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今泉力哉×岩永洋インタビュー、自主映画時代からともに歩む2人の撮影法とは

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左から今泉力哉、岩永洋。

映画界には、たびたびタッグを組んで作品を制作する“名コンビ”がいる。本連載では、そんな映画界の名コンビに着目。2人の制作方法やタッグを組むことで生まれた名作の数々を振り返る。

第3回では、5月31日に映画「からかい上手の高木さん」の公開を控える映画監督・今泉力哉と撮影監督・岩永洋にインタビュー。2010年製作の短編映画「足手」から始まり「サッドティー」「愛がなんだ」「アンダーカレント」など多くの作品でタッグを組んできた2人に、これまでの思い出や新作で新たに挑戦したことを語ってもらった。

取材・文 / 尾崎南

今泉力哉と岩永洋のタッグ映画

2010年 「足手」
2011年 「終わってる」「TUESDAYGIRL」
2012年 「こっぴどい猫」「ヴァージン くちばっか」「ハイタイム」「STUDENTS & TEACHERS」
2013年 「サッドティー」
2014年 「鬼灯さん家のアネキ」
2015年 「知らない、ふたり」
2016年 「退屈な日々にさようならを」
2018年 「愛がなんだ」
2019年 「街の上で」
2020年 「あの頃。」
2021年 「かそけきサンカヨウ」
2022年 「ちひろさん」
2023年 「アンダーカレント」
2024年 「からかい上手の高木さん」

※年は製作年

予算やスケジュールを組み直してでも、小豆島で撮りたい(今泉)

──今泉さんが監督、岩永さんが撮影監督として参加した映画「からかい上手の高木さん」が5月31日に公開されます。お二人がともに制作した映画としては18作目となりますが、今回はどのような撮影プランで臨んだのでしょうか?

今泉力哉 できあがった作品を観ると、明らかに“景色やその場を撮る”意識を感じました。岩永さんが(小豆島の空気を)取り込んでくれて。これまでの作品に比べて予算規模や撮影日数にも余裕があったので、天気にもこだわることができました。天気は本当に難しい問題なんです。例えば雨で撮影中止はわかるけど、曇ってるときにどうするか。全員集まっていてもバラすのか、判断が必要になります。でも今回はこだわることができたから、「集まっちゃったから撮りましょう」という気持ちでは撮れないものが映ったと思う。

岩永洋 ドラマ(※)、映画の順で撮影しました。最初に、そもそも小豆島に行って撮るのか、関東圏で撮るのかという議論がありました。関東圏で撮影するほうが何かとやりやすいのではという方向で話が進んでいたんですが……確か今泉さんが小豆島に行ったんですよね?

※編集部注:ドラマストリーム「からかい上手の高木さん」はTBS系で放送中(※一部地域を除く)。月島琉衣と黒川想矢がダブル主演を務める。

今泉 そうですね。前年にたまたま家族旅行でも行っていました。景色はもちろん小豆島で撮るけど、学校のシーンは関東圏で探せない?という話も出て、どちらもロケハンしていたんです。でもやっぱり小豆島の風景を見ちゃうと、予算やスケジュールを組み直してでも、全部小豆島で撮りたいと思いました。

岩永 その話を受けて、撮影照明的にも「小豆島の空気や雰囲気をどう取り込んで、どう表現するか」というのがメインテーマになりました。ヨリで撮っていたとしても、小豆島の海、空、山を感じてもらうにはどうしたらいいだろうかと。

「足手」の現場のゆるさにびっくり(岩永)

──試写を拝見しましたが、本当に景色が美しく、実際に小豆島を訪れたような臨場感がありました。ここからはこれまでのタッグ作についてもお聞きしたいのですが、お二人が知り合ったきっかけを教えていただけますか?

