性の悪いところが描かれることに対して「実際にあるよね」っていう共感や、そこに女性キャラがガッと前に出ることによってスカッとする、みたいな盛り上がり方が強いと思うんですけど、ちゃんと男性のいろんな面も見せて、“男対女”みたいな構図にさせないような作りにしていく気がします。

明日菜子 私は、寅子の兄・直道と花江ちゃん夫婦の存在が効いてるなと思っています。全体的に重めなテーマを緩和させているし、とにかくお二人とも演技がすごくうまい。(直道役の)上川周作さんも森田さんもすでに朝ドラには出ていましたけど、さらに知名度が上がる当たり役ですよね。義母(はる)との関係に悩む花江ちゃんに、直道が味方だと伝えるシーンはよかったなあ。

綿貫 ここから、松山ケンイチさん演じる裁判官の桂場等一郎がどういう役として寅子の前に立ちはだかるのか。ボス的な感じで出てきそうじゃないですか?

明日菜子 今のところ“団子を食べてる人”ですもんね(笑)。第4週から出てきた(岩田剛典扮する)花岡悟にも大注目! こういう男性像、意外となかったですよね。表向きは優等生だけど、裏では女性のことを見下しているっていう。

綿貫 正直、超リアルだと思うんですよ。寅子と花岡は恋愛関係になるのかな?って勝手に想像してたけど「え、この人で大丈夫?」と(笑)。でもそのあとすぐに“いい人”になってしまったのは、逆に物足りなかったですね。もっとねちっこい感じが見たかった(笑)。

明日菜子 あとは、米津玄師さんの主題歌が最高! 脚本は最後までできあがっていないはずなのに、なんでこんな歌が書けるんだろう……? 私が毎月課金をしているNHKオンデマンドにはオープニングをスキップできる機能もあるけど、毎話飛ばさずに聴いています。

綿貫 最初は、女性アーティストに頼むのかと思ってたから少し意外でした。でもオープニングを飛ばしたくないのは共感。

明日菜子 アニメーションの映像も最高です。いつも泣いちゃいます。

綿貫 最後、女性たちが後ろに並んでるところね! 今後もどんなキャラクターが出てくるのか楽しみですね。

おいハンサム!!2」3話の「おなかいっぱいになりましたか?」に涙

──「虎に翼」トークが尽きませんが、お二人とも「おいハンサム!!2」もお好きとのことで。

綿貫 “続編やってくれてありがとう”すぎます。でも実は、そこまで世間の評価が高いとは知らなかったんですよ。

明日菜子 深夜ドラマでしたからね。ドラマ好きの中でも、なかなかマニアックな作品だったと思います。

綿貫 前作は同じ年に「エルピス ―希望、あるいは災い―」など良作が多かったんですが、「2022年のベストドラマ」を聞かれたときは、「おいハンサム!!」を「エルピス」とともに挙げていました。それぐらい超面白いと思ってたし、続編ができるってことはやっぱりみんな大好きなんだと知りました。

明日菜子 セカンドシーズンの初回ゲストが藤原竜也さんだったので、その人気っぷりを実感しました! リアルタイム視聴時は(藤原の)そっくりさんかなと思って二度見しましたが(笑)。

綿貫 脚本・演出の山口雅俊さんがドラマ「新しい王様」で組んだ藤原竜也さんに、吉田鋼太郎さんを紹介されたそうです。吉田さんが「おいハンサム!!」で主人公のお父さん役に起用された経緯に絡んでいる藤原さんが、続編の第1話に友情出演するのはいい流れだなと思いました。

明日菜子 「おいハンサム!!」には、「どこが好きなの?」と聞かれても言語化しづらい魅力がある。登場人物たちのシチュエーションがあるようでなくて、ないようである、カオスな場面ばかりなんですけど、その中で「ああ、その気持ちわかる!」と自分が共感していることに気付いたときから、どんどんハマっちゃうんですよね。特に3話がよかった!

