等身大の青年たちが描き出す新しいルールのある世界『ルール〜「十五少年漂流記」より～』公開稽古

4月25日、都内で『ルール〜「十五少年漂流記」より～』の公開稽古が行われた。ジュール・ヴェルヌによって1888年に発表された『十五少年漂流記』は、子ども向けの冒険小説として長く世界中で読み継がれてきた名作。8歳から14歳の少年たちが乗った船が大人を乗せないまま出帆してしまい、無人島に漂着した彼らがそこで工夫して暮らす日々が描かれる。

今作ではそのエッセンスを残しつつ、登場人物の年齢を実際のキャストの年齢とも近い10代後半〜20代前半に引き上げている。無人島に投げ出された8人の青年たちが、そこで過ごすために自分たちで決める「ルール」。その「ルール」に重点を置いて物語が再構築されている。

この日は作品のなかでも特に印象的な3シーンの稽古の様子が公開された。
帆船での訓練生活のために集まった学生たち。冒頭、希望に胸を膨らませたようすの彼らは自己紹介をはじめるが、不穏な空気が漂い始める。中盤では、孤島でひたすら時間だけが過ぎていくようすがリズムに乗せてテンポよく描かれていく。そして、島に別の漂流者がいることに気づいた8人が話し合いを始めると、その漂流者がやってくる……。シーンによっては8人の立ち位置が次々と変わっていく面白さがあり、音楽や古びた木箱を活用した美術も興味深い。本番まではまだ3週間あるが、全員が台本を手放している。

稽古のほんの少しの合間でもキャスト陣は会話を交わしていて、和気あいあいとした空気が伺える。稽古後の囲み取材でも二代目リーダー・ブリアン役の荒井敦史と狩猟隊長・ドニファン役の嘉島陸が互いのコメントに笑顔を見せ、仲の良さが伝わってくる。荒井が話すたびに表情を変えて反応する見習い水夫・モコ役の富栄ドラムにたびたび笑いが起きた。

荒井は今作について「原作の『十五少年漂流記』を読んだときには、少年たちがあまりに高スペックな、出来すぎた子たちという印象があった。今回の舞台では年齢設定が僕らに近い等身大のものになったことで、リアリティが生まれていると思う。何もないところで少年たちが頑張って生き抜く姿を描いているので、うまく表現できたら」と語る。2022年、『アナザー・カントリー』で鈴木勝秀の演出を経験している嘉島は「役者に考えさせる余地が大きい作品だと思う。役にとらわれない表現にチャレンジできるのは、鈴勝さんの稽古場ならでは」と話した。

『VIVANT』で一躍注目を集めた富栄ドラムは、今回が初舞台。オファーが来た時には「とうとうしゃべる時が来たなと」と語り、共演者や報道陣を笑わせる。実際に日々稽古を重ねている中、「みなさんのセリフのテンポの速さがすごい。毎日勉強です」「自分の演技には今の時点ではまったく納得いかない。ただただ頑張るのみ」と厳しい発言をするドラム。荒井は「舞台は、しゃべっていない時でも見られるもの。セリフがないときの表現はそもそも絶品だし、いるだけできちんと空気を作ってくれて、さすがです」とドラムを称える。嘉島も「しゃべらなくても存在感があるけれど、しゃべっても個性的で羨ましい」と語った。「頑張れば結果がついてくると思うので、エンジンがかかってきました！」とドラムもやる気が湧いてきた様子だった。

別の漂流者・エバンズ役の駒田一は「若い人たちのエネルギーをいただきながら一緒になって戦っていきたい」とベテランの風格。演出の鈴木は「今作には昨今の世界情勢も含め、いろんなことが凝縮されている」「新たにルールを作っていくとどんなことが起きるかを描いた」と語り、「初日にはしっかりと芝居ができあがる」と自信を見せた。

公演にちなみ、この稽古場での「ルール」を聞かれると、鈴木がビジュアルの撮影日に「初日までにセリフを覚えてこい」「テンポとリズムを守れ」の2つを掲げていたことを明かす。すると荒井が「早速1つめのルールを破って悪い見本を見せました」と告白し、現場は笑いに包まれた。

『ルール〜「十五少年漂流記」より』は5月16日(木) から東京・よみうり大手町ホールほかで上演される。

＜東京公演＞
『ルール～「十五少年漂流記」より～』

公演期間：2024年5月16日(木)～5月26日(日)
会場：よみうり大手町ホール

チケット情報：
https://w.pia.jp/t/rule/