「今日は『MAZRI no MATSURI』、スカパラと『祭』の映像との“スリーマン”ということで。映像ももちろん観つつ、我々もちゃんと観てください!(笑)」と怒髪天・増子直純がフロアを沸かせれば、東京スカパラダイスオーケストラ・谷中敦も「自分たちのミュージックビデオとかを撮影してくれるチームのイベントなんですけども。今日は何よりも、このイベントを一緒に盛り上げることが一番大事だなと思います。戦うように楽しんでくれよ!」と熱い魂の叫びで大歓声を巻き起こす――。
映像制作会社「MAZRI」が主催するライブイベント『MAZRI no MATSURI』、5年ぶり開催となる今回の『MAZRI no MATSURI -The Joint-』には、これまでMAZRIが映像作品に携わった東京スカパラダイスオーケストラと怒髪天が登場。スカパラと怒髪天の対バンは、怒髪天「DOHATSUTEN三十路(ミソジ)まえ "七色の虹をかける野郎ども"」ツアーの横浜BLITZ公演(2013年10月)以来、およそ10年ぶりのこと。スカパラのデビュー35周年、怒髪天の結成40周年、そしてMAZRIの設立25周年というアニバーサリーイヤーを、珠玉の音楽と映像で響き合い讃え合う祝祭空間が、そこには確かに広がっていた。
まずは、先攻・怒髪天が登場。出囃子「男祭」の時点で熱いクラップが弾け回るZepp DiverCityを、「よく来たー!」という増子の絶叫と“酒燃料爆進曲”でフロア激震レベルの狂騒感へと導き、《朝焼けの空》の歌詞を《お台場の空》にアレンジして歓声を誘う。さらに、続く“HONKAI”に応えてフロア狭しと突き上がる拳、拳、拳。現在は寺岡信芳(亜無亜危異)をサポートベーシストに迎え、12月まで続く「ザ・リローデッドTOUR 2024」を回っている怒髪天。増子の渾身の熱唱轟くJAPANESE R&E(リズム&演歌)が、2024年のライブシーンにおいて今なお、いや今こそ力強くオーディエンスを奮い立たせていく光景は痛快そのものだ。
そして、“令和(狂)哀歌〜れいわくれぃじぃ〜”では舞台後方のスクリーンに映像が投影される。モノクロの街を行くくたびれた中年男性の姿が、《こんな時代は…/明るい歌だけ歌わせろ/楽しい気分で踊らせろ》のサビに差し掛かると総天然色の画面でハイテンションで乱舞しまくる。この男性は映像における「怒髪天の歌詞世界の象徴」としてライブ中に繰り返し登場しており、“OUT老GUYS”ではシネスコ風画面をぶち破るかのように迫ってきたし、“孤独くらぶ”では四季折々の街を行く男性がZeppに到着し、フロアの扉を開けるとまさに今この瞬間、リアルタイムのライブ映像に切り替わる、というマジカルな演出も繰り出し、音楽と映像の最高のセッションを描き出してみせた。
「スカパラはね、付き合いも長くさせていただいてるんですけども。だいたいが我々の先輩なんですけども、谷中と沖くんが俺と同じ年ということで。谷中と久しぶりにさっき会って話したんだけど、やっぱりねえ……濃いね! 自分のイメージしてた谷中像よりも、2割増しぐらいで濃い!(笑)」とスカパラへの親近感を語る増子。「やっぱり、スカパラとコラボして、俺が歌わしてもらう、っていうのやってみたいよね? お揃いのスーツ着てさ――俺だけ蝶ネクタイなんじゃないかと思うんだけど(笑)」と語り倒すMCも絶好調。満場のハンドウェーブ&シンガロングから流れ込んだ“オトナノススメ”が魂を揺さぶり、“ド真ん中節”の絶唱が熱気を震わせる。完全燃焼し尽くして深々と一礼する増子に、惜しみない拍手喝采が湧き起こった。
そして、後攻・東京スカパラダイスオーケストラ。“ゴッドファーザー愛のテーマ~Love Theme From "The Godfather"~”で歓喜の沸点をあっさり超えると、“5 days of TEQUILA”では次々に降り注いでくるショットグラスの映像を背後に、フロアをでっかく揺らすダンスの輪を生み出していく。「怒髪天にもう一度、大きな拍手を!」と語る谷中の表情にも、高揚の色が色濃く浮かんでいる。「増子のがんばりにね、すごくアツくなりました! ライブ終わって出てきた時、もう本当に……絞り出しきった人間の顔になってた(笑)。負けてらんないんでね、俺もね!」というエモーショナルな言葉に応えて、割れんばかりの拍手と歓声が広がった。
