島﨑信長×浦 和希「ふたりにとっての“エゴ”とは?」【劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-】
映画
インタビュー
写真左より)浦 和希、島﨑信長 撮影:源 克己
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すべて見る累計発行部数3000万部突破の人気漫画『ブルーロック』シリーズが初の映画化! 劇場版は原作のもうひとつの物語『ブルーロック -EPISODE 凪-』を基に展開。凪役の声優・島﨑信長さんと潔役の浦 和希さんに映画の裏話についてインタビューしました。
世界一のエゴイストストライカーを目指して、ユース世代のサッカープレーヤーたちが激闘を繰り広げる『ブルーロック』。
原作はコミックス累計発行部数3000万部突破の金城宗幸・ノ村雄介による同名人気漫画で、その魅力をダイナミックにもクールに活写したTVシリーズは大きな話題を集め、第2期の制作も決定しているが、本作の注目点は何と言ってもその設定だ。
日本をW杯優勝に導くため、全国各地から招集された300人の高校生FW(フォワード)たち。
彼らは その名も“ブルーロック(青い監獄)”プロジェクトの下、専用の特殊な施設で過酷な試練と熾烈な争いに挑んでいくことになるが、脱落すれば日本代表入りの権利は永久に剥奪されてしまう……。
そのデスゲームのような作風から、“史上最もアツく、最もイカれたサッカーアニメ”とも称されている。
『ブルーロック』初の劇場版は、原作のもうひとつの物語
そんな『ブルーロック』シリーズ初の映画化が決定。
TVシリーズは日本代表のエースストライカーを夢見る無名の高校生・潔 世一(いさぎ・よいち)を主人公に描かれたが、劇場版は原作のもうひとつの物語『ブルーロック -EPISODE 凪-』を基に展開。
本編でもメインキャラクターのひとりである、サッカー歴半年ながら桁外れのセンスを誇る天才・凪 誠士郎(なぎ・せいしろう)から見た物語が語られる。
その凪を演じるのは、数々の作品に出演している人気声優・島﨑信長。そして、潔を演じるのは、同役で初主演を果たして第18回声優アワード・主演声優賞も受賞した浦 和希だ。
浦「主人公を奪われて、悔しい気持ち」!?
劇場版に関して、「これまで主人公ということをあまり意識はしてはいなかったですが、いざその座を奪われてみるとちょっと悔しい気持ちになったりもしていて(笑)。
ただ、劇場版の中でも潔の行動や言動はすごく主人公然としているので、もっとちゃんと主人公の自覚を持たないといけないなと思いました」と浦。
そんな浦に対して島﨑は、「でも浦くんは、TVシリーズのときからちゃんと自覚を持ってやっていたよ。俺は、嘘は言わないから!
今回、凪が主人公ということで、視点が変わるとこれだけ見え方が変わるんだなってあらためて認識しました。
潔視点のTVシリーズでの凪は本当に得体の知れない存在で、演出上、ちょっと抑えてフィルターを掛けていたところもありましたが、今回は凪視点として、フィルターを通さない等身大の凪を演じることが出来たので面白かったですね。
TVシリーズと見比べても楽しんでいただけるんじゃないかと思います」。
TVシリーズ、劇場版を通じて見えてくる、それぞれのキャラクターのさまざまな側面。
他にも、凪をサッカーに導いた存在で、大企業の御曹司にしてあらゆるプレーに対応可能な器用さを持つ御影玲王(みかげ・レオ/CV:内田雄馬)、雰囲気は知的ながら実は難しいことが苦手で凪や玲王たちから「バカ斬鉄」と呼ばれる剣城斬鉄(つるぎ・ざんてつ/CV:興津和幸)、自らを“キング”だと称する強靭なフィジカルと正確無比なシュートテクニックの持ち主・馬狼照英(ばろう・しょうえい/CV:諏訪部順一)、現時点のトッププレーヤーで高い得点能力を誇る糸師 凛(いとし・りん/CV:内山昂輝)など、多種多様なキャラクターが集っている。
潔と凪それぞれのキャラクターの魅力とは?