岩永 2009年の「花の街ふかや映画祭」(※)ですかね。

※編集部注:埼玉県にある映画館・深谷シネマで行われていた映画祭。同映画祭内のイベント「ふかや・インディーズ・フィルム・フェスティバル2009」のコンペティション作品として今泉力哉の監督作「最低」、岩永洋の監督作「ソレダケ」が選出された。

今泉 映画祭にそれぞれの監督作が入選したんです。そしたら帰りの電車が止まってしまい、2時間くらい閉じ込められて。そこで初めて岩永さんと「作品観ました」みたいな話をしました。岩永さんは自分で撮影をしていて、俺の作品よりもドラマチックで面白かった。そのときか後日、「自主映画を作るときに撮影で手伝ってもらえませんか?」とお願いしました。

岩永 僕は日本映画学校(現・日本映画大学)の撮影照明コースを卒業して、当時は撮影の仕事をしながら自主映画を作っていました。作ったものを映画祭に応募している中で知り合ったんです。

──お二人の最初のタッグが叶ったのは2010年製作の短編「足手」ですね。

今泉 「足手」は自宅で1日で撮りましたね。

岩永 今泉さんの「最低」という短編を観たら、画角は4:3、人物の2ショットとヨリで構成されていて、すでにスタイルがあった。そのうえで、新しく出てきた16:9、HDという選択肢もあるという話をしたけど「今まで通りやりたい」という流れになりましたね。もめたり、大変なことはなかった記憶があります。ただ、僕が学んでいた日本映画学校は職業訓練校に近い部分があって、現場は朝早いのが当たり前だったし、“映画はしんどい思いをして作るものだ”みたいな感覚があったので、今泉さんの現場はかなりゆるくてびっくりしました(笑)。

今泉 「足手」は商業映画を撮る前の作品なので、あの頃は確か朝8時とかに集合してましたね。撮影スタッフも5~6人でしたし、全員が時間通りに来ると「みんなやる気あって嫌だなあ」って思うくらい、ゆるくやってました(笑)。岩永さんからしたら謎のギャップがあったのかも。

──「足手」以降、お二人のタッグ作は続いていきますね。

今泉 まだいろんなカメラマンと知り合っていなかったので、映画学校時代の同級生か岩永さんしかお願いできる人がいなかったというのもあります。2011年の「TUESDAYGIRL」「終わってる」あたりは、いろいろ悩んで、新しいことを試していましたね。

演出家の考えや思いをどれだけ汲み取れるか(岩永)

──お二人の場合、シーンごとの撮影法についてはどのように決めていくのでしょうか?

岩永 基本的には現場で「段取り」と呼ばれる大まかなお芝居の動きをやってみて“その芝居をどう捉えるか”を考えて相談しながら撮っていきます。今泉さんは、事前に「ここはこういう映像表現がしたい」ときっちり考えるタイプの監督ではないと思います。

今泉 あまり事前に絵コンテを書くタイプじゃないんです。最近は現場の規模感が大きくなってきて、事前に撮り方がわかっていたら適切な機材を用意できる場合があるので共有するようにしていますが、「サッドティー」から「街の上で」の頃までは、絵コンテはほとんど書いてないですね。お芝居を見た岩永さんから提案されて、自分では思ってもない撮り方になったこともありました。「愛がなんだ」のファーストカット(※)はまさに、俺が思っていた撮り方じゃなかった。内容を理解したうえで岩永さんが提案してくれたんです。

編集部注:マモルと通話中のテルコの目をヨリで撮影している。テルコを岸井ゆきの、マモルを成田凌が演じた。

岩永 僕の記憶では、「愛がなんだ」のファーストカットはイン前のかなり早い段階で、今泉さんがああしたいと言っていたんですよ(笑)。そのためにズームレンズを用意したんですが、撮影の当日、今泉さんはそのことを忘れていたみたいです。

今泉 そうなんだ!?(笑) でもたぶん、ふらっとアイデアレベルで、選択肢の1つとして話したんだと思う。最初と最後のシーンは狭めの映像から入りたいという意識があったので。細かい画のサイズは、岩永さんが現場でカメラを置いて決めてくれました。基本的にはほかの作品でも、岩永さんが画角やカメラ位置をセットしてくださって、自分に意図があって「もっと詰めたい」と思ったら言います。

