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ラストシーンは目を見張る美しさ! 芝居好きのゴーストとナイチンゲールの物語 劇団四季『ゴースト&レディ』上演中

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劇団四季オリジナルミュージカル『ゴースト&レディ』最終通し舞台稽古より(撮影:平野祥恵)

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劇団四季『ゴースト&レディ』が5月6日に東京・JR東日本四季劇場[秋]にて開幕した。『うしおととら』『からくりサーカス』等のヒット作を持つ藤田和日郎によるコミックス『黒博物館 ゴーストアンドレディ』を原作に、劇団四季がオリジナル作品として製作する大作ミュージカルで、演出を『ノートルダムの鐘』のスコット・シュワルツ、脚本・歌詞を『アナと雪の女王』などで知られる高橋知伽江、作曲・編曲をミュージカル『バケモノの子』の富貴晴美が手掛けている。前日の5日に行われた最終通し舞台稽古を取材した。

幕があくと、そこは重厚感ある劇場だ。ロンドン、ドルーリー・レーン王立劇場。ここに棲みつく芝居好きのゴースト“グレイ”が「どうしてもやり遂げたいことがある」と語りだし、時代は19世紀に遡る。観る者の心を一気に掴むオープニングだ。グレイが語るのはフローレンス・ナイチンゲールというひとりの女性の物語。フローと呼ばれる彼女は、人の目には見えないはずのグレイを見つけ、「私を殺してほしい」とグレイに頼み込む……。

まず、近代看護の礎を築いたナイチンゲールという歴史上の偉人が、いかに困難を乗り越えてその偉業を成し遂げたのか、当時の社会の常識や看護という職に対する偏見なども丁寧に描き、評伝劇としても見応えのある内容になっている。だが堅苦しいお勉強のような印象はまったくない。なぜフローが絶望しているのか、またグレイはどうしてゴーストになったのか。このふたつの謎が推進力となる物語はドラマ性に満ちているし、フローが看護という使命に導かれイギリスからスクタリ、クリミア半島へと向かう旅路は、冒険譚のような高揚感もある。また、絶望を抱えたふたりが心の深い部分で理解しあい繋がっていく様はロマンチック、芝居好きのグレイが折に触れシェイクスピア劇など古典作品の台詞を引用するところは演劇的で遊び心があり、観ていて楽しい。原作が持つ奥深い要素を演劇の土壌に見事に植え替えた脚本・構成だ。シュワルツの演出もドラマチックでどんどん物語に引きこまれていくし、何より情感豊かで美しい。中でも原作ではさほどフィーチャーされていなかった、ナイチンゲールを象徴するとあるアイテムが意味を持つラストシーンの演出は、目を見張る美しさだった。

この日のキャストは、フロー役が谷原志音、グレイ役が萩原隆匡。谷原はこの人らしい力強い歌唱はもちろんのこと、フローの絶望と、その中でも消えることのない信念の強さと気高さを真っすぐに表現。猪突猛進すぎるところに愛嬌も見え、非常に魅力的なフローを造形している。萩原は、不気味なようで実は温かく人間味あるゴーストを、独特なタッチで描かれる原作の“異形のもの”感も漂わせ、愛すべき存在として演じている。開幕に際し谷原は「偉大な功績を残したフローレンス・ナイチンゲールですが、この作品では、悩み迷いながらも自分の信じる道を進むひとりの女性として描かれています。私自身も役を通して日々力をもらっているように、観に来てくださるお客様にも“明日を生きる力”を感じていただけるよう精一杯演じたいと思います」、萩原は「生きる意味を見失っていたフローと孤独なグレイ。ふたりが出会い、互いに影響されながら、次第に育む深い絆の美しさが描かれた、この作品のメッセージをしっかりとお届けできるよう、一回一回の舞台を誠心誠意務めてまいります」とそれぞれコメント。ほかのキャストも隅々まできちんと息づいていて見応えがある。すべてにおいて“劇団四季の本気”が伝わってくる新作ミュージカル。近年、演劇界において日本オリジナルミュージカルの創作とヒットは大きな課題になっているが、そのひとつの指針になる作品が誕生したのではないだろうか。

劇団四季オリジナルミュージカル『ゴースト&レディ』最終通し舞台稽古のカーテンコールより

公演は11月11日(月)まで同劇場にて上演。チケット発売中。

取材・文・撮影:平野祥恵

<公演情報>
劇団四季オリジナルミュージカル『ゴースト&レディ』

原作:藤田和日郎「黒博物館 ゴーストアンドレディ」(講談社「モーニング」)
脚本・歌詞:高橋知伽江
演出:スコット・シュワルツ
作曲・編曲:富貴晴美
振付:チェイス・ブロック
イリュージョン:クリス・フィッシャー

2024年5月6日(月・休)~11月11日(月)
会場:東京・JR東日本四季劇場[秋]

チケット情報
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2448185

公式サイト
https://www.shiki.jp/applause/ghostandlady/

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