綿貫 私も、3話はちょっと泣きそうになりました。

明日菜子 木南晴夏さん扮する長女・由香はいわゆる不倫体質で、ごはんも恋愛もおいしいものをちょこちょこ食べるほうが向いているのかも……と思っていたタイプなんですね。そこに“アイスクリーム3段積み”“チャーシューメンの麺大盛りトッピング全部乗せ”と例えたくなるような年下男性が現れて、大衆居酒屋で大盛りの焼きそばをシェアするんです。由香はすっかり小食になっていたんですが、「もっと食べてください」とお構いなしに勧められるから、久しぶりにたくさん食べるんですよ。そのあと彼から「おなかいっぱいになりましたか?」と聞かれて、おなかいっぱいなことが実はすごく幸せだということを思い出すんです。ごはんの満腹感と、彼女の恋愛観が交わった瞬間に私も心打たれました。

綿貫 木南さんが泣きそうになる姿を見て、これはいろんな人の原体験かも、と思い出しました。ムーミンママもそういう人なんですよ。

明日菜子 急にムーミン!?

綿貫 「楽しいムーミン一家」をひたすら観てた時期があるんですけど、ムーミンママってどんなバケモノや嫌なやつが来ても、とりあえず温かいスープを出して、その人のおなかと心を満たすんですね。“誰かをおなかいっぱいにさせる”ことが、“愛情深さ”と直結して「これは泣いてしまう言葉のひとつだ」と思ったんです。アンパンマンの精神とも似ていると思うんですけど「おなかいっぱいになった?」という言葉は、生きることを肯定してくれている気がする。

明日菜子 まさにあのあと、MEGUMIさん扮する母が子供の頃の由香に「おなかいっぱいになった?」と聞くシーンがありましたね。あれはムーミンママだったのか……!

──6月には映画「おいハンサム!!」の公開も決まっています。

綿貫 絶対に映画化しないといけない(物語上の)理由はないけど、両方観られることが本当にありがたい。多分、映画だからってこの家族がニューヨークに行くとかは絶対なさそうじゃないですか。

明日菜子 でも行ってほしいかもしれない!(笑)

綿貫 ……確かに、それはそれで行ってほしいか! 「サザエさん」もスペシャルでちょこちょこ家族旅行に行くから、そのスケールが合うのかもしれない。あとこのドラマがなぜ居心地がいいのか考えてたんですけど、お父さんがそこまで有害な男性性を持っていないということが大きな理由かなと思ったんですよ。

明日菜子 昭和気質なお父さんなのに、確かにそうですね。

綿貫 “昭和の頑固親父”という触れ込みだったから最初は「ん?」と思ったんですけど、部下に対しての接し方もうまいし、家族会議もみんな楽しげだし、この主人公が“ハンサムとは”を体現している。「ハンサムっておおらかに生きてる人のことなのか」と。

──お父さんがかっこいいことを言って、それを娘たちが「何言ってんの、ハンサムで」といじるくだりもあります。

明日菜子 お父さんはその日の振り返りを“伊藤家リモート会議”で発表するんですけど、学んだことを柔軟に受け止められる様子が、アップデート物語としての気負いがなくて見やすいし、日常の気付きもくれる。原作は伊藤理佐さんのマンガで、ベースになった「おいピータン!!」は1990年代後半に連載が始まった作品なんですね。いろんな作品を引用しているのに、構成が抜群にうまい。マンガを読んだら、「これがああなるのか!」と驚きます。

「VRおじさんの初恋」脚本・森野マッシュへの期待

綿貫 夜ドラの「VRおじさんの初恋」は、最初そこまで前のめりで観てなかったんです。バーチャル空間で少女の姿になったおじさん(野間口徹演じる主人公・遠藤直樹)が、相手の少女にキュンキュンしてる感じが、どうなんだろうと思ってたんですけど、12話からの展開で「ちょっと待って!?」と。相手の少女の正体もおじさん(坂東彌十郎扮する芦原穂波)だとわかって、めちゃめちゃ面白いことをやろうとしてる!と一気にテンションも注目度も上がりました。

