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誰でも気楽に、新たな音楽に出逢いに来て 『浅野祥 三味線 “響”』

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浅野祥

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津軽三味線全国大会において、史上最年少チャンピオン・殿堂入りを果たし、17歳でメジャーデビューを実現した浅野祥。様々なジャンルのアーティストとのコラボレーション、世界各地でのコンサートやワークショップなど、精力的に活動を続ける浅野が、2024年9月7日(土) に曽根麻央、西江辰郎、ビルマン聡平、生野正樹、富岡廉太郎といったメンバーと“和×クラシック×ジャズ”のコンサートを行う。コンサートに対する思いやこれまでの道のりについて話を伺った。

津軽三味線の新たな魅力にも触れられるのがコラボの良さ

――意気込みを教えてください。

錚々たるメンバーと一緒に音を出せるのはすごくありがたいです。今まで色々なコラボをやってきましたが、どこかで“和楽器”というレッテルを貼られて悔しい思いもしてきました。今回は素晴らしい皆さんと作っていけるチャンス。東京でしっかりコンサートをするのも久しぶりなので、すごく意気込んでいます。

――今回は和×クラシック×ジャズ。ルーツが異なる楽器や音楽ジャンルとのコラボについて、どんな部分に魅力や面白さを感じていますか?

津軽三味線という楽器の可能性を引き出してくれるきっかけの一つが、色々な国の音楽・楽器とのコラボレーションだと思っています。海外公演を行うことも多いですが、そこで感じるのは、「音楽の素材はどれも同じで、調味料が違うだけ」ということ。さらに、三味線という楽器のポテンシャルにも改めて気づくことができる。それを個人のフィールドに持ち帰って還元し、自分だけの津軽三味線というスタイルを追求していきたいと昔から思っています。

――特に印象的だったコラボを教えてください。

10代の頃からなぜかフラメンコとご縁が深く、日本はもちろん本場スペイン・ヘレスのアーティストともコラボしてきました。その中で、一音に対する情熱や心の底に秘めている反骨心は東北地方の感覚と同じだと感じました。

今でこそ三味線は余裕が必要な楽器になってきましたが、昔はその日暮らしをする方がお金を稼ぐためのものでした。フラメンコも流浪の民が辛い生活を音に乗せて発散してきた一面があるそうです。根本的に同じような気持ちがあったと、一緒に音を出して感じましたね。

日本音楽の良さが伝わるコンサートになるはず

――今回のコンサートで楽しみなことはなんでしょう。

曽根さんのようにどっぷりジャズをやってきた方とのコラボでまだ見ぬ音楽に出会えそうですし、そこに弦楽カルテットの豊かな音が加わり、自分自身もお客様も聞いたことのない音楽ができるんじゃないかと楽しみにしています。

また、日本の音楽の良さは曖昧さだと思っています。今回は音楽の根本的なルールの中に曽根さんのような自由な奇才が加わることで、逆に和楽器の曖昧さ・良さを表現できたらと考えています。ただ、西洋に寄りすぎるのも僕が表現したいことと相反する。自分が演奏している楽器の良さはきちんと伝えたいです。絶妙な出演者の組み合わせは、僕としてもかなり期待しています。

――曲目に関するこだわりはありますか?

自分が大切にしてきた日本の民謡は絶対に入れたいと思っていました。僕は歌も歌うので、身体の中から出てくる日本の歌といったものもやりたいと思って選曲しています。民謡の面白さは、4拍子に当てはまらないリズム。日本人にしかない間だったり、練習しなくてもみんな一本締めができたり。そういったものをこのメンバーの音の上で自由に表現したいと思い、「北千島女工節」なども入れています。

