南こうせつ (Photo:GEKKO)
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すべて見るText:川上きくえ Photo:GEKKO
日本のフォーク界を牽引し、数々の名曲を産んできた南こうせつ。その活動を語る上で欠かせないのが、1981年にスタートし、2019年の14回目にシリーズ終焉を迎えた野外ライブイベント「サマーピクニック」だ。
これまでサザンオールスターズ、長渕剛、吉田拓郎、松山千春、チャゲ&飛鳥など錚々たるメンバーが出演し、野外の開放感とエンタメ性の高さで熱狂的ファンが集った同イベントは、もはや現代におけるフェス文化の走りだったといえる。そして、南こうせつのデビュー55周年となる今年9月、そのサマーピクニックが『ラストサマーピクニックin 武道館』となって一夜限りで復活することとなった。
あらためて“ラスト”と銘打って開催される同イベントへの想いと、75歳にして精力的にツアーを廻り、歌い続ける南こうせつの原動力について語ってもらった。
──過去14回敢行された野外ライブイベント『サマーピクニック』が今年も開催されます。2019年に一度幕を閉めた同イベントを、あえて「ラスト」として開催することになったのにはどんな経緯があったのでしょうか。
5年前、サマーピクニック発祥の地・九州にある海の中道公園でやって、このイベントを終わりにしようと思ってたんです。そのときのタイトルが、最初は「サマーピクニック さよなら」だったんですが、このサマピ(サマーピクニック)には第一回目のオールナイトライブのときから来ている、筋金入りのファンがいっぱいいるんですよ。そういう人たちから「さよならという言葉はさびしい!」という声が上がって。じゃあ、言葉的に希望を持たせようということで「さよなら、またね」としたんです。そうしたらみんなも納得してくれて、無事に開催できて僕もこれで終わったなと思ってたんですよね。でも、2~3年前から「確か、さよなら“またね”って言いましたよね?」って脅しに近い意見が上がってきて(笑)。署名活動も起きたりして、これは僕自身が終わらせないといけないんだなってことで、「ラスト」とつけて最後の公演を行うことにしたんです。
ただ、野外イベントは雨が降ったときどうするか、ステージ設営、警備など数々の問題がある。僕やファンの年齢的にもやるなら屋根のある会場のほうがいいし、武道館は日本人で初めて僕がソロ公演を行った場所でもあるので、そこでラストのサマピがしたいなと思ったんですよね。
──もともとサマーピクニックはどんな想いでスタートされたんですか?
みんなで朝まで大自然の中で、自由に歌って自由に表現をする。そういうことをやりたかったんです。それは1975年に吉田拓郎とかぐや姫で、つま恋でオールナイトコンサートをやったのがきっかけで。7万人が集まって、信じられないくらい大勢の人たちと夕焼けを見て、星空を眺め、明け方になるまで歌った。その時の感動はいまだに胸に残っています。誰が主役というわけでもなく、お酒を飲んで暴れたりする人も出てくるんだけど、他のみんながその人を制止する。それは、コンサートを成功させたいからなんですよね。みんなの手で作られていくのがすごくうれしくて、それをまた誰かやらないかな~と思ってたけど誰もやらない(笑)。それなら僕がやります! ってはじめたのが、このサマーピクニックなんです。
──同じ想いを持った人たちが集まり、音楽を楽しむ。そこに、風や陽射しといったみんなで一緒に味わうものが増えると、つながりはさらに深くなるんでしょうね。
そう! それはさ、例えばライブで最新技術でCGやドローンを使おうが何しようが、できないことなんだよね。自然の風とか、星空とかって。
──今回の武道館に、そのサマピの魅力をどう持ってこようと考えていますか?
ああ、無理無理。屋根があるし(笑)。これはね、みんなのイメージの中で、「南こうせつが愛したサマーピクニックというものを、今度は屋内でやりたいのか。分かった、観に行ってやるよ」ってことでいいんです。僕としても、「サマピの最後を飾りたい。なかなか難しいけど屋根があるならできるかな」っていうことですから。サマピはみんな自分のクーラーボックスにビールとか色々詰めてきて、友達同士でおにぎりを分け合ったりして、僕はその自由な感じが好きだったんですよね。環境は違うけど、そんな思いで来てもらえればいいかな。屋内のピクニックです! そして僕は、武道館でやるからには前半から勢いでもっていかないと!と。一曲目が「神田川」ではちょっと、野外じゃなくて四畳半だよなぁってなるんで(笑)。武道館は、ロックで飛ばしていきます!