明日菜子 今のところ、画のほとんどがおじさんです(笑)。

綿貫 脚本は森野マッシュさんが書いているんですけど、まずこの方が手がけた「ケの日のケケケ」がよすぎて!(※編集部注:第27回創作テレビドラマ大賞の受賞作。感覚過敏の高校生を描く単発ドラマとして、3月26日にNHK総合ほかで放送された。4分30秒長い特別版が5月3日にオンエアされる)

明日菜子 私も観たときに、すごい人が現れたなと思いました! まだ2024年が始まって間もないけど、「ケの日のケケケ」は年間ベストに入るかもしれない。

綿貫 まだあまり知られてない感覚過敏という特性を広く知らせる意味でもいいし、現代の学園ものとして、當真あみさん、奥平大兼さん、小宮山莉渚さん、望月歩さん、中井友望さんといったメンバーもいいじゃないですか。お母さん役は尾野真千子さんですしね!

明日菜子 単発とは思えない豪華キャストでした。そのあとすぐに始まったのが、暴力とも子さんのマンガが原作の「VRおじさんの初恋」です。ちなみにVRでかわいい少女の格好をしているおじさんのことを、「“バ”ーチャル世界で“美”少女の姿を受“肉”する」から“バ美肉おじさん”って言うらしくて、現代ならではの物語ですよね。

綿貫 美少女の正体が互いにわかった第2章的な展開から見逃せなくなっちゃってるんですけど、そうなると現実世界の登場人物や出来事も気になりだした。ドラマはバーチャルの世界をメインに展開しているけど、直樹が堀内敬子さん演じる佐々木瞳たちと会社で働く現実パートを観て、視聴者として「うちらが生きなきゃいけないのはこっちだよね」とはっとする。

明日菜子 現実パートのストーリーも濃いですからね。あと、おじさんとおじさんの物語って珍しくないですか? シスターフッドものは流行っていますけど、立場も年齢も職業も違うおじさんとおじさんの物語って、ぱっと思いつくのは「サ道」くらい。

綿貫 大企業ものでホモソーシャルを描く作品とかになってしまいますもんね。今はまだ、主人公は複雑な気持ちを抱えているんですけど、ここから友情が物語の軸になっていったらけっこう感動しちゃうかも。

明日菜子 ただ、(穂波のバーチャル世界での姿である)井桁弘恵さんの後ろに彌十郎さんが見える(笑)。

綿貫 面白いですよね。現実世界の正体がわかったことで、急にそう見えるようになるから。結末が想像できないから気になる!

「RoOT / ルート」河合優実・坂東龍汰の会話がシームレスなわけ

明日菜子 アニメの「オッドタクシー」にめちゃくちゃハマってました。「RoOT / ルート」は、世界観は同じだけど視点の違う話なんですよね。

綿貫 キャストが発表されたときに「絶対観よう」と決めて、そこからアニメと映画も全部観たんですよ。「RoOT / ルート」は何も知らなくてもドラマとして観られるけど、アニメのストーリーや人物像を知らないと、もったいないなとは思いました。実写の登場人物をアニメ版のキャラクターイメージと照らし合わせて観るから面白いんだろうなって。

明日菜子 アニメはキャラクターが全員動物なんですよね。見た目はかわいいのに人間っぽい掛け合いがひとつの特徴になってる。

綿貫 アニメのキャラを意識してキャスティングしたんだろうな。あと、とにかく主演の2人、河合優実さんと坂東龍汰さんは同じ事務所で仲がいいみたいで、自然体なのがいい。会話とかがシームレスなんだけど、その関係性だからできる部分はあるんだろうな。

明日菜子 河合さんは仕事選びがすごくうまい! まさに旬の2人ですよね。

「季節のない街」が持つメッセージ性・キャッチーさ・皮肉っぽさ

──最近は配信プラットフォームで製作されたドラマが地上波で放送されるケースも出てきました。DMM TVの「ケンシロウによろしく」に続き、今期は宮藤官九郎さんが企画・脚本・監督を担った「季節のない街」がディズニープラスから地上波に来ました。