――クラシックやジャズファンで、初めて津軽三味線を聴きにくる方もいると思います。

不思議なことに、自国の音楽なのに海外の音楽以上にハードルが高いと感じると思います。ただ、津軽三味線は基本的に大道芸。たくさんの芸人さんの中で目立つために速弾きなどの細かなテクニックを奏者がそれぞれ生み出し、アドリブでお客さんの反応を見ながら演奏してきたものなので、本来は堅苦しくありません。 「すごいな」と思ったらその場で拍手や掛け声をしてもいい。自由に楽しんでもらえるのが津軽三味線です。

僕自身、堅苦しさは1mmも出したくない。せっかく素晴らしい音楽家と一緒にできるので、津軽三味線が持つのびのびとした部分も存分に表現していきたいです。仕事帰りに気楽に立ち寄るくらいの感覚で聞いてもらいたいですね。
SNSやYouTubeにも動画をたくさんあげているので、事前に聞いてもらえたら嬉しいです。

音楽をより深め、自分だけの表現を探していきたい

――和楽器というレッテルを貼られて悔しい思いをしたこともあると仰っていましたが、活動を続ける中でご自身や周囲の変化はありますか?

たくさんありますね。デビュー当時は三味線を演奏している若者がほとんどいませんでしたが、今は数えきれないほどいます。恐らく、僕の先輩奏者にあたる上妻(宏光)さんや吉田兄弟さんなどが堅苦しいイメージを崩してくれ、そこに和楽器バンドさんなど、見ても楽しめるエンターテインメントが出てきたおかげ。

デビュー当時はジャズをやろうがロックをやろうが「三味線なのにできてすごいね」で終わってしまって発展しなかったんです。今はできるのがスタンダードになったことで、この先を考えられるようになりました。例えば、ジャズのスケールを弾けるようになろうとか、譜面のない民謡の演奏家が五線譜を渡されてその場で弾けるようになろうとか。

音楽的な会話が当たり前にできるような努力をしてきたことで、NYでジャズの巨匠とコラボしたときも、1ミュージシャンとして接してもらえたのが嬉しかったです。そういったコンサートを続け、10代・20代・30代のお客様も増えてきた。変化し続けている実感がありますね。

――そんな中で、20周年に向けて挑戦したいことや構想を教えてください。

今まで、ジャズミュージシャンやクラシックとのコラボとなったら、僕がそのフィールドに乗り込んでいました。ここからはこちらのフィールドに引き入れたいですね。自分が培ってきた音楽性の上で、様々なアンサンブルを発信していこうと思い、準備を進めています。

20周年に向けて一番やりたいのはワールドツアーです。音楽のすごくディープなところを感じたい・探したいという思いがあって。去年、ペルーに行って、アンデスの皆さんが「コンドルが飛んでいく」をケーナで演奏しているのを聞きました。僕らが音楽の教科書で知っているものと違う、すごく独特なリズムでしたが、それが150年前、津軽三味線が誕生した当時の「津軽じょんから節」と同じリズムだったんです。

線では繋がっていないけど、音楽って点と点で繋がっているとこれまでの経験で感じる。三味線を持って世界を旅することで音楽の深いところを突き詰めていきたいですね。自分が三味線を弾けなくなって絶える時に「浅野祥の三味線ってこうだったよね」というものを作り上げるために、いろいろなものを吸収したい。そのために世界を巡りたいと強く思っています。

――楽しみにしている皆さんへのメッセージをお願いします。

堅苦しいコンサートではないので、本当に気楽に聞きにきてください。クラシックとジャズと津軽三味線が一緒に何かを作り上げる、それぞれが様々な音楽に触れてきた名プレイヤーたちと一緒に作り上げる機会を僕自身もすごく楽しみにしています。会場が一つになれるような熱い演奏をします。ぜひ皆さんも、どういった音楽が浜離宮で繰り広げられるのか楽しみに来ていただきたいと思います。

取材・文:吉田沙奈

<公演情報>
浅野祥 三味線 “響”

公演日程:2024年9月7日(土) 13:30開場/14:00開演
会場:浜離宮朝日ホール

チケット情報:
https://w.pia.jp/t/sho-asano/

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