──お二人の意見や考えがぶつかってしまうこともあるのでしょうか。

岩永 基本的に撮影監督は、演出家の考えや思いをどれだけ汲み取れるかというのが仕事でもあります。事前にプランを考えすぎて「こう撮りたい」というのがありすぎると監督とぶつかることが多くなります。とはいえアイデアを持ってないと、「ヒキヨリヨリ(会話をしている人物同士の2ショット、カットバックのそれぞれのヨリを撮ること)」で終わっちゃう可能性があるので、自分なりに「こういうことをしたら面白いかな?」「こういう角度もあるかな?」と思うことがあればお伝えします。今泉さんとも、「TUESDAYGIRL」のときはけっこうぶつかりましたね。例えば物を1つ撮るにしても、使いどころは決まっていて、撮影技師はそこに向けてどう表現していくか考える仕事だと思っていたんです。「TUESDAYGIRL」のときにそんな場面があって、今泉さんに「使いどころはどこですか?」と聞いたら、「どこでも使えるように撮ってほしい」と言われて。今でも覚えてるくらい、衝撃的でした。当時は瞬間的に受け入れられず「どういうこと?」と思いましたが、本数を重ねるごとに、こういうことなのかなと見えてきました。だから最近はもめることはありません。ただ、今泉さんは細かいです!(笑)

今泉 映像のことはわかってないからと、岩永さんに任せるじゃないですか。だけど画を見てから思うところがあると「ちょっと画角を変えたいです」とその場で言うので……(笑)。 「TUESDAYGIRL」の頃からすでに、芝居はすべてのカットを頭からお尻まで通して全部撮るほうが俳優さんがやりやすいと思っていて。編集のときに調整するかもしれないので、使いどころを聞かれるとそう答えてしまっていましたね。基本的には今もそのやり方で撮ってます。使いどころを絞ったほうが技術部的にはいろいろ準備できるってことは理解したうえで、どうしても俳優や演技を優先してしまう部分はありますね。

「アンダーカレント」をサスペンスとして売りたくなかった(今泉)

──2019年製作の「街の上で」では、(若葉竜也演じる)主人公の青と(中田青渚扮する)イハが部屋で話すシーンの長回しが話題になりましたね。

今泉 脚本を読んだ時点で、この尺(約15ページ分)は細かく割らないだろうという意識は現場のみんなが持っていたと思います。でも長回しにしようと決めたのは当日だったと思う。長回しって、芝居だけじゃなくカメラの距離や照明、録音、美術、衣装、全部が成り立たないとできないもの。岩永さんの中にも、長回しを撮る際に気にしていることはあると思います。

岩永 今泉さんと仕事をしていく中で、2ショットを撮るときのサイズ感について発見したことがあって。僕は、ずっと人がしゃべっているシーンを観るのが苦手で、映画館で「愛がなんだ」のテルコとマモルが部屋で話しているシーンを観たときに、人物ではなく背景にあるものを見ていたんです。それはそれで、テルコの部屋で行われたことだったり、ほかの場面につながることはあるなと思って。そういう意味で、会話の内容だけじゃなくて背景にある物にも、物語を表現するうえでの意図や意味が見出せるかもしれないと考えながらサイズを切るようになりました。「街の上で」の長回しのときは、現場が大変すぎてあまり記憶がないのですが……。

今泉 「街の上で」のイハの部屋は、物語の中盤で控室として登場していて、ストーリーが進むほど「こういう場所なんだ」と全容が見えていくんです。既に部屋の情報が観客の頭に入っていたので、“ただ2人が話している”だけのシーンに見えなかったのもよかったと思う。

──2023年製作の「アンダーカレント」では、今泉さんが岩永さんに撮影方法を相談したとおっしゃっていましたね。

岩永 サスペンスやスリラー要素がある作品ですよね。原作でも“わからない”不穏さがずっと続いているので、イン前に脚本と原作を読んでどう表現したらいいのか考えました。今泉さんに「緊張感を映像でどう表現しましょうか。何かワークとか考えていますか?」と話したときに、「逆にそれはやっちゃダメだと思ってる」と言われて。映像のワークで表現するのではなく、色味やライティングのトーンなど別のサイドで原作が持っている温度感を表現しようという頭に切り替わりました。なので撮り方自体はシンプルだと思います。

今泉 サスペンスフルにもできる作品だと思いますが、原作者の豊田徹也さんも「サスペンスだとしたら弱いよね」みたいなことをおっしゃっていて。もちろん最後に明かされることはありますが、原作は人間ドラマとして描かれているし、サスペンスとして売りたくなかった。ちょっとだけ緑っぽい映像の色味などは岩永さんに提案してもらいました。あとは水中での撮影や、回想シーンでのピンホールレンズを使った撮影方法は岩永さんのアイデアです。

岩永さんの画に対する品格みたいなものを信用してる(今泉)

──お話を聞いていて気になったのですが、お二人はそもそも目指す映画の方向性が近いのでしょうか?