綿貫明日菜子 ありがたい……。

明日菜子 たびたび震災について言及してきたクドカン作品の真骨頂だと思うんですが、実は原作があるんですよね。

綿貫 山本周五郎の小説「季節のない街」ですね。

──黒澤明によって「どですかでん」として映画化もされています。

綿貫 昔の原作を現代にどう生まれ変わらせるかってすごく難しいと思うんです。これは成功した映像化だと思う。今の時代に合うメッセージ性があるし、キャッチーさもある。そして辛気臭すぎない。

明日菜子 ちょっと皮肉っぽさもありますよね。

綿貫 藤井隆さんとMEGUMIさんを出してくれるのもありがたい(笑)。

──お二人は、このコラムのVol. 1でテレビドラマに関して「(民放であれば)無料で享受できる受動的なメディアであるという部分で意義を感じている」とおっしゃっていましたが、配信から来た作品が地上波で放送されることについてはどう思いますか?

明日菜子 私の場合、観ていない配信作品でも情報は一応知ってるんですが、SNSを見ると、テレビで流すことによって初めてその存在を知る人もいるんだなと実感します。

綿貫 金曜ロードショーでも、映画を観ていなかった人がそのタイミングで盛り上がることがありますよね。やっぱりプラットフォームとしてテレビの強さがあるんだと思います。

「95」中川大志は1990年代の“りぼん”作画

綿貫 「95」はまだ展開がわからない!

明日菜子 3話でガラッと雰囲気変わりましたよね。主演の高橋海人さんをはじめ、キャストがめちゃくちゃ豪華ですよね。

綿貫 1990年代っぽさがちゃんとあるメンバーだと思います。

明日菜子 中川大志さんがマンガ雑誌・りぼんの1990年代っぽい作画で最高! 松本穂香さんにも江口寿史作画っぽい雰囲気を感じます。

綿貫 少女マンガ作画、なるほどなあ。この時代の東京・渋谷に憧れがあるから、「こんな感じなのか」って観られるのはうれしい。劇中の雑誌は、妻夫木聡さんとかが出てた「東京ストリートニュース!」がモチーフになってるのかなと思うんですけど、1995年ってiモードとかもない時期だから、この雑誌に出てる人は超スターだったんだと思う。そう考えて登場人物たちを見ると面白いですよね。

※高橋海人の高は、はしごだかが正式表記

「からかい上手の高木さん」月島琉衣・黒川想矢への信頼が素晴らしい

明日菜子 ほかにいいなと思っているドラマは「からかい上手の高木さん」です。(5月31日に公開される)映画では永野芽郁さんと高橋文哉さんがメインキャストなのですが、ドラマ版では中学生の高木さんと西片の姿が描かれていて、彼らを演じるお二人(月島琉衣と黒川想矢)がすごくうまい! 内容としては、タイトルのごとく高木さんがクラスメイトの西片をからかって30分が終わるんですけど、ずっと観ていられる。都会で働く大人にはない要素がすべてここに詰まっています……。

綿貫 そこはすごくわかります。からかいが恋愛に回収されていいのかどうかは悩ましいけど、この2人が小豆島で健やかに育つのを映すだけで成立してますよね。

明日菜子 これは映画「カラオケ行こ!」でも感じましたが、大人が学生役を演じることも多い中、実際にその年代の子たちだけで作品を作り上げるという若手俳優への信頼と、製作陣の決断力が素晴らしいと思います。

綿貫 月島さんはポカリスエット(のCM)が見えますよね。

明日菜子 そう! まさに“ポカリスエットドラマ”です!!