そんな中での潔と凪の魅力を、浦と島﨑はどのように感じているのだろうか。
浦:潔はサッカーに対する真っすぐさみたいなところがすごく魅力的だと思っています。
凛と初めて会ったときも素直にボールさばきに感動していて、世界選抜と戦ったときも「行きたい……俺もあそこへ」って力の差を素直に受け止めて、自分がそうなるにはどうしたらいいかと考えるんですよね。
馬狼に対しても彼を変えようとするんじゃなくて、自分が変わって適応するっていう現状打破能力みたいなものがすごくカッコいいなと思います。人間としても尊敬出来るところが魅力ですね。
島﨑:潔の立ち振る舞いは声優の仕事においても理想的だと思うよ。
声優って本当にその場その場で即対応を求められることが多くて、例えばですが、大号泣し終わった5秒後くらいに、吹っ切れた次の日の朝のシーンが来るんですよ。そこから幼少期とか10年後とかもざらにある(笑)。
潔は試合中に、その瞬間で反応しながら対応しているので、考え方も含めて声優とかぶるところかもしれないです。
凪はやっぱり見た目も含めて設定がカッコいいですよね。
ただ、凪の深い魅力ってそこではなくて、この作品のテーマにもなっている奥底にあるエゴや熱量だったり、意外とあるコミュニケーション能力だったり、人への思いとかもちゃんとあるところです。
玲王や斬鉄との絆や潔との関係性から掘り下げたときに見えてくる凪というのが面白いですね。
“エゴ”は『ブルーロック』を貫くキーワード
世界一のエゴイストでなければ、世界一のストライカーにはなれない。
島﨑の言葉にもある“エゴ”は本作を貫くキーワードだ。潔はもともと、サッカーは全員でやるスポーツだという教えを叩き込まれていたが、そのことで生まれた後悔から自分でゴールを決めたいと考えるようになる。
一方、面倒くさいが口ぐせで日々を無気力に生きていた凪は、サッカーと出会い、“ブルーロック”でのライバルたちとの出会いを経て、執着心と向上力を見せていく。
浦と島﨑が本作の魅力として語るのも、その“エゴ”。
浦:なかなか切り込めなかったところに切り込んでいるところがすごいですよね。
上を目指すうえで、これくらいのマインドでいなきゃだめだよねっていうことと、“言っていいんだ”“頑張っていいんだ”っていうことをあらためて教えてくれているなって。
僕はこの作品って自己啓発本だと思っているんですが、本当に背中を押してくれる、哲学的で精神的なところを支えてくれるのが『ブルーロック』の魅力だと思います。
島﨑:ちゃんと人間を描いているから、自己啓発本って言えるものにもなるんだよね。
あと、これだけの人に刺さるのは、浦くんの言葉のとおりここまで自分を主張して“言っていいんだ”というのがあるんだと思います。
今の世の中、どこかやっぱり右に倣えのところがあるので、俺が俺がっていう“エゴ”の部分が痛快なんじゃないかな。
しかもちゃんと努力して足搔いている人たちが言っているから、刺さるんだと思います。“エゴ”って言うと悪く聞こえるかもしれないけれど、やっぱり必要なものですよね。
島﨑、浦にとっての“エゴ”とは?
では、声優の仕事においてもエゴはあって、それはやっぱり必要なのものなのだろうか。そのあたりを浦と島﨑に聞いてみた──。
浦:いいものを作っていくためのエゴはあると思います。
別の作品で、僕がやらせてもらった役のあるお芝居を監督さんがいいと思ってくださって、当初予定されていた表情よりももっとこうしたい、みたいなものが生まれたっておっしゃってくださったことがあったんですよ。
そのとき、それくらい相手を納得させられるようないいものを常に生み出していかなきゃいけない、生み出していきたいと思いましたが、それも自分のエゴなのかもしれないですよね。
もちろん自分の出すものが正解だから、僕の芝居に絵を合わせろとか音を付けろっていうことではないんです。
でも、そうやってセッションが出来て、より作品を良くしていけるだけの何かを自分からも出していきたいですね。
島﨑:エゴはいっぱいありますよね。この作品やこの役をより良くするためにこうしたいということは、日々の現場である気はします。
ただ、浦くんの話にもあったように、アニメーションって各分野のプロフェッショナルが作っていて、分業なんですよね。
便宜上、僕らは何々のキャラクター役って言わせてわせてもらったりするけれど、顔はやってないんですよ。
僕らがどういう芝居をしようが、アニメーターさんがどういう表情を描くかで変わって、走る速さも音響効果さん足音のSEをどういうペースで付けるかで変わるんです。
だからこそ各々のプロと、僕ら声の芝居のプロが同じ方向を向いて、それぞれがより良いものを提示していくことでさらに上にいけたらと思っているので、むしろエゴを出していったほうが面白いですよね。
この作品においてのエゴもただのわがままではなく、チームの勝利のため。その努力の過程として、必要になってくるものなんですよね。
そうした意味でのエゴは、責任も伴うもの。
そんなことを言うと、島﨑が「主体性っていうことなんでしょうね。主体性と自主性の違いって責任を伴うかどうかみたいで、主体性はそれを伴うもので自主性は伴なわないものらしいんです。
主体性っていうところでのエゴはありますよね」と話してくれた。
加えて、「責任を背負ってるやつは強くなるので、TVシリーズで主人公の潔 世一を任された浦くんもたくさんのものを吸収して、より強くなったと思いますよ」と島﨑。
そんなところから、最後にあらためてお互いを語ってもらった。
「信長さんは凪そのもの」
浦:僕はもう信長さんは凪そのものだと思っています。
「面倒くさい」って常に言っているっていうことではなくて(笑)、天才の部分で凪そのものだなって。
もちろん努力もされていると思いますが、完璧なお芝居をさらっとやられていて、本当にすごい方だなと思います。
同時に作品や役に対する熱量も本当に高くて、その中で僕のことも「そのままでいいから」って支えてくださって。
すごく頼もしい先輩で、一生頭が上がらないですね……。自分の声優人生を語るうえで、欠かせない方です。
島﨑:ありがとうございます(笑)。でも先輩って大きく見えるものなんですよ。
僕も先輩はずっと大きく見えていて、その先輩たちからいろいろなものをもらって、それを浦くんにも伝えてはいるけれど、思っているほど僕と浦くんに差があるわけじゃないから大丈夫(笑)。
浦くんも熱量のあるいい役者さんで、素晴らしいですよ。
いろいろなものを素直に受け止めながら、貪欲に吸収しているということでは、やっぱり潔と重なるところがあると思います。
これからも一緒にいいもの作っていこうね!
映画 『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』4月19日(金) 全国ロードショー
文=渡辺 水央
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