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波乃久里子と渡辺えりが爆笑共演!「初夏の新派祭」は心温まる2作品

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「初夏の新派祭」取材会より

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日本情緒漂う物語に人間の哀歓を描き出す多くの作品で知られる新派の「初夏の新派祭」が、6月1日(土) から23日(日) にかけて、東京・三越劇場で上演される。浅草に暮らす職人の生きざまを描く名作『螢』と、笑いあり涙ありの人情物語『喜劇 お江戸みやげ』の2本立て。波乃久里子や喜多村緑郎、河合雪之丞、瀬戸摩純らが全員初役で挑むほか、渡辺えりも今回は『喜劇 お江戸みやげ』に初挑戦する。稽古が始まったばかりという5月15日、その5名による取材会が都内で行われた。

まず1本目は、久保田万太郎作『螢』。錺(かざり)職人の兄弟弟子である重一(喜多村緑郎)と榮吉(喜多村一朗と河合穗積の交互出演)は正反対の気質。実直な榮吉に比べて酒に明け暮れる兄弟子の重一は、女房とき(河合雪之丞)の母親を刃物で傷つけ、刑務所へ。親方はときと重一を離縁させ、榮吉と所帯を持たせることにする。重一は出所後、苦労人のよし子(瀬戸摩純)を女房にして、人が変わったように働くが……。鳥越神社の祭礼のシーンも印象的な、初夏に相応しい新派の名作だ。

緑郎は入団前の2014年、『螢』の榮吉役で出演。今回は重一役となるが、「僕にとって一番やりたかった役。まさかやらせていただけるとは思わなかったので、本当に嬉しいです。(1941年の初演から複数回演じた)大矢市次郎先生にはまだまだ近づけないですが、役に込める魂のようなものは絶対に負けないように」と意気込む。

一方、大正から昭和の新派を代表する名優として今も名を残す花柳章太郎が初演から演じていたのが、女房のとき。演じる雪之丞は「前回は久里子さんがとき役をされているのを拝見していて、さらに花柳先生の映像も拝見して、当時の東京の庶民の生活がよく表れている新派らしい作品だと感じました。やりがいのあるお役なので、そういうところも大切にして演じたいと思っております」とこちらも作品への想いを語る。

瀬戸が「よし子はほとんどセリフがなく、セリフとセリフの間(ま)を沈黙で表現しなければならない難役。当時の浅草、下町の風情をお伝えすることでお客様に何かを感じていただけたら」と話すと、緑郎と雪之丞も大きくうなずいていた。

2本目の『喜劇 お江戸みやげ』は、歌舞伎では何度も上演されている人気作。天保初年の春、結城から呉服の行商に来ていた大らかな性格のおゆう(波乃)と倹約家のお辻(渡辺)は、みやげ話にと湯島天神の境内で催されている芝居を見物する。役者の阪東栄紫(喜多村緑郎)にすっかり惚れ込んだお辻は、栄紫が言い交わした相手と夫婦になるため、ある事情から二十両が必要なことを知ると、思わぬ行動に出て……。

1961年の初演時(歌舞伎公演)は、作者の川口松太郎がお辻を十七世中村勘三郎、おゆうを十四世守田勘弥に当てて書いたもの。今回お辻を演じる渡辺は、十八世勘三郎と深い交流があったことで知られるが、偶然にも中村屋ゆかりの作品で歌舞伎狂言に初挑戦となる。

「本当に光栄なことだと思いながらも、普段自分がやっているお芝居とは違うので、まだ悩んでいるところです。ただ、勘三郎さん(十七世)と生前お話しさせていただいた時に、『理屈っぽく考えなくていい、考えちゃダメなんだよ』というようなことをおっしゃっていて。すごく魅力的な役者であると同時に、内面も大切になさって演じる方という印象があります。私もお辻の気持ちはとても理解できるので、そういったところから演じられれば」と渡辺。

十七世の娘で、普段から渡辺とは“姉妹のように仲良し”という波乃も、「えりさんに父のお辻の写真を見せたら、『こんなお辻をやりたい』と涙ぐみながら言ってくださって」と裏話を披露。「父の着物(衣裳)の柄は女の方には地味なので変えますが、かつらは父そのままの形に。稽古場ではもう、えりさんが何か言うたびに全員が笑いっぱなしなんですよ(笑)。父の舞台の録音が残っているのですが、客席の笑い声が大きすぎてセリフが聴こえないほど。今回もそうなるんじゃないかと楽しみにしているんです」と楽しげに語った。

自分がお辻の立場だったらどうするかという話題には、「二十両は大金よ、私だったらあげるより欲しいわ」と言う波乃と、「違うわよ、好きな人が窮地に陥っていたらどうするのっていう話よ!」とツッコむ渡辺。その名コンビぶりに会場中が笑いに包まれるなど、終始和やかな雰囲気で進んだ取材会。新派祭ならではの楽しく心温まる2作品、その初日を楽しみに待ちたい。

取材・文:藤野さくら

<公演情報>
初夏の新派祭

公演期間:2024年6月1日(土)~23日(日)
会場:三越劇場

チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2451408

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