「ACMA:GAME」は“「ロード・オブ・ザ・リング」のめっちゃ指輪多い版”

明日菜子 ドラマウォッチャーというより、“トンチキドラマ愛好家”として見逃せない1作、「ACMA:GAME アクマゲーム」についても話させてください! 「ロード・オブ・ザ・リング」という映画があるんですが、あれは強力な魔力を持った指輪をめぐって争いが起こるストーリーなんですね。「ACMA:GAME アクマゲーム」も立て付けが同じで、全部集めるとこの世のすべてを手に入れられる “悪魔の鍵”をめぐる話なんです。でも全然違うところは、「ロード・オブ・ザ・リング」は指輪1個なのに対して、「ACMA:GAME アクマゲーム」は鍵を99本集めないといけないんです……!

──しかも世界中からです。

明日菜子 大変なんです! こうなると、鍵の保管方法が気になりませんか? 肌身離さず持ってないと盗まれる可能性があるし、鍵もけっこう大きいから99本なんてどうするんだろうと思って。途中で何本か無くすんじゃないかとか、間宮祥太朗さん(演じる主人公の織田照朝)が途中まで集めた鍵を溶接して大きい鍵にするのかなと気になって仕方ない。私は“「ロード・オブ・ザ・リング」のめっちゃ指輪多い版”として注目しています。

綿貫 最初観たとき、度肝抜かれました。日曜の朝の9時じゃなくて!?って。

明日菜子 時間帯!

綿貫 特撮枠で放送していたら、(「獣電戦隊キョウリュウジャー」に出ていた)竜星涼さんもいるしもっとバズって大絶賛されている気がする。アクマゲームを取り仕切るゲームマスター・ガドは怖いし。99本の鍵は世界中にばらまかれてるけど、狭い範囲で事件が起きているから本当にどうなる? 日本で完結するの?

明日菜子 も、もしかして、映画化……!?

綿貫 勝手ですけど、映画とHuluスピンオフですね(笑)。「君と世界が終わる日に」みたいなイメージ。対決も、どっちがなぜ勝ったのかが理解できないんですよ。カードの話も難しすぎて!

明日菜子 第3話の絵柄当てゲームは、途中で2人ともカードを黒塗りし始めてわけがわからなくなりましたよね(笑)。視聴者そっちのけで、作品(の中の人)だけが突っ走っている感じもトンチキポイントが高い。第2話の影踏みゲームの画が滑稽でたまりません!

綿貫 AIのキャラ・おろちが余計に特撮っぽくさせてますしね。

明日菜子 鍵の行方が気になりますね! 途中で一気に50本とか出てくるのかなあ。ただの出オチドラマじゃなくて、その後もずっと様子がおかしいので、トンチキドラマ愛好家として最後まで見届けます!

明日菜子(アスナコ)プロフィール

毎クール20本以上のドラマを鑑賞しているドラマウォッチャー。好きなドラマ主題歌は「金田一少年の事件簿(第2シリーズ)」の「Kissからはじまるミステリー」(KinKi Kids)。

綿貫大介(ワタヌキダイスケ)プロフィール

エンタメを中心としたカルチャー分野で活動する編集者・ライター・テレビっ子。好きなドラマ主題歌は「オレンジデイズ」の「Sign」(Mr.Children)。

記事に登場したドラマの放送日時はこちらから

連続テレビ小説「虎に翼」

NHK総合 毎週月曜~土曜 8:00~ ※土曜日は1週間の振り返り

夜ドラ「VRおじさんの初恋」

NHK総合 毎週月曜~木曜 22:45~23:00

テレビ東京開局60周年連続ドラマ ドラマプレミア23「95」

テレビ東京系 毎週月曜 23:06~

ドラマストリーム「からかい上手の高木さん」

TBSほか 毎週火曜 23:56~

ドラマ25「季節のない街」

テレビ東京系 毎週金曜 24:42~25:13

ドラマチューズ!「RoOT / ルート」

テレビ東京、テレビ愛知、テレビせとうち、テレビ北海道、TVQ九州放送 毎週火曜 24:30~
テレビ大阪 毎週金曜 26:00~

土ドラ「おいハンサム!!2」

東海テレビ・フジテレビ系全国ネット 毎週土曜 23:40~24:35

日曜ドラマ「ACMA:GAME アクマゲーム」

日本テレビ系 毎週日曜 22:30~