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成井豊版『湯を沸かすほどの熱い愛』の舞台ならではの魅力

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舞台『湯を沸かすほどの熱い愛』稽古場より (撮影:川野結李歌)

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2016年に中野量太脚本・監督で公開されると大きな話題を呼び、日本アカデミー賞をはじめ数々の賞を受賞した映画『湯を沸かすほどの熱い愛』。その舞台版が、これまで家族をテーマにさまざまなストーリーを紡いできた成井豊の脚本・演出によって上演される。

出演は、成井作品に欠かせない岡内美喜子(キャラメルボックス)をはじめ、今回が本格的な舞台出演となる瀧野由美子、さらに実力派の中村誠治郎と鍛治本大樹(キャラメルボックス)がWキャストでキーパーソン役を務めるなど見逃せない布陣。さらに小坂涼太郎、石森美咲(キャラメルボックス)、筒井俊作(キャラメルボックス)、夏目愛海、関口秀美、和田みなみらが「自身の手でこの物語を舞台で届けたい」という成井の熱い思いを受け、全力で舞台を作り上げている。

5月上旬に稽古場に踏み入れると、通し稽古を前に岡内と瀧野が真剣な表情で最終確認中。稽古場の緊張感が高まる中、時間ぴったりに成井が「ハイッ!」と声をかけると、いよいよ通し稽古が始まった。

冒頭は、銭湯「幸の湯」を営む幸野双葉(岡内)とその娘・安澄(瀧野)のシーンから。銭湯の床をデッキブラシでこすりながら、たわいのない母娘の会話が続く。双葉は「熱い愛のかたまりのような人」(岡内)という通り、登場するだけでエネルギッシュな佇まい。だがそれが暑苦しくならないのは、岡内の明るく爽やかな持ち味ゆえだろう。瀧野演じる安澄も双葉にぶっきらぼうに答えるものの、“お母ちゃん”を好きなことが伝わってくる。瀧野自身の初々しさが役にハマっている印象だ。

「お姉ちゃん!」と呼びかける妹・鮎子(石森)の声でハッとする安澄。冒頭のシーンは過去の記憶で、安澄と鮎子は双葉のことを回想し始め……という導入部。成井作品恒例の、キャストが全員登場して踊るオープニングも挟み込まれ、「これから何が始まるのだろう」とワクワクした気分がいっそう高まった。

物語は5年前にさかのぼる。双葉の夫・一浩(中村/鍛治本)は1年前に蒸発し、銭湯は休業状態。双葉はパン屋でパートをしながら、娘の安澄を育てていた。ところがある日、倒れた双葉が病院に運ばれると、ガンのために余命2カ月ということが分かる。絶望のどん底に落とされる双葉だが、次の日から早速「やらなければならないこと」を実行に移し始める。愛する安澄のためにと始めた双葉の行動は、周りの人々の心も動かし始めて……。

大筋は映画版と同じなのだが、本作は成井が脚本も担当しているだけに、細かな表現に舞台版ならでのきらめきが宿る。どんなことが起きても明るくたくましく前に進む双葉と、つらい状況でも必死に生きようとする安澄。まっすぐに娘を見つめる双葉役・岡内の眼差しと、次第に成長してゆく安澄を全身で演じる瀧野に、通し稽古というのも忘れて引き込まれる。小心者だがどこか憎めない一浩を愛嬌たっぷりに演じる中村に成井も思わず笑い声を上げるなど、通し稽古は緊張感の中にも和気あいあいとした雰囲気で進んでいった。

物語はさまざまな想いを飲み込みながら、意外な結末へと進んでゆく。映画版とはまた異なる味わいを持つ本作。観終わった後どんな感慨が訪れるのか、それはぜひ劇場で確かめてほしい。

撮影:川野結李歌

<公演情報>
NAPPOS PRODUCE 舞台『湯を沸かすほどの熱い愛』

5月18日(土)~5月26日(日) サンシャイン劇場
6月1日(土)・2日(日) サンケイホールブリーゼ

チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2449726

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