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長塚圭史芸術監督が語る、KAATキッズ・プログラムの魅力

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長塚圭史

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KAAT神奈川芸術劇場で、毎年恒例のキッズプログラムが上演される。今年はスコットランドからの招聘作品で、ノンバーバルパフォーマンスの「『ペック』from スコットランド」(推奨年齢:3~6歳)。そして加藤拓也の新作『らんぼうものめ』(推奨年齢:6歳~、鑑賞サポート有)の二本をプログラム。そこで芸術監督の長塚圭史に、プログラム選定の理由から作品の魅力、さらに子供向け作品に寄せる想いまで、たっぷりと聞かせてもらった。

――今年のキッズプログラムに「『ペック』from スコットランド」を選ばれた理由は?

これまでもKAATキッズ・プログラムでは、1時間弱くらいの良質な小作品を海外から招聘してきました。やはり欧米はしっかりとしたノウハウがあり、クオリティも高い作品が多いんですよね。もともとこの『ペック』は、スコットランドの制作カンパニーと、ロームシアター京都、あと家族向けの演劇フェスティバル「りっかりっか*フェスタ」を制作しているエーシーオー沖縄が共同で製作した作品です。それをKAATに呼ぶというのは、お客様のためはもちろん、子供向け作品製作の歴史や思いがけない発想を得られるという点で、劇場にとっても非常にプラスが多いんです。

――『ペック』という作品の魅力は?

作・出演のアンディ・マンリーさんのことは以前から知っていて、2012年のりっかりっか*フェスタ(当時はキジムナーフェスタ)で『ホワイト』という作品を見たことがあります。夢中になって見ている子供たちと、そんな子供たちを見守る大人たち。そのあったかい、優しい空気に、この人たちはプロフェッショナルだなと感じました。この『ペック』は、『ホワイト』に比べるととてもシンプル。CO2削減の観点から、出来るだけ飛行機移動はしないなど、エコへの意識が徹底した作りになっています。今回も出演者はアンディさんひとり、セットもスーツケースふたつ分だけ。その最小限のステージから、子供たちの発想が無限に広がっていくことをアンディさんはよくわかっていて。そして大人たちは、自分の子供がどんなふうにこの劇と出会っていくのか。そしてこんなにもシンプルなことが表現になるのか。そういった驚きを感じられると思います。

――もう一作は、加藤拓也さんの新作『らんぼうものめ』。加藤さんが初めて手がける子供向け作品ですね。

2021年に芸術監督に就任してから、僕自身意識しているのが、これまで子供向け作品を作る機会がなかったアーティストたちにそういう場を提供したいということでした。というのも子供向け作品を作るというのは、僕にとってもすごく大きな体験になっていて。2012年に新国立劇場でやった『音のいない世界で』が最初の作品で、バレエダンサーの首藤康之さんと僕の持ち込み企画でしたが、客席は大人に埋め尽くされて子供はほとんどいませんでした。でも10年近くこの企画を続けていく中で、どうやったら子供に響くかと発想を変えてみたり、劇場としても子供たちを呼ぶ工夫をするようになり、やっと子供たちの観劇も増えました。だから今回加藤さんにも、キッズプログラムでの体験を通して、アーティストとして新しい発見をしてもらえたらと思っています。

――繊細な大人の心理描写が抜群にうまい作家さんだと思いますが、なぜ加藤さんに子供向け作品を?

僕はわりと早い段階から、加藤さんは子供向けをやったほうがいいと思っていました。彼の中に壊したい衝動みたいなものを感じていて、例えば高く積み上げたブロックをバーっと壊して、そこからひとつのブロックを拾って見つめる。そんな雰囲気がある作家さんだなと。そうしたら『らんぼうものめ』ってタイトルだったので驚いたんですけど(笑)。

――気鋭の演劇人なだけに、大きな注目を集めそうです。

だからこそ子供たちに見て欲しいですよね。自分も経験していますが、子供向け作品に子供が入らないのは悲惨ですから。それは加藤さんにとっても。「加藤さんの新作楽しみです」って声をかけられるんですが、「キッズプログラムですからね! 子供たちを連れて来てくださいよ!」って必ず念押ししています(笑)。

――『らんぼうものめ』は全公演、終演後にバックステージツアーが開催されるなど、作品プラスαで楽しむことが出来そうですね。

これは本当にいいです! やっぱり一気に劇場と観客の距離が近づきますから。要するに客席からでは見えなかったものが見えることで、他人事じゃなくなる。劇場の前を通る度に、「この中あんなふうだったな」なんて思い出したり。やるほうはすごく大変ですが(笑)、参加するほうは絶対に楽しいのでぜひ!

取材・文:野上瑠美子

<公演概要>
『ペック』from スコットランド

公演日程:2024年7月6日(土)・7日(日)
会場:KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ

チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2451849

『らんぼうものめ』

公演日程:7月20日(土)~28日(日)
会場:KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ

チケット情報:
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2451447

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