満場のクラップとともに鳴り渡った“DOWN BEAT STOMP”に続けて、“スキャラバン”から“火の玉ジャイヴ”〜“ルパン三世のテーマ'78”〜“SKULL COLLECTOR”と鉄壁のメドレーを披露、さらにNARGOの七色に光るメロディオン独奏から“SKA ME CRAZY”で圧巻のシンガロングを呼び起こしていく。そのままマッドネス“One Step Beyond”のカバーまで、ビートとダンスと多幸感が間髪入れず押し寄せるような展開に、フロアの熱量は高まる一方だ。「増子さんに負けないように、思いっきり汗流してます!」と笑顔で語りかけるのはドラム・茂木欣一。「ある意味今日は、ドラマーであることがちょっと悔しいです! 演奏中、みんながちょっと後ろ向いたりしてるのわかってるんだけど、俺は後ろ向けないよね……」と切なそうに背後のスクリーンに目をやりつつ、「祭だもんね! 祭には、演歌とスカは欠かせないよね?」とオーディエンスを爽快に煽ってみせる。
茂木が歌う2014年のラブソング“チャンス”、沖祐市のピアノソロから流れ込んだ“Streaming Tears”をじっくり聴かせたところで、加藤隆志(g)の「怒髪天結成40周年、おめでとうございます! スカパラも35周年なんで。11月16日に、甲子園球場でライブがありますんで、それに向けてがんばってます。応援よろしくお願いします!」というコールとともに“Pride Of Lions”で歓喜炸裂! 全員が名プレイヤーであり名エンターテイナーであるスカパラの強さが、Zepp丸ごと揺さぶる熱狂空間を描き出していく。ラストはリアルタイムのライブ映像とともに“Paradise Has No Border”で大団円! フォーメーションアートのように9人がダイナミックなエンディングを演出する姿が、強烈な余韻を残していった。
アンコールではスカパラの9人が再びステージに登場。谷中の「このまま終わるわけにはいきません!」のコールとともに、怒髪天・増子が揃いのスーツ――ではなく自前のスーツとハット姿で現れて一言、「これ、スーツ自前よ! 揃いのやつ欲しいよ!」。熱気あふれる会場が笑いでどっと沸き返る。
増子「今観てたけど、カッコいいよね! 最後のフォーメーションとか、戦隊モノみたいだよね?」
谷中「はははは! すごいうれしい。『戦隊モノ』いただきました! おもしろいこと言ってくれるなあ。歌も最高だし、音楽も最高だし、しゃべりも最高だからなあ」
増子「じゃあスーツ作ってよ、俺のも!(笑)」
谷中&増子がトークショーの如く繰り広げるMCが、次々に場内の爆笑を呼び起こしていったところで、スカパラfeat.増子の編成で披露したのは、10年前の競演の際にも増子ボーカルで披露された“めくれたオレンジ”。 2001年当時のミュージックビデオをAIアニメへ昇華したような映像が映し出される中、会場一面に鳴り渡るシンガロングが、スカパラ×怒髪天×MAZRIの競演を祝福するように高らかに響いた。
増子が舞台を去った後、この日の最後を飾ったのは“¡Dale Dale!〜ダレ・ダレ!〜”だった。街を旅するサッカーボールが、転がり回った果てにZeppに辿り着く――という映像が、スカパラ9人の伸びやかな熱演、そして「これが最後だ! 歌え! 騒げ!」という谷中の叫びとともに胸に残った。
次回『MAZRI no MATSURI』は11月4日、恵比寿The Garden Hallにて開催される。
<公演情報>
『MAZRI no MATSURI -The Joint-』
2024年5月31日 Zepp DiverCity(TOKYO)
出演:東京スカパラダイスオーケストラ/怒髪天
セットリスト
■怒髪天
01. 酒燃料爆進曲
02. HONKAI
03. 令和(狂)哀歌〜れいわくれぃじぃ〜
04. ザ・リローデッド
05. OUT老GUYS
06. プレイヤーI
07. そのともしびをてがかりに
08. 孤独のエール
09. 孤独くらぶ
10. オトナノススメ
11. ド真ん中節
■東京スカパラダイスオーケストラ
01. ゴッドファーザー愛のテーマ~Love Theme From "The Godfather"~
02. 5 days of TEQUILA
03. DOWN BEAT STOMP
04. メドレー
・スキャラバン
・火の玉ジャイヴ
・ルパン三世のテーマ'78
・SKULL COLLECTOR
05. SKA ME CRAZY
06. One Step Beyond
07. チャンス
08. Streaming Tears
09. Pride Of Lions
10. Paradise Has No Border
En1. めくれたオレンジ(feat. 増子直純)
En2. ¡Dale Dale!〜ダレ・ダレ!〜
関連リンク
怒髪天 公式サイト:
https://dohatsuten.jp/index_gate.html
東京スカパラダイスオーケストラ 公式サイト:
https://tokyoska.net/