──熱いライブになりそうですね。これまでサマーピクニックは数々の著名アーティストが参加されてましたが、特に印象に残ってる回やシーンはありますか?
特に印象的だったのは、第10回目のシーサイドももちに、僕が声をかけたゲストがみんな集まってくれて。そこに二万三千人のお客さんが来てくれた。吉田拓郎、松山千春、井上陽水、チャゲ&飛鳥、財津和夫、などみんなが来てくれたっていうのがすごくうれしかったですね。ただ……楽屋の采配と出演順に気を遣いましたけど(笑)。第2回目の時もサザンオールスターズが来てくれて、桑田佳祐がものすごく良いステージをやってくれてね。今でも覚えてるなぁ。オールナイトだから終わってから一度仮眠をとって、宿舎で打ち上げをやるわけですよ。THE ALFEEや当時売れっ子だった山下久美子ちゃんも含め、全員でプールに飛び込んだりしてね(笑)。楽しかったな。青春ですね。
──今回の武道館のゲストにはさだまさしさん、森山良子さんの名前が出ています。南さんから見たおふたりはどんな方々ですか?
さだまさしはしゃべりもうまくて……とはいえしゃべりだけ来てくれっていうのも悪いんでね(笑)。まさしの凄さは生命力なんです。莫大な借金があった時でさえも飄々としてて、困ってる顔とか見たことない。あの生命力は、今回のサマピにほしいですよね。フォークで一番生命力あるのはさだまさし、ロックは矢沢永吉(笑)。そして良子さんは、先輩なんです。僕が東京に出てきた頃にはすでにヒット曲があって、フォークの女王と言われていた。当時から美しい声で歌われて、彼女自身も平和に対する思いを込めたメッセージソングを歌っていて。感性で歌を作る、とてもフォークの似合う人だと思っています。
──こうせつさんは現在でも年間かなりのライブ本数をこなしていらっしゃいます。体力面や精神面を維持するために、心がけてることなどありますか?
今考えると……仕事以外のときに何も考えない、目的を持たない。それが一番栄養になっている気がします。休ませるわけでもないんだけど、静寂の時を作るのって良いんですよね。意識はしてないんですけど、仕事のスケジュールの間は埋めないというか。自分の心の奥底が求めてることに従って生きてるというか。だからどんどん自分の中でスケジュールが変わっていくんですよ。誰かに会って楽しいと思ったら次の人の約束も忘れちゃって、その人に意識がいっちゃう(笑)。でも、それはもうひとつ心がけている、“その日を生きること”に繋がっているんです。
例えば今、こうして向かい合って話してることってすごく幸せなこと。この幸せな瞬間が重なって次の日ができるわけで、その一日が重なって一か月、1年、10年、寿命まで続いていく。つまりこの瞬間瞬間を気持ちよく心地よく、柔らかく生きられたら、それがずっと一生続いていくことになる。だって、今こうして話してますけど、もしかしたら明日、突然死ぬかもしれない。でも、人生ってそんなもんなんですよ。だったら幸せに生きたほうがいいし、天に任せればいいんですよね。それがさっき僕が言った、“静寂”なんです。再びサマーピクニックのステージに立てるのもまた、奇跡。そこでみんなに会えるのを楽しみに、武道館でお待ちしてます。
<公演情報>
「南こうせつ ラストサマーピクニック in武道館」
2024年9月23日(月・休) 開場16:00 開演17:00(20:30終演予定)
会場:日本武道館
出演:南こうせつ
ゲスト:さだまさし、森山良子
料金:13,000円(全席指定)
※車いす席、ファミリー席あり
チケット:
https://w.pia.jp/t/kosetsu-tk/
南こうせつ ラストサマーピクニック in 武道館 特設サイト:
https://kyodotokyo.com/pr/summerpicnic2024.html
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