Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
ぴあ 総合TOP > 20歳の“革新者”中村滉己が奏でる令和の時代の新しい三味線

20歳の“革新者”中村滉己が奏でる令和の時代の新しい三味線

音楽

インタビュー

チケットぴあ

中村滉己

続きを読む

フォトギャラリー(2件)

すべて見る

津軽三味線の“革新者”として、数々のコンクールでの受賞に加えて、2022年には羽生結弦のアイスショーに参加するなど多彩な活躍を見せる中村滉己がこのたびファーストフルアルバムとなる「民唄-TamiUta-」をリリース。5月18日(土) より10月にかけて奈良、東京、山口、愛知、広島、大阪を巡る全国ツアーを行う。20歳の大学生でもある中村は三味線という伝統芸能を通じて何を伝えようとしているのか? その思いを語ってくれた。

――ファーストフルアルバム「民唄-TamiUta-」は、「ホーハイ節」(青森県民謡)や「津軽じょんがら節」(青森県民謡)といった地方に伝わる民謡、中村さんご自身の作曲による「LABYRINTH-迷宮-」、「AYUMI-歩-」、「SHIMEI-糸命-」を組み合わせた構成になっています。どのようなコンセプトでアルバムを制作されたんでしょうか?

コンセプトとしては、日本の伝統芸能である民謡のテイストを継承しつつ、20歳という若い視点から、こうした伝統芸能にはさらに進化する余地があるのではないかと思っていて、現代らしく、でもどこか懐かしさを感じてもらえるようなアルバムにしたいという思いで制作しました。

――特にご自身で作曲する場合、どのようなことを大切にして曲をつくっているのでしょうか?

基本的には素の自分の感情を出すことを意識しています。例えば「LABYRINTH-迷宮-」はアップテンポな楽曲ですが、僕が上京後に演奏スタイルに迷った際の苦悩やコロナ禍で演奏ができないムズムズした気持ち――そういう感情を隠さずに音楽で表現しています。

常にその時の中村滉己だからできる音楽を大事にしたいと思っています。

それ以外の楽曲では、ストーリー性に着目することも多くて、「AYUMI-歩-」であれば羽生結弦さんのスケーターとしての人生というものを意識しましたし、「SHIMEI-糸命-」は、アジアの他の音楽も取り入れつつ、シルクロードのようにそれらが大陸を渡り、海を越えて日本に来るような“ストーリー”を意識しています。

――アルバムの最後を飾る「流れ星」は妹尾武さんが作詞作曲されています。どのような経緯で妹尾さんにお願し、どんなお話をされてこの曲が出来上がったのでしょうか?

ちょうど妹尾さんのコンサートに伺った時に思いついたんですが、それがちょうど祖父(三味線奏者・津軽民謡家の中村優利)が他界して一週間くらいのタイミングでした。大切なものを失って、でも失っただけでなく、祖父は自分に大切な何かを遺してくれた――そのコンサートで改めてそう感じさせられて、寂しい気持ちもあるけど「いままで応援してくれてありがとう」という気持ちを伝えつつ、これからもっと頑張るという気持ちを示すような楽曲にしたいと妹尾さんとお話をしました。

完成した曲を聴いて、感動しましたし、ただ琴線に触れるだけでなく、どこか奮い立たせてくれる楽曲だなと思いました。「いってらっしゃい」と後押ししてくれるような曲だなと感じました。

――このアルバムを携えて、5月から10月にかけて全国を回りますが、意気込みをお聞かせください。

初めてうかがう街もありますし、春から秋にかけて長く回らせていただくので、季節の移り変わり、その時々の時季の良さを取り入れつつ、令和における伝統をみなさんにお伝えできるようにしたいと思っています。

一部と二部でガラッと構成を変えようと考えていて、前半はMC少な目で、短い時間の中でじっくりと三味線を味わっていただき、後半は少し雰囲気を変えて、衣装も洋服にしてギャップを感じてもらいつつ、MCも多めにしたいと思っているので、ぜひそこも楽しみにしていただきたいです。

個人的には、やはりその土地、その土地の雰囲気や風土、食事などを楽しみたいと思っていますし、そこで感じることって絶対にあって、楽曲の制作や演奏で影響を受ける部分もあると思うので、そういうところも楽しみにしています。

――現在、慶応大学に通いつつ、音楽活動をされていて、普段、大学などで同世代と触れ合う機会も多いかと思います。中村さんの音楽活動や三味線というものに対する周りの人たちの反応はいかがですか?

僕の周りで「(三味線に対する)イメージが変わった」と感じてくれている人が多くて、それが嬉しいです。当初は「きっと年寄りの楽器と思うだろうな…」と思っていたんですが、着物を着て畳の上で弾くというだけでない、もっと身近な音楽なんだなという反応が多くあります。

――音楽大学や芸術大学ではない大学で学生生活を送り、学業と両立しながら音楽活動をすることで刺激を受けている部分はありますか?

音大や芸大では学べないこと、できないことを経験できているなと思います。これまで、ひとりのアーティストとしての活動は、音楽だけだと思ってたところがあって、どれだけ良い音楽、完成度の高い音楽を創造できるか? ということばかり考えていました。いまの環境に置かれたことで、音楽を取り巻く外部環境――例えばライブでのMCや照明、物販、サイン会で何をしゃべるかといった、純粋な音楽制作や演奏以外の部分に着目できるようになったと思うし、それはただ音楽だけをやっていたら気づかなかったことだと思います。

ツアーとテスト期間が重なると正直、キツいですが(苦笑)、どちらも好きなことなので苦ではないですね。

――今後、挑戦したいこと、将来的に実現したいことなどがあれば教えてください。

ずっと言ってるんですけど、まだ海外に行ったことないので、早く海外の方に三味線を聴いてもらってリアルな反応を見たいです。

それから、もっと三味線を身近に感じてもらうためにも、攻めるべき音楽分野はまだまだあると思っていて、ロックやジャズ、EDMは既に多くの人が手をつけていて、開拓されていますが、実はR&Bってまだあまりやられていなかったりするんですよね。そういう未開拓地をどんどん拓いていけたらと思っているし、民謡をビート調にしたりすることを考えてます。

――最後にコンサートを楽しみにされている方、これから中村さんの音楽や三味線に初めて触れる方に向けてメッセージをお願いします。

三味線という日本の伝統的な音楽について、「敷居が高い」、「自分が足を踏み入れられるところじゃない」という固定観念を取っ払えるように、令和の時代に合った日本の良さを追及して津軽三味線のサウンドがみなさんの日常的な音楽になるようにアップデートさせていきたいと思っています。

ぜひ先入観を取っ払って「新しい音楽を楽しんでみよう」という気持ちで一度、ぜひ聴きに来てください!

取材・文:黒豆直樹

<公演情報>
中村滉己
津軽三味線・民謡リサイタル
ACOUSTICS RE:DISCOVER 民謡
1stアルバム『民唄 -TamiUta-』リリースツアー

ツアーサイト:
https://www.kokinakamura.jp/tamiutatour2024

2024年8月11日(日) 愛知・宗次ホール
2024年8月25日(日) 東京・銀座王子ホール
2024年10月20日(日) 広島・福山市沼隈サンパル
2024年10月27日(日) 大阪・あいおいニッセイ同和損保 ザ・フェニックスホール

チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2450539

フォトギャラリー(2件)

すべて見る