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ぴあ 総合TOP > 拙僧が殺めたのだ…小西遼生が再び京極堂演じる“お坊さんミュージカル”「鉄鼠の檻」開幕

拙僧が殺めたのだ…小西遼生が再び京極堂演じる“お坊さんミュージカル”「鉄鼠の檻」開幕

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ASPイッツフォーリーズ公演 ミュージカル「鉄鼠の檻」ゲネプロより。

「ASPイッツフォーリーズ公演 ミュージカル『鉄鼠の檻』」が、昨日6月14日に東京・紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYAで開幕。初日に先駆け昨日、同劇場でゲネプロと取材会が行われた。

「鉄鼠の檻」(講談社)は、京極夏彦による「百鬼夜行」シリーズ第4弾として刊行された長編推理小説。2021年には同シリーズより「魍魎の匣」がイッツフォーリーズによってミュージカル化された。今回は「魍魎の匣」に続いて板垣恭一が上演台本・作詞・演出を担当する。作曲・音楽監督を務めるのは和田俊輔。

舞台は昭和28年初春の箱根山中。京極堂こと中禅寺秋彦(小西遼生)たちは、“箱根山連続僧侶殺害事件”に巻き込まれ……。出演者には小西のほか、榎木津礼二郎役をWキャストで演じる北村諒と横田龍儀、関口巽役の神澤直也、和田慈行役の上田堪大らが名を連ねた。なお昨日のゲネプロには北村が出演した。

ステージには水墨画のようなペイントが施された柱やパネルがいくつもそびえ立つ。開演すると、雪が降りしきる中で舞台中央に目の不自由な男が杖を持っておびえた様子で立ち、その周りを10人ほどの僧侶たちが取り囲む。目の不自由な男が杖で自分の足元に倒れているものが何かを探ろうとしていると、僧侶が「拙僧が殺めたのだ」と声高らかに歌い始め、観客を一気に物語の世界に引き込んだ。

ミュージカル「鉄鼠の檻」では状況説明を歌に託すことで、文庫版で1300ページを超える長大で重厚な原作を、スピーディーに進める。また図を映しながら歌に乗せて京極堂が禅宗の系譜をレクチャーしたり、難解な用語や固有名詞を舞台に投影したりする演出も取り入れられた。

ミュージカル「魍魎の匣」に続いて出演する小西は眉間にグッとシワを寄せ、京極堂の仏頂面を表現。“憑物落とし”の場面では相手を鋭くにらみつけながら、ハスキーな声で朗々と歌い、観客を魅了する。その一方、妹・中禅寺敦子のおでこにこぶしを“コツン”とぶつけたり、友人・関口の頭を撫でたりする仕草で、小西は京極堂の人間らしい一面を描き出した。

にぎやかに歌い踊って会場を盛り上げる北村は、人の名前を間違え続けたり、他人を容赦なく罵倒したりする榎木津像を生き生きと立ち上げる。関口役の神澤は伸びやかな歌声を聞かせ、狂言回し役として物語を推し進めた。また上田は高く通る声でまくし立てるようにセリフを並べ、一見すると礼儀正しい和田慈行の危うい一面を描き出し、舞台に緊張感を与えた。

ゲネプロ終了後に行われた取材会には、小西、北村、横田、神澤のほか、板垣、京極が出席した。小西は「原作は“禅には言葉が通じない”ということを描いた作品。そのミュージカル版に取り組むには覚悟が必要でしたが、試行錯誤して作ってきました」と稽古を振り返る。

北村は「情報量が多く重厚な作品に、軽快な榎木津が紛れ込んでいます(笑)。パンクしそうなお客様の頭を、榎木津が癒やせたら」とコメント。本シリーズに初参加する横田は「稽古で何をしても板垣さんが『面白い!』と言ってくれて逆に不安ですが(笑)、お客様に『榎木津は変な人だな』と思ってほしい」と気合十分に述べる。また神澤は「ミュージカル『魍魎の匣』をまったく振り返らずに新しい関口を作ろうと思いました。新たな関口も愛してもらえたら」と観客に呼びかけた。

板垣は「前代未聞の“お坊さんミュージカル”です!」と言い、「『鉄鼠の檻』は『魍魎の匣』の1.5倍くらい厚い本ですが、原作の大切なエッセンスを落とさないよう意識しました。“悟りとは何か?”“禅とは何か?”という問いを舞台に乗せてみたい」と語り、「とはいえ決して難しい話ではないので、犯人探しを楽しんで」と観客にメッセージを送った。

京極は、本作に難解な言葉や禅問答が登場することに触れて「わけのわからない言葉は、セリフより歌のほうが覚えやすいかも」と笑いつつ、「楽しく拝見しました。見どころたっぷりで、初めて観劇する人もびっくりして喜ぶと思います。自信を持って、気楽にやってください」とカンパニーにエールを送った。

最後に小西は「大勢のお坊さんがひしめき合います。(頭が)つるつるなので“つるミュ”でしょうか」と笑いを誘いつつ、「舞台ファン、出演者のファン、原作のファンなど、さまざまなお客様がそれぞれ楽しめる、多重の“結界”が張られた作品です。難しいものを難しいまま、でも面白く届けますので、感覚で受け止めて楽しんでもらえたら。乞うご期待!」とあいさつした。

上演時間は休憩を含む約3時間。東京公演は6月24日まで。本作はその後、28・29日に大阪・サンケイホールブリーゼでも上演される。

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