今泉 むしろ毎回、岩永さんは「なんで俺にオファーするんだろう?」と言ってますよ(笑)。

岩永 うーん。作りたい映画の方向性は、合っているとは言えませんね。少し世代も違いますし。

今泉 好きな映画も違いますよね。

岩永 “すごく合っているから、一緒にやってる”ということではない気がします。僕は基本的に、誰か固定の人とだけやり続ける関係性はけっこう危ないと思っていて。「いつも一緒だよね」という感覚でいるのはいいことだと思わないんです。そういう意味では「タッグを組んでるぞ」という感覚がないからこそ続いている気もします。

今泉 ほかのカメラマンと組むときより、言わなくてもわかってるんじゃないかと甘えてしまうことはあるから、気を付けなきゃと思います。ただ、何度仕事をしていても緊張感はあるんです。脚本も読まずに「今度また撮ろうと思ってるからよろしく」「じゃあ空けときまーす」みたいなことはないし。やっぱり“自分である意味”がお互いあったほうがいいと思う。少し別の話にはなりますが、自分は岩永さんにしか撮れないものがあると思うからお願いしています。例えば、過度に近い距離で俳優を撮らなかったり、岩永さんの画に対する品格みたいなものを信用してるんです。

──岩永さんは、今泉さんの現場ならではと感じることはありますか?

岩永 今泉さんはずっと「(物語の中に)悪者を作らない」と言っていて、話を進めるためだけの登場人物が出てこない。作品の中で生きているように人を描いてるんだと感じるのが、いいなと思いますね。普段は観ている映画も違うし、やろうとしてることや思考も違うんでしょうけど、映像の中で人が生きていてほしい、そうであったほうがいいんじゃないかという考えは共通しているのかな。

──反対に今泉さんが、岩永さんならではと感じることは?

今泉 「からかい上手の高木さん」の現場でも感じましたが、岩永さんは技術面だけじゃなく、人への接し方を律していると思います。例えば現場で自分がバタバタになって、本番中に俳優さんに「泣かないで。もうちょっと涙を抑えて」と言った直後に「やっぱりさっきみたいに泣いていいかも。もうちょっと泣いた感じの顔で」とか言ってしまって。もう最悪なわけです、演出の言葉としては。俳優の気持ちを考えられてなくて。「さっきみたいな顔で」とか言ってしまって。その撮影の直後、岩永さんに「あの言葉はないんじゃない?」と言われました。そういうときは、ちゃんと注意されます。監督や撮影監督って、現場で上のポジションになりがち。高圧的な態度でいたら空気は一瞬にして違うものになってしまいます。そういう部分で岩永さんはいつも冷静ですし、現場の空気を安心して一緒に作れます。

3日間掛けて撮った夕日(今泉)

──お二人の関係性が伝わってきました。では新作の映画「からかい上手の高木さん」について、もう少し詳しく聞かせてください。先ほど天気にこだわったというお話がありましたが、高木さんと西片が夕日を浴びながら歩く姿や、花火シーンが特に印象的でした。

今泉 撮影エピソードを知らずに夕日がきれいだったと言ってもらえるのはうれしいですね。あのシーンは3日間掛けて撮りに行ったんです。最初の日は撮れず、別日も雲が出ちゃって、3度目の正直で撮ることができました。こだわってよかった。ちなみにこれだけ一緒にやっているのに、俺が日の暮れる時間をわかっていなさすぎて「このボリューム今から撮れませんよ」みたいなことは、よく岩永さんに言われます(笑)。あれ? また日が暮れちゃった……と。

──季節によっては日が短いですもんね。

今泉 お祭りのシーンでは、花火を合成するのか、実際の花火を撮影するのかという点で撮影部は相当準備をしてくれました。結果的には本物の花火を撮れたので、そのよさはめちゃくちゃあります!

岩永 お祭りのシーンでは実際の花火を撮影して、その素材をもとに照明を作りました。でも苦労したという感覚はありません。夕日の撮影に関しては3回トライするチャンスがもらえたし、花火も実際に撮れるチャンスがもらえた。苦労よりも、技術を生かせるチャンスがもらえたという気持ちでした。

今泉 ドラマでも登場しますが、フェリーのシーンも印象に残っています。「時間が限られているから事前にカット割りしないと」と話していたのに、現場で俺が「やっぱりこう撮りたい!」と言い出して。「やってみます」と岩永さんが対応してくれました。いざフェリーに乗り込んで船が進み始めたら、エンジンだかなんだかの影響でモニタが全部つかなくなって、画角が見えない中で撮影を続けたり……。そこまでしてでも欲しい画があって、岩永さんが撮ってくれました。

視覚と聴覚だけじゃないものも感じられる(岩永)

──お二人のこだわりが詰まっている作品なんですね。本作で、新たに取り組んだことはありますか?

岩永 邦画では基本的に撮影技師と照明技師が分かれていますが、照明に関しても自分が設計してコントロールするシステムを「アンダーカレント」から行っていました。今回はさらにスケールを広げてチャレンジしています。例えば、通常の撮影環境では、役者のすぐ近くに照明機材を置くことも多く、映像的にきれいに映すために、役者の目線の前に機材が置かれることもある。役者さんはプロフェッショナルなので「大丈夫ですよ」という方がほとんどですが、今泉さんとしてはそれだけでも空気が損なわれるという感覚があって、俳優のすぐそばに照明機材を置くことを嫌うんです。照明技師からするとすごく難しいバランスなので、もう少し引いた目線で判断と設計ができるようにこのようなシステムにしてみました。

今泉 照明を優先させることもできるけど、それよりも俳優がいい表情を出せることを重要視したいときもありますから。岩永さんはそのバランスを汲んでくれる。「からかい上手の高木さん」の現場では、そういうストレスがほとんどありませんでした。おかげで自分は俳優の演出に注力できました。

──まさに何度も組まれているお二人だからこそ実現できたことですね。見どころはたっぷりだと思いますが、特にどんなところを楽しんでほしいですか?

岩永 どこを切り取っても、島のよさ、天気、背景にあるものなど、視覚と聴覚だけじゃないものも感じられるように撮っているので、そこを感じてもらえたら。そして、その場にいる子供たち、高木さんや西片という“元子供”たちを見てもらいたいです。面白くなっていたらなと思います。

今泉 試写を観ていて、物語の中の人たちに集中できたのは、全体的に統一された画や音があるからだと思いました。よく音に関して“気にならないということがベスト”と言う場合がありますけど、今回の作品は映像や音が現実世界にだいぶ近い。物語のシンプルさも含めて、中に入り込める空気の強度がこれまでの作品よりもあると思います。自分が想像した以上に集中できる力があったので、観ていて自分ごとに感じられる作品だと思います。

映画「からかい上手の高木さん」(5月31日公開)

隣の席に座る女子中学生・高木さんと彼女に何かとからかわれる男子中学生・西片の日常を描く山本崇一朗によるマンガ「からかい上手の高木さん」が実写化。映画では中学時代から10年後がつづられる。母校の教育実習生として島へ帰ってきた高木さんに永野芽郁、母校で体育教師として奮闘する西片に高橋文哉が扮した。鈴木仁、平祐奈、前田旺志郎、志田彩良、白鳥玉季、齋藤潤、江口洋介がキャストに名を連ねる。

今泉力哉(イマイズミリキヤ)

1981年、福島県生まれ。2010年に「たまの映画」で商業映画監督デビューし、「サッドティー」「愛がなんだ」「街の上で」「窓辺にて」「ちひろさん」「アンダーカレント」などを手がけた。Prime Videoでドラマ「1122 いいふうふ」が6月14日より配信される。

岩永洋(イワナガヒロシ)

1985年、東京都生まれ。映像作品を制作しているほか、撮影技術として映画、MV、Web・テレビCMを手がける。映画「こっぴどい猫」「サッドティー」「知らない、ふたり」「愛がなんだ」「いちごの唄」「サマーフィルムにのって」「ひらいて」「こちらあみ子」などに参加した。