Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
Download on the App Store ANDROID APP ON Google Play
ぴあ 総合TOP > 池田亮が岸田國士戯曲賞授賞式でパフォーマンスを披露

池田亮が岸田國士戯曲賞授賞式でパフォーマンスを披露

ステージ

ニュース

チケットぴあ

池田亮

続きを読む

フォトギャラリー(4件)

すべて見る

昨年4月に上演された『ハートランド』で、第68回岸田國士戯曲賞に輝いた「ゆうめい」の池田亮。その授賞式が、5月7日、東京・学士会館にて行われ、受賞者の池田のほか、選考委員の市原佐都子、上田誠、岡田利規、タニノクロウ、野田秀樹が出席した(本谷有希子、矢内原美邦は欠席)。

『ハートランド』のキャスト、スタッフはもちろん、多くの演劇関係者が集う和やかな雰囲気の中、授賞式が開式。主催者の挨拶に続き、市原、タニノと共に今回から選考委員に加わった上田が、選考経過報告のために登壇した。まず切り出したのは、3月某日の夕方から行われた選考会時の話。思いがけず長時間となったため、上田は京都への終電を逃すことになったそう。

「わりとパッと受賞作が決まることもあるそうですが、今回は選考委員が変わったからか、微妙に票が割れたからか、候補作について一つひとつ、丁寧に議論を積み重ねていきました。その結果、僕は東京に泊まることになったわけですが(笑)。池田さんの作品の選評に、僕は“新しい演劇的絶景”と書かせていただきました。物語の終盤、海の見える丘に辿り着くと、そこが仮想空間と重なって光るメッセージが広がる。その抜け感みたいなものと同時に、今じゃないと作れない、新しい演劇の景色を見せてもらったと感じました」

そしてついに池田本人が登壇。ところが池田、スピーチのために用意していた紙を忘れてしまったとのことで、まさに生の言葉で自身の創作について振り返り始めた。

「僕が最初に書いた作品は、クラスメイトからからかわれている中学生が、プラスドライバーを耳に突き立てて復讐するという内容でした。まず彼は自分の耳でその練習をするのですが、プラスドライバーが意外と耳かきとして気持ちがいいことに気づき、耳かき中毒から中耳炎になってしまう。と、これは完全に僕自身の話でして(笑)、その“痛み”というのは、自分の創作の根幹になっていると思っています。その痛みを発端にしながらも、そこから飛躍した作品、これまでのように実体験に基づくものではなく、フィクションとして自分の頭に飛び込んでみようと思って作ったのが、この『ハートランド』です。上演時は賛否分かれましたが、岸田國士戯曲賞をいただいたことで、もっと次に進んでいいんだと思うことが出来ました。これからはさらに新しい表現を探り、いろいろな作品を作っていくような作家になりたいです」

続いて選考委員の野田、岡田、タニノから祝辞が述べられる。野田は「先日、唐十郎というアンダーグラウンドの大黒柱がぽっきり折れましたが、『ハートランド』の後半で感じたのは、あ、まだアンダーグラウンドがいる、ということでした。池田さんには、ぜひその系譜を引き継いでいって欲しいと思います」と池田への期待を語った。また岡田、タニノは、選考会が長時間にわたったことに触れ、議論を尽くすことの重要性についても説いた。

同じく選考委員の市原による乾杯の挨拶、歓談、出席者3名の祝辞ののちに披露されたのは、池田自ら出演するパフォーマンスで、Uber Boyz feat.ゆうめい『一方金子は、』。Uber Boyzとは、2021年に芸劇eyes番外編Vol.3『もしもし、こちら弱いい派 ─かそけき声を聴くために─』内で、「ウンゲツィーファ」によって上演された作品。メンバーはウンゲツィーファの本橋龍を中心に、「コンプソンズ」の金子鈴幸、「ヌトミック」の額田大志、「盛夏火」の金内健樹、「小野彩加 中澤陽 スペースノットブランク」の中澤陽、「青年団」の黒澤多生に池田を入れた7人。今回はさらにゆうめい主宰の丙次、アートディレクターのりょこも加わる。ちなみに本パフォーマンスは、池田が「Uber Boyzの続編は岸田國士戯曲賞の授賞式で」と冗談で発言したことが発端となっている。

まず登場したのは、第68回岸田國士戯曲賞の最終候補作にもノミネートされた金子。選考結果を待っていた彼のもとに単独受賞の知らせが届くのだが、どうやら彼が受賞したのは岸田文雄戯曲賞らしい。そこからこの授賞式の場をそのまま使った、金子と池田の攻防。第66回の最終選考に残った額田の、出席者の脳に直接語りかけるスピーチ。そしてラストには、キャスト全員でオリジナル楽曲『私はなりたい』を熱唱。演劇界への愛と皮肉をたっぷり盛り込んだ内容で、参加者からは大きな笑いと拍手が送られた。

授賞式とは思えぬ充実ぶりと笑いを提供してくれた池田。今後の活躍を大いに期待しつつ、まずは9月に上演される新作『球体の球体』の幕開けを楽しみに待ちたい。なおパフォーマンスを含めた授賞式の全編は、白水社のYouTubeにて配信されている。

取材・文:野上瑠美子

フォトギャラリー(4件)

すべて見る