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『違国日記』新垣結衣が突然女子高生の姪を引き取る小説家役に!【おとなの映画ガイド】

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『違国日記』 (C)2024 ヤマシタトモコ・祥伝社/「違国日記」製作委員会

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ヤマシタトモコの人気コミックを映画化した『違国日記』が6月7日(金) に公開される。新垣結衣・早瀬憩がW主演、青春映画で定評がある瀬田なつき監督の作品。独身の小説家と、姉夫婦の事故死により引き取ることになった15歳の姪っ子の、ぎこちない、奇妙な同居生活を描く。人と人がわかりあうことの難しさ、他者との距離感、その心の機微……そんなことを考えさせられ、じんわりとあたたかい気持ちになれる映画です。

『違国日記』

新垣結衣が出演した前作のタイトルは「性欲」ではなくて『正欲』。今回も「異国日記」でなく『違国日記』。たまたまではあるが、一瞬、考えさせられるタイトルの作品が続く。

「違国」という言葉は辞書には載っていない。“パラレルワールド”とか“違う世界線”とかに近い、「違う国を生きる」というような意味なのだろう。他者との差違を気にする現代人にとって、「違」という漢字はたしかに響く。

あなたとわたしは違う、人と人はわかりあえない……そんな他者との距離感が、この物語のテーマである。

気ままなひとり暮らしを続けていた小説家の槙生(新垣結衣)。実の姉夫婦が交通事故で亡くなり、遺された15歳の娘・朝(早瀬憩)を引き取ることになる。姉のことは心底嫌いで、おとなになってから会うことはなく、朝とも面識はなかった。姉の葬式の席で、朝を誰がひきとるか、たらい回しにされかけた時、「うちにくればいい」と、その場の勢いで、槙生が宣言したのだ。

そしてふたりの共同生活がはじまる。

高代槙生(まきお)、35歳、独身。執筆中はザンバラ髪をしばり、らくちんな格好でパソコンに向かう。資料や本で、部屋は散らかり放題。食事も不規則、簡単なものですます……。そんな設定。専業主婦の母とママ友しか知らない朝にとっては、初めてみる「ちがう国のおとな」だ。

演じる新垣は、実年齢に近い役どころだが、『正欲』に引き続き、これまでのドラマのようなガッキースマイルは封印、やや陰気で人見知りな「槙生ちゃん」を好演している。

一方、姪の田汲朝(あさ)は15歳。両親が亡くなったのは、中学の卒業式の直前だった。これまで会ったこともなかった叔母の家から、高校に通い出す。音楽好きで、人なつっこくて素直な性格。その存在は、独身の槙生にとっても「ちがう国のいきもの」である。

演じているのは、オーディションで選ばれた早瀬憩。ドラマ『うちの弁護士は手がかかる』、NHK連続テレビ小説『虎に翼』、7月公開の学園ホラー映画『あのコはだぁれ?』にも出演する、今年の注目株だ。

ふたりの脇を固めるのは、槙生の親友役で夏帆、元恋人・笠町役として瀬戸康史、母役に銀粉蝶、朝の親友役に小宮山莉渚、未成年後見監督人の弁護士役で染谷将太と……印象的な顔ぶれが並ぶ。

この映画が面白いのは、ふたりの会話のテンポや生活のディテール。一緒に暮らすなかで、微妙な化学反応がおき、影響されあい、気持ちに変化がおきていく。

その日々を、まるで近くから見守るかのように描く。

瀬田なつき監督は脚本、編集も担当。撮影は『ドライブ・マイ・カー』の四宮秀俊、美術は安宅紀史・田中直純、衣裳は纐纈春樹……黒沢清作品のスタッフも多い。朝の登場で少しずつ変わっていく部屋、さまざまな意味を持ち始めるモノたち。美術スタッフは大変だったろうな。

いくら勢いとはいえ、よく10代の多感な女の子をひきとる決断をしたなと驚くばかりだが、観ているうちに、槙生がそうであるように、朝がどんどん、かわいく思えてくる。自分の凝り固まった価値観のようなものが氷塊してくるのがわかる。

街で楽器を持った学生をみたら、きっと朝ちゃんと人見知りな叔母さんのことをしばらく思い浮かべるだろう。

文=坂口英明(ぴあ編集部)

(C)2024 ヤマシタトモコ・祥伝社/「違国日記」製作委員会