中村萬壽ら萬屋一門の襲名公演「六月大歌舞伎」上演中、新・中村時蔵がお三輪に挑む
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「六月大歌舞伎」上演中の歌舞伎座場内の様子。
「六月大歌舞伎」が、去る6月1日に東京・歌舞伎座で開幕した。
本公演で、中村時蔵が初代中村萬壽、中村梅枝が六代目中村時蔵を襲名し、小川大晴が五代目中村梅枝、小川陽喜が初代中村陽喜、小川夏幹が初代中村夏幹として初舞台を踏む。昼の部は、劇作家・川村花菱が米国の作家オー・ヘンリーの短編小説にヒントを得て、1933年に初演された作品「上州土産百両首」で幕開け。劇中では互いを深く思い合う幼なじみの正太郎と牙次郎の物語が展開し、兄貴肌の正太郎を中村獅童、ドジだが愛嬌のある牙次郎を尾上菊之助が勤めた。出演に向け、獅童は「(萬屋)錦之介の叔父も演じたことのある役。とても良い話ですし、菊之助さんと歌舞伎座でかっぷり組んで芝居をさせていただくのは初めてなので、楽しみ」、菊之助は「初演では、六代目菊五郎と初代(中村)吉右衛門のために書き下ろされた作品に携わることに、ご縁を感じました」とそれぞれ思いを述べた。
続く「時鳥花有里」は、「義経千本桜」より源義経の旅路を描いた所作事で、源義経を中村又五郎、その家臣・鷲尾三郎を市川染五郎が勤めるほか、傀儡師種吉役で中村種之助、白拍子伏屋役で尾上左近、白拍子帚木役で中村児太郎、白拍子園原役で中村米吉、白拍子三芳野役で片岡孝太郎が出演した。
昼の部の幕切れは、六代目時蔵の襲名披露狂言「妹背山婦女庭訓」より「三笠山御殿」。時蔵が、女方の大役である、杉酒屋の娘お三輪を初役で勤め、萬壽がお三輪が恋い慕う烏帽子折求女実は藤原淡海、中村七之助が、蘇我入鹿の妹で、お三輪と同様に求女を恋い慕う橘姫を演じた。途方に暮れるお三輪の前に、片岡仁左衛門演じる豆腐買おむらが、梅枝演じるおむらの娘おひろの手を引き現れると、上演を一時中断し、仁左衛門が時蔵の襲名披露と、梅枝の初舞台を紹介する口上が行われた。また作中では、中村歌六、中村又五郎をはじめとした、普段は立役を勤めている小川姓の親戚の面々がいじめの官女として登場し、ユーモラスな演技で会場の笑いを誘った。時蔵は、恋するうら若き少女・お三輪が、官女たちからいじめ抜かれ疲弊しつつも、やがて嫉妬に狂い、“疑着の相”に至る様子を見事に表現した。
夜の部では「南総里見八犬伝」より、八犬士が集結する「円塚山の場」でスタート。円塚山の山中、犬塚信乃の許嫁・浜路(米吉)に横恋慕する浪人者の網干左母二郎(坂東巳之助)は、里見家再興のために不可欠な名刀村雨丸をちらつかせ、浜路に自分の言いなりになるように迫るが……。そのほか、犬山道節を中村歌昇、犬村角太郎を中村種之助、犬坂毛野を中村児太郎、犬川荘助を市川染五郎、犬江親兵衛を尾上左近、犬田小文吾を中村橋之助、犬塚信乃を米吉、犬飼現八を巳之助が勤めた。
初代萬壽襲名披露、五代目梅枝初舞台として行われる「山姥」では、萬壽が山姥役、梅枝が山姥の息子で、怪童丸後に坂田金時役で出演。萬壽は、怪童丸と山樵の峯蔵(中村芝翫)のために、季節の移り変わりを表現する舞い“山めぐり”を鮮やかに披露し、梅枝は、山姥たちを召し捕ろうとやってきた猪熊入道(中村萬太郎)ら相手にした派手な立ち回りで、会場を拍手で包んだ。舞台が藤原兼冬の館に移ると、兼冬役の尾上菊五郎のほか、多田満仲役の歌六、平井保昌役の又五郎、源賢阿闍梨役の中村錦之助、白菊役の時蔵、源頼光役の獅童、渡辺綱役の陽喜、卜部季武役の夏幹が並び、劇中口上へ。菊五郎の紹介で、襲名と初舞台のあいさつが行われた。
夜の部ラストは、初代陽喜、初代夏幹の初舞台「魚屋宗五郎」。獅童が、妹を殺された悔しさで断酒していた酒を飲んでしまう主人公・宗五郎を初役で、七之助がその女房おはまを演じた。陽喜と夏幹は、物語のキーアイテムである酒を運んでくる、酒屋の丁稚を2人で勤めた。花道をしっかりとした足取りで歩く2人の姿に、観客は惜しみない拍手を送った。
「六月大歌舞伎」は6月24